ハーフ&ハーフ

黒蝶

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遡暮篇(のぼりぐらしへん)

ふわふわの頭

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目を開けると、そこは見覚えがあるベッドの上だった。
ぼんやりしながら水を飲みに行くと、七海に心配そうな表情を向けられる。
「木葉、大丈夫?」
「え、あ、うん...。ごめん、僕どうしてたんだっけ?」
自分がどんな状況だったのか全く掴めていない。
そもそも、いつベッドに入ったのかさえ分からないのだ。
七海は少し間をおいてから話してくれた。
「ケイトさんが持ってきてくれたクレール、木葉が呑んでいるものとはちょっとだけ違うんだって。
...だから、木葉はほろ酔い状態で寝ちゃったんだよ。因みにベッドまではラッシュさんが運んでくれた」
「え、ラッシュさん?」
「ケイトさんから渡されたクレールを呑んだっていうのを聞いてきてくれたんだよ」
「そうだったんだ...ごめん」
全く気づいていなかった。
そんなことになっていることすら分かっていなくて、申し訳ないことをしたと俯いてしまう。
いきなり頬に手を添えられたかと思うと、視線があうようにぐいっと顎を持ちあげられる。
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。...ただ、味が違うなって思ったときは次からは飲み干さないようにってラッシュさんが言ってた」
「ふたりに迷惑かけちゃったね...」
「私はあんまり見たことがない木葉を見られて嬉しかったよ」
そう話す七海は天使の微笑みを浮かべていて、目にしただけで鼓動が高鳴る。
渇きはおさまっているはずなのに、それとは別の衝動がこみあげてきて抑えられそうにない。
「この...」
名前を呼ぼうとしたであろう唇をいつもより強引に塞ぐ。
拒絶されてしまうのではないかと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしい。
「ど、どうしたの?」
「ごめん。何故か急にこうしたくなったんだ。...嫌だった?」
「ううん、寧ろ嬉しかった。ちょっと恥ずかしかったけど...」
いつも以上に愛しさが溢れ、沸きあがる衝動を抑えられない。
歯止めが効かなくなりそうで怖いなと思いつつ、今自分の胸にある素直な気持ちを口にした。
「もうちょっと抱きしめて、もっと近くでいたい」
「え?」
「...駄目?」
「だ、駄目じゃない、けど、」
恥ずかしさなんてものはとっくにどこかにいってしまって、そのまま抱きしめては口づけてを続ける。
あまり深く考えられないのは何故だろう...そんなことが浮かんだものの、すぐに消えてしまった。
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