ハーフ&ハーフ

黒蝶

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断暮篇(たちぐらしへん)

生活変化

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「おはよう...」
「おはよう。今日はなんだか眠そうだね」
「昨日バイトの後輩がこられなくなっちゃって、その分意気ごみすぎたのかもしれない...」
「木葉らしいね」
向かい合わせに座って両手をあわせる。
朝陽が綺麗だったとか、自分がやっていた仕事はどうだったとか、そんな他愛のない会話をした。
「今日は食材を買いに行きたくて...」
「そんなに遠慮しなくていいよ。一緒に行こう」
七海を追うものがいるらしいと知ってから数日。
あれから彼女にはひとりで外出しないように言ってある。
...とはいえ、そろそろリハビリがてら近くを散歩する程度の外出は必要だ。
ただ、ご飯の買い物には必ずついていくことにした。
「今日は何を作ろうかな...」
「トマトが安いみたい。ソースを作ってパスタにするのはどうかな?」
「今日はもう炊飯器で予約してきちゃったから、あっちの白身魚にかけて食べよう」
「それじゃあ僕はソースを作るよ。フライパン、結構重いから」
ふたり揃って主婦のような会話をしながら、ただ町を歩く。
それだけで今は充分だ。
あれから姿を見せていないあの人たちは、まだ追ってくるつもりだろうか。
「...ノワール」
かあ、とひと鳴きして低空飛行をやめるのは、少し飛べるようになった1羽の烏だ。
「駄目だよ、ちゃんと僕の肩に乗ってないと...」
気分転換は必要だからと思い、建物に入るときだけは人様に迷惑をかけない範囲で飛ぶ練習をするようにと言い聞かせてはいる。
...残念なことにあまり響いていないようだが。
「ノワール、どうしてそんなに濡れてるの?」
「どうしてだろう...。帰ったらまずは体を拭かないと」
元気よく鳴く声を聞きながら、七海の手は絶対に離さずにもう一方の手で荷物を持つ。
相変わらず朝は苦手で起きられないが、それでも一緒にいられる時間があるのは嬉しい。
「ここに置いておくから、先に魚を焼いててもらってもいい?」
「うん。任せて」
家の中で使う為の杖に持ちかえた七海は、魚を前にどうしようかと悩んでいる。
そんな様子を見届け、ノワールにだけ聞こえるように話しかけた。
「...怪しい人影は?」
首を横にふる姿を見ると、はりつめていたものが一気に切れるような感触がした。
「ありがとう」
ついでに七海の杖の手入れをしてからすぐに彼女の元へ向かう。
「結局オリーブオイルを使って焼くことにした」
「調理法で悩んでたの?」
「うん。どうすれば1番美味しいかなって...」
その一言さえ微笑ましいと感じてしまうのは、おかしいことだろうか。
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