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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
ほろ酔い気分
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ぼんやりしていると、玄関の扉が2回ノックされる。
急いで開けた瞬間、飛びこんできたのは予想どおりの人物だった。
「ごめんなさいね、遅くなっちゃって...」
「け、ケイト、様...」
真っ青な顔をしたシェリの肩に手をのせ、母はにこりと笑った。
「いいのよ。お友だちと話をしていれば遅くなることもあるでしょう?」
「は、はい...」
「シェリ、誰もあなたのことを怒ってなんかいないわ。
ただ...帰ったらどんなことをしたのか教えてね」
「はい」
一礼して去っていく背中を見送っていると、母がこそっと耳打ちした。
「クレール、私が持っている分を置いていくわ。もう少しで来るはずだから、それまでの辛抱よ」
手に握らされたのは、ふたつの小瓶。
母だって辛いはずなのに、何故僕にくれたのかよく分からない。
内心感謝しつつ、早速そのうちのひとつに口をつける。
...以前のものよりも甘い。
「木葉、それは...」
「さっきクレールを少しだけ分けてもらったんだ。でも、いつもとちょっと味が違うような気がする」
不安げに瞳を揺らす七海に大丈夫だからと声をかける。
本当は少し体が怠いような気がしたが、そのことは黙っておくことにした。
──どのくらい時間が経っただろうか。
片づけを終えて眠ってしまった彼女の頭を撫でながら月を眺めていると、激しい音をたてながら扉がノックされる。
そこにいたのは、焦った表情のラッシュさんだった。
「木葉、もしかしてあいつからもらったもんを呑んだんじゃ...」
「呑んだよ。いつもより甘いね」
そう言葉を発した瞬間、目の前の彼は何故か顔を両手で覆ってしまう。
何がなんだか分からないままその様子を見つめていると、後ろからからんからんと杖の音がした。
「こんばんは。何かあったんですか?」
「いいか、お嬢さん。今のこいつはクレールに酔ってる」
「酔ってるってどういうこと?」
「...自覚がないのか」
はあ、と息を吐きながら、ラッシュさんは説明してくれた。
「おまえに渡す分は、実は俺みたいな純血種が使うものを薄めている。
人体に影響を及ぼさない程度の薬剤を使ったりもしてるが、それはまだ調合を終わらせてなかったものだ。それを呑んだってことは...」
だんだん頭がくらくらしてきた。
話を聞かないといけないのに、強い眠気に勝てそうにない。
「木葉、大丈、」
七海の声がしたような気がしたが、気のせいだろうか。
そんなことを考えているうちについに限界に達したらしく、そのまま瞼をおろした。
急いで開けた瞬間、飛びこんできたのは予想どおりの人物だった。
「ごめんなさいね、遅くなっちゃって...」
「け、ケイト、様...」
真っ青な顔をしたシェリの肩に手をのせ、母はにこりと笑った。
「いいのよ。お友だちと話をしていれば遅くなることもあるでしょう?」
「は、はい...」
「シェリ、誰もあなたのことを怒ってなんかいないわ。
ただ...帰ったらどんなことをしたのか教えてね」
「はい」
一礼して去っていく背中を見送っていると、母がこそっと耳打ちした。
「クレール、私が持っている分を置いていくわ。もう少しで来るはずだから、それまでの辛抱よ」
手に握らされたのは、ふたつの小瓶。
母だって辛いはずなのに、何故僕にくれたのかよく分からない。
内心感謝しつつ、早速そのうちのひとつに口をつける。
...以前のものよりも甘い。
「木葉、それは...」
「さっきクレールを少しだけ分けてもらったんだ。でも、いつもとちょっと味が違うような気がする」
不安げに瞳を揺らす七海に大丈夫だからと声をかける。
本当は少し体が怠いような気がしたが、そのことは黙っておくことにした。
──どのくらい時間が経っただろうか。
片づけを終えて眠ってしまった彼女の頭を撫でながら月を眺めていると、激しい音をたてながら扉がノックされる。
そこにいたのは、焦った表情のラッシュさんだった。
「木葉、もしかしてあいつからもらったもんを呑んだんじゃ...」
「呑んだよ。いつもより甘いね」
そう言葉を発した瞬間、目の前の彼は何故か顔を両手で覆ってしまう。
何がなんだか分からないままその様子を見つめていると、後ろからからんからんと杖の音がした。
「こんばんは。何かあったんですか?」
「いいか、お嬢さん。今のこいつはクレールに酔ってる」
「酔ってるってどういうこと?」
「...自覚がないのか」
はあ、と息を吐きながら、ラッシュさんは説明してくれた。
「おまえに渡す分は、実は俺みたいな純血種が使うものを薄めている。
人体に影響を及ぼさない程度の薬剤を使ったりもしてるが、それはまだ調合を終わらせてなかったものだ。それを呑んだってことは...」
だんだん頭がくらくらしてきた。
話を聞かないといけないのに、強い眠気に勝てそうにない。
「木葉、大丈、」
七海の声がしたような気がしたが、気のせいだろうか。
そんなことを考えているうちについに限界に達したらしく、そのまま瞼をおろした。
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