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断暮篇(たちぐらしへん)
宵暁け
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それからすぐ朝陽が昇り、安心感と眠気が一気に襲ってくる。
まだ話をしていたいのに瞼をあげられない。
「大丈夫。もう、勝手に...いなくなったり、しないから」
まだ話しづらそうにしている七海に頭を撫でられ、そっと目を閉じる。
次に起きたらどんな話をしようと考えながら、意識は一気に暗いところまで落ちていった。
「ん...あれ、もうお昼?」
「おはよう。今は2時だよ」
「え、そんなに寝ちゃってた!?」
がばっと体を起こすと、そこには先程見たときよりもずっと顔色がいい七海が微笑んでいた。
「さっきお医者さんが来て、点滴を換えてくれた。もう少し大人しくしてたら、帰っていいって言ってくれたよ」
「そうなんだ...」
体を起こそうとするのを補助していると、背後に覚えのある気配を感じる。
そこには、仕事終わりであろうラッシュさんと山奥でひとり願っていた神様が立っていた。
「お嬢さん、起きてたのか」
「無事に終わったみたいでよかった。...怪我は痛そうだけど、命があるならそれでいい」
「ふたりとも...ごめんなさい。ありがとう、ございます」
頭を下げる七海の隣で僕も軽く一礼する。
彼女が助かったのはきっと美桜さんのおかげで、僕が途方にくれているところを助けてくれたのはラッシュさんたちだ。
「...ケイトならもう少ししたら来るはずだぞ。もしかしたら朝になるかもしれないって言ってたけどな」
「忙しいんですね...」
「ノワールをシェリに預かってもらってるんだけど、あのふたりは大丈夫?」
「元気そうだったぞ」
いつもどおりの他愛ない会話...この瞬間だけで僕の心は一気に明るくなる。
七海のことは家に連れて帰ってからもきちんとサポートするし、もっと強くなってずっお側で護っていく。
わいわい話すみんなを少し離れた場所から見つめながらそんなことを決めた。
そして深夜、七海はなかなか寝つけないのかまだ起きている。
「...傷、痛む?」
「ちょっとだけ。でも、だいぶ痛みがなくなってきたよ」
「それならいいけど...」
「本当に終わったんだなって思ったら、寝ちゃうのが勿体無い気がしちゃった。
...アイス、早く買いに行きたいな」
その瞳にはもう寂しさがない。
起きたての頃よりは安心してくれているのだと思うとほっとするものの、やはり不安に思っている部分もあるのだろう。
「新しいやつ、出てるかもしれないね」
「その前にまずは退院しないと...」
「すぐ帰れるよ。コンビニなら近いから、許してもらえるんじゃないかな?」
「ふたりで星も見たい」
「望遠鏡、ちゃんと手入れしてるからきっと綺麗に見えるよ」
「楽しみ...」
いつまでも、この奇跡のような日常を護っていこう。
──七海が側にいてくれれば、きっとどんなことがあっても最強でいられるから。
まだ話をしていたいのに瞼をあげられない。
「大丈夫。もう、勝手に...いなくなったり、しないから」
まだ話しづらそうにしている七海に頭を撫でられ、そっと目を閉じる。
次に起きたらどんな話をしようと考えながら、意識は一気に暗いところまで落ちていった。
「ん...あれ、もうお昼?」
「おはよう。今は2時だよ」
「え、そんなに寝ちゃってた!?」
がばっと体を起こすと、そこには先程見たときよりもずっと顔色がいい七海が微笑んでいた。
「さっきお医者さんが来て、点滴を換えてくれた。もう少し大人しくしてたら、帰っていいって言ってくれたよ」
「そうなんだ...」
体を起こそうとするのを補助していると、背後に覚えのある気配を感じる。
そこには、仕事終わりであろうラッシュさんと山奥でひとり願っていた神様が立っていた。
「お嬢さん、起きてたのか」
「無事に終わったみたいでよかった。...怪我は痛そうだけど、命があるならそれでいい」
「ふたりとも...ごめんなさい。ありがとう、ございます」
頭を下げる七海の隣で僕も軽く一礼する。
彼女が助かったのはきっと美桜さんのおかげで、僕が途方にくれているところを助けてくれたのはラッシュさんたちだ。
「...ケイトならもう少ししたら来るはずだぞ。もしかしたら朝になるかもしれないって言ってたけどな」
「忙しいんですね...」
「ノワールをシェリに預かってもらってるんだけど、あのふたりは大丈夫?」
「元気そうだったぞ」
いつもどおりの他愛ない会話...この瞬間だけで僕の心は一気に明るくなる。
七海のことは家に連れて帰ってからもきちんとサポートするし、もっと強くなってずっお側で護っていく。
わいわい話すみんなを少し離れた場所から見つめながらそんなことを決めた。
そして深夜、七海はなかなか寝つけないのかまだ起きている。
「...傷、痛む?」
「ちょっとだけ。でも、だいぶ痛みがなくなってきたよ」
「それならいいけど...」
「本当に終わったんだなって思ったら、寝ちゃうのが勿体無い気がしちゃった。
...アイス、早く買いに行きたいな」
その瞳にはもう寂しさがない。
起きたての頃よりは安心してくれているのだと思うとほっとするものの、やはり不安に思っている部分もあるのだろう。
「新しいやつ、出てるかもしれないね」
「その前にまずは退院しないと...」
「すぐ帰れるよ。コンビニなら近いから、許してもらえるんじゃないかな?」
「ふたりで星も見たい」
「望遠鏡、ちゃんと手入れしてるからきっと綺麗に見えるよ」
「楽しみ...」
いつまでも、この奇跡のような日常を護っていこう。
──七海が側にいてくれれば、きっとどんなことがあっても最強でいられるから。
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