199 / 258
遡暮篇(のぼりぐらしへん)
ふわふわの頭
しおりを挟む
目を開けると、そこは見覚えがあるベッドの上だった。
ぼんやりしながら水を飲みに行くと、七海に心配そうな表情を向けられる。
「木葉、大丈夫?」
「え、あ、うん...。ごめん、僕どうしてたんだっけ?」
自分がどんな状況だったのか全く掴めていない。
そもそも、いつベッドに入ったのかさえ分からないのだ。
七海は少し間をおいてから話してくれた。
「ケイトさんが持ってきてくれたクレール、木葉が呑んでいるものとはちょっとだけ違うんだって。
...だから、木葉はほろ酔い状態で寝ちゃったんだよ。因みにベッドまではラッシュさんが運んでくれた」
「え、ラッシュさん?」
「ケイトさんから渡されたクレールを呑んだっていうのを聞いてきてくれたんだよ」
「そうだったんだ...ごめん」
全く気づいていなかった。
そんなことになっていることすら分かっていなくて、申し訳ないことをしたと俯いてしまう。
いきなり頬に手を添えられたかと思うと、視線があうようにぐいっと顎を持ちあげられる。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。...ただ、味が違うなって思ったときは次からは飲み干さないようにってラッシュさんが言ってた」
「ふたりに迷惑かけちゃったね...」
「私はあんまり見たことがない木葉を見られて嬉しかったよ」
そう話す七海は天使の微笑みを浮かべていて、目にしただけで鼓動が高鳴る。
渇きはおさまっているはずなのに、それとは別の衝動がこみあげてきて抑えられそうにない。
「この...」
名前を呼ぼうとしたであろう唇をいつもより強引に塞ぐ。
拒絶されてしまうのではないかと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
「ど、どうしたの?」
「ごめん。何故か急にこうしたくなったんだ。...嫌だった?」
「ううん、寧ろ嬉しかった。ちょっと恥ずかしかったけど...」
いつも以上に愛しさが溢れ、沸きあがる衝動を抑えられない。
歯止めが効かなくなりそうで怖いなと思いつつ、今自分の胸にある素直な気持ちを口にした。
「もうちょっと抱きしめて、もっと近くでいたい」
「え?」
「...駄目?」
「だ、駄目じゃない、けど、」
恥ずかしさなんてものはとっくにどこかにいってしまって、そのまま抱きしめては口づけてを続ける。
あまり深く考えられないのは何故だろう...そんなことが浮かんだものの、すぐに消えてしまった。
ぼんやりしながら水を飲みに行くと、七海に心配そうな表情を向けられる。
「木葉、大丈夫?」
「え、あ、うん...。ごめん、僕どうしてたんだっけ?」
自分がどんな状況だったのか全く掴めていない。
そもそも、いつベッドに入ったのかさえ分からないのだ。
七海は少し間をおいてから話してくれた。
「ケイトさんが持ってきてくれたクレール、木葉が呑んでいるものとはちょっとだけ違うんだって。
...だから、木葉はほろ酔い状態で寝ちゃったんだよ。因みにベッドまではラッシュさんが運んでくれた」
「え、ラッシュさん?」
「ケイトさんから渡されたクレールを呑んだっていうのを聞いてきてくれたんだよ」
「そうだったんだ...ごめん」
全く気づいていなかった。
そんなことになっていることすら分かっていなくて、申し訳ないことをしたと俯いてしまう。
いきなり頬に手を添えられたかと思うと、視線があうようにぐいっと顎を持ちあげられる。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。...ただ、味が違うなって思ったときは次からは飲み干さないようにってラッシュさんが言ってた」
「ふたりに迷惑かけちゃったね...」
「私はあんまり見たことがない木葉を見られて嬉しかったよ」
そう話す七海は天使の微笑みを浮かべていて、目にしただけで鼓動が高鳴る。
渇きはおさまっているはずなのに、それとは別の衝動がこみあげてきて抑えられそうにない。
「この...」
名前を呼ぼうとしたであろう唇をいつもより強引に塞ぐ。
拒絶されてしまうのではないかと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
「ど、どうしたの?」
「ごめん。何故か急にこうしたくなったんだ。...嫌だった?」
「ううん、寧ろ嬉しかった。ちょっと恥ずかしかったけど...」
いつも以上に愛しさが溢れ、沸きあがる衝動を抑えられない。
歯止めが効かなくなりそうで怖いなと思いつつ、今自分の胸にある素直な気持ちを口にした。
「もうちょっと抱きしめて、もっと近くでいたい」
「え?」
「...駄目?」
「だ、駄目じゃない、けど、」
恥ずかしさなんてものはとっくにどこかにいってしまって、そのまま抱きしめては口づけてを続ける。
あまり深く考えられないのは何故だろう...そんなことが浮かんだものの、すぐに消えてしまった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説





淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる