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遡暮篇(のぼりぐらしへん)
疼く傷痕
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それからどうやって眠ったのか覚えていない。
ただ、目を開けると隣で木葉が眠っていた。
涙の跡を指でなぞってそっと立ちあがる。
「...何か作ろう」
瞬間、頬にずきずき痛みがはしる。
どうしても耐えられなくてその場に座りこむ。
下手に動けば木葉を起こしてしまうし、足の怪我が酷くなってしまう可能性もある。
(やっぱり杖がないと動けないのは辛い...)
「うう、ん...」
「まだ寝てて大丈夫だから」
目を覚ましかけていた木葉にそう囁いて、時間をかけてその場を離れる。
彼が目を閉じたのを確認してから料理を少しずつ作っていく。
ただ、その間も痛みがやむことはなかった。
「...っ」
ただ卵を混ぜているだけなのに、ボウルを落としてしまいそうになる。
ほとんどの家事を木葉にやってもらっているのだから、せめてこれくらいは自分でやりたい。
「おはよう...」
「おはよう。一応ご飯はできたけど、食べられそう?」
「うん。ありがとう」
「それで、その...」
今日は結局、卵焼きを焦がしてしまった。
落としそうになりながら葱を混ぜたものの、その後火力が強すぎたらしい。
(焦げてるの、美味しくないんじゃないかな...)
じっと様子をうかがっていると、木葉は心配そうな表情を浮かべて優しく話しかけてきた。
「七海、大丈夫...?」
「何が?」
「なんだか無理をしているように見えたから、どうしたのかなって思ったんだ」
「卵焼き、失敗しちゃったなって...」
木葉はただそっかと言って笑った。
申し訳なさでいっぱいになっていると、優しく手首を掴まれる。
「すごく美味しいよ。作ってくれてありがとう」
「それならよかった」
痛む足をさすっていると、そのことにすぐ気づかれてしまった。
どうやって誤魔化そうか...そんなことを考えているうちにもう一方の腕を掴まれてしまう。
「足、本当はすごく痛いんじゃない?」
「話すつもりはなかったんだけど...ごめんなさい」
「あんまり無理しないで。具合が悪いときはそのまま休んだ方がいいよ」
怒られてしまうと思っていたのに、木葉はただ笑顔で語りかけてくれる。
それがすごくありがたくて、私はただごめんと呟くのがせいいっぱいだった。
「片づけは僕がやるから、それから包帯交換するね」
いつもは心を支えてくれているはずの優しさが、今は少し胸を締めつける。
ただごめんとありがとうを伝えることしかできない自分が嫌で仕方がなかった。
ただ、目を開けると隣で木葉が眠っていた。
涙の跡を指でなぞってそっと立ちあがる。
「...何か作ろう」
瞬間、頬にずきずき痛みがはしる。
どうしても耐えられなくてその場に座りこむ。
下手に動けば木葉を起こしてしまうし、足の怪我が酷くなってしまう可能性もある。
(やっぱり杖がないと動けないのは辛い...)
「うう、ん...」
「まだ寝てて大丈夫だから」
目を覚ましかけていた木葉にそう囁いて、時間をかけてその場を離れる。
彼が目を閉じたのを確認してから料理を少しずつ作っていく。
ただ、その間も痛みがやむことはなかった。
「...っ」
ただ卵を混ぜているだけなのに、ボウルを落としてしまいそうになる。
ほとんどの家事を木葉にやってもらっているのだから、せめてこれくらいは自分でやりたい。
「おはよう...」
「おはよう。一応ご飯はできたけど、食べられそう?」
「うん。ありがとう」
「それで、その...」
今日は結局、卵焼きを焦がしてしまった。
落としそうになりながら葱を混ぜたものの、その後火力が強すぎたらしい。
(焦げてるの、美味しくないんじゃないかな...)
じっと様子をうかがっていると、木葉は心配そうな表情を浮かべて優しく話しかけてきた。
「七海、大丈夫...?」
「何が?」
「なんだか無理をしているように見えたから、どうしたのかなって思ったんだ」
「卵焼き、失敗しちゃったなって...」
木葉はただそっかと言って笑った。
申し訳なさでいっぱいになっていると、優しく手首を掴まれる。
「すごく美味しいよ。作ってくれてありがとう」
「それならよかった」
痛む足をさすっていると、そのことにすぐ気づかれてしまった。
どうやって誤魔化そうか...そんなことを考えているうちにもう一方の腕を掴まれてしまう。
「足、本当はすごく痛いんじゃない?」
「話すつもりはなかったんだけど...ごめんなさい」
「あんまり無理しないで。具合が悪いときはそのまま休んだ方がいいよ」
怒られてしまうと思っていたのに、木葉はただ笑顔で語りかけてくれる。
それがすごくありがたくて、私はただごめんと呟くのがせいいっぱいだった。
「片づけは僕がやるから、それから包帯交換するね」
いつもは心を支えてくれているはずの優しさが、今は少し胸を締めつける。
ただごめんとありがとうを伝えることしかできない自分が嫌で仕方がなかった。
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