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断暮篇(たちぐらしへん)
神様の来訪
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それは翌朝のことだった。
よく晴れているからといつもより早く目が覚めたこともあって、洗濯機が回るのをじっと見つめる。
あれからあの人たちは手を出してこないけれど、いつきてもおかしくないと思うと不安だ。
「...新しいものを綴らないと」
その前にまずはご飯を作ろうと考えていると、ノワールが窓を見て嬉しそうに鳴いた。
「ノワール、どうしたの?」
よく目を凝らしてみると、そこには美しい佇まいの女性が立っていた。
扉を開けるとほっとしたような表情でこちらに歩み寄ってくる。
「よかった、ちゃんとここで合ってた...」
「おはよう。...久しぶりだね、美桜さん」
美桜さんは欠伸をひとつして、ゆっくりと頷く。
「...入っても邪魔にならない?」
「勿論だよ。ただ、木葉はまだ寝てるからできるだけ静かにあがってね」
美桜さんはひとつ頷くと、そのままゆっくりと家の中を進む。
杖の私よりも速くてなかなか追いつくことができない。
(楽しいって思ってくれているのかもしれない。でも、どうしたんだろう)
いつもなら来てほしいと連絡がくるはずなのに、こうして彼女の方からやってくるのは初めてだ。
「...どうかしたの?」
「ううん。美桜さん、もしよかったら一緒にご飯を食べよう」
「それはありがたいけど、これから準備するなら私にも手伝わせて」
幼い頃にもこんな会話をしたことがあったような気がする。
今と逆で、私が手伝わせてほしいといつもせがんでいた。
美桜さんに危ないからと止められて、泣きそうになりながら独りで待っていたのを思い出す。
そのときは自分が邪魔なんじゃないかと思っていたけれど、ただ心配してくれていたのだと今なら分かる。
「...」
「どうしたの?」
「七海、成長したなって思ってた。それに、いい家だね」
「ここは元々木葉の家で、私は別のマンションに住んでいたんだ」
ここまで話す必要はなかったかもしれないと思っていると、美桜さんは何も訊かないでいてくれた。
(ありがたいな...)
「お母さんがよく買ってきてくれてた大福が売られているお店を、木葉が偶然知ってて久しぶりに食べたよ」
「...私も食べたい」
「今度は一緒に食べよう」
そんな話をしながら、少しずつ支度が終わっていく。
できあがったものは普段よりもずっと豪華なもので、久しぶりにふたりで食べられるのが楽しみになった。
「木葉はいつも朝食を摂らないの?」
「お昼前まで寝てるから、お昼ご飯を一緒に食べてるよ。それからおやつを作ったり...」
いつものように日常の話をする。
その時間が楽しくて、目的を聞くのを忘れてしまっていた。
よく晴れているからといつもより早く目が覚めたこともあって、洗濯機が回るのをじっと見つめる。
あれからあの人たちは手を出してこないけれど、いつきてもおかしくないと思うと不安だ。
「...新しいものを綴らないと」
その前にまずはご飯を作ろうと考えていると、ノワールが窓を見て嬉しそうに鳴いた。
「ノワール、どうしたの?」
よく目を凝らしてみると、そこには美しい佇まいの女性が立っていた。
扉を開けるとほっとしたような表情でこちらに歩み寄ってくる。
「よかった、ちゃんとここで合ってた...」
「おはよう。...久しぶりだね、美桜さん」
美桜さんは欠伸をひとつして、ゆっくりと頷く。
「...入っても邪魔にならない?」
「勿論だよ。ただ、木葉はまだ寝てるからできるだけ静かにあがってね」
美桜さんはひとつ頷くと、そのままゆっくりと家の中を進む。
杖の私よりも速くてなかなか追いつくことができない。
(楽しいって思ってくれているのかもしれない。でも、どうしたんだろう)
いつもなら来てほしいと連絡がくるはずなのに、こうして彼女の方からやってくるのは初めてだ。
「...どうかしたの?」
「ううん。美桜さん、もしよかったら一緒にご飯を食べよう」
「それはありがたいけど、これから準備するなら私にも手伝わせて」
幼い頃にもこんな会話をしたことがあったような気がする。
今と逆で、私が手伝わせてほしいといつもせがんでいた。
美桜さんに危ないからと止められて、泣きそうになりながら独りで待っていたのを思い出す。
そのときは自分が邪魔なんじゃないかと思っていたけれど、ただ心配してくれていたのだと今なら分かる。
「...」
「どうしたの?」
「七海、成長したなって思ってた。それに、いい家だね」
「ここは元々木葉の家で、私は別のマンションに住んでいたんだ」
ここまで話す必要はなかったかもしれないと思っていると、美桜さんは何も訊かないでいてくれた。
(ありがたいな...)
「お母さんがよく買ってきてくれてた大福が売られているお店を、木葉が偶然知ってて久しぶりに食べたよ」
「...私も食べたい」
「今度は一緒に食べよう」
そんな話をしながら、少しずつ支度が終わっていく。
できあがったものは普段よりもずっと豪華なもので、久しぶりにふたりで食べられるのが楽しみになった。
「木葉はいつも朝食を摂らないの?」
「お昼前まで寝てるから、お昼ご飯を一緒に食べてるよ。それからおやつを作ったり...」
いつものように日常の話をする。
その時間が楽しくて、目的を聞くのを忘れてしまっていた。
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