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追暮篇(おいぐらしへん)
私宛のもの
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ノワールが自分の部屋に入っていくのを見届けて、私はそっと封を切る。
どんなことが書かれているのかわくわくしているのが半分、もし迷惑がられていたらという不安が半分だ。
(美桜さん、寂しがってないかな...)
《拝啓
七海がどんな暮らしをしているのか、手紙でなんとなく分かりました。
楽しそうでよかった。本当に安心した》
温かい言葉が沢山並んでいて、少しだけほっとする。
もしまたたったひとりで寂しさと戦っていたら...そういう不安もあったけれど、暴走しているわけではなさそうだ。
《烏さんが色々教えてくれた。...随分仲良しなんだね》
美桜さんは神様なのだから、ノワールと話せても全然不思議ではない。
(でも、何を話したのかはすごく気になる...)
「...お茶でも淹れようかな」
木葉が帰ってくるまでに読みきってしまおう、そのつもりで数枚の便箋と向き合う。
《必要そうなものを送っておきます。
足りなかったらまた会えた日に渡す》
そこには、綺麗な扇に小刀が入っていた。
(扇はさておき、小刀は銃刀法違反になるんじゃ...)
内心苦笑しながら手紙に混ざっていた古い紙を見てみると、きちんとした本物の携帯許可証だった。
《それはあなたのお母さんが持っていたものだったけれど、その紙がないと駄目なんだって言っていたからそれも一緒に入れておく》
「お母さん...」
名義はしっかり私になっていて、全てのものを抱きしめる。
ノワールが運ぶのに苦戦しただろうなと思いつつ、懐かしいことを少しだけ思い出した。
『美桜さん、七海も上手にできたらおかあさんにほめてもらえる?』
『...多分。今でも充分上手いような気はするけれど』
『じゃあ、美桜さんもいっしょにほめてもらおう!』
...どうしてこんなに大切なことを忘れてしまっていたのだろう。
その後色々な場所を転々とすることになっても耐えられたのはこの想い出たちがあったからなのに、どうしてか日に日に思い出せなくなっていた。
ただ単に私がどこかで忘れてしまっていただけなのか、美桜さんの影響なのか...。
(簡単に訊けるようなことではないけど、気にはなる)
《怪我、早く治るといいね》
やたら治りが遅いことに疑問を感じつつ、早く治したいとは思っている。
毎日木葉にガーゼを換えてもらわないといけないのは申し訳ないし、心臓が持たない。
「ただいま」
「木葉...おかえりなさい」
「手紙、読み終わったの?」
「木葉も?」
そんな話をしながら、なんだか木葉の様子がおかしいことに気づく。
「どうかしたの?」
「...頬のガーゼ、換えさせて」
「あ、ありがとう...」
甘い雰囲気が流れるなか、木葉の表情は苦々しいものだった。
どんなことが書かれているのかわくわくしているのが半分、もし迷惑がられていたらという不安が半分だ。
(美桜さん、寂しがってないかな...)
《拝啓
七海がどんな暮らしをしているのか、手紙でなんとなく分かりました。
楽しそうでよかった。本当に安心した》
温かい言葉が沢山並んでいて、少しだけほっとする。
もしまたたったひとりで寂しさと戦っていたら...そういう不安もあったけれど、暴走しているわけではなさそうだ。
《烏さんが色々教えてくれた。...随分仲良しなんだね》
美桜さんは神様なのだから、ノワールと話せても全然不思議ではない。
(でも、何を話したのかはすごく気になる...)
「...お茶でも淹れようかな」
木葉が帰ってくるまでに読みきってしまおう、そのつもりで数枚の便箋と向き合う。
《必要そうなものを送っておきます。
足りなかったらまた会えた日に渡す》
そこには、綺麗な扇に小刀が入っていた。
(扇はさておき、小刀は銃刀法違反になるんじゃ...)
内心苦笑しながら手紙に混ざっていた古い紙を見てみると、きちんとした本物の携帯許可証だった。
《それはあなたのお母さんが持っていたものだったけれど、その紙がないと駄目なんだって言っていたからそれも一緒に入れておく》
「お母さん...」
名義はしっかり私になっていて、全てのものを抱きしめる。
ノワールが運ぶのに苦戦しただろうなと思いつつ、懐かしいことを少しだけ思い出した。
『美桜さん、七海も上手にできたらおかあさんにほめてもらえる?』
『...多分。今でも充分上手いような気はするけれど』
『じゃあ、美桜さんもいっしょにほめてもらおう!』
...どうしてこんなに大切なことを忘れてしまっていたのだろう。
その後色々な場所を転々とすることになっても耐えられたのはこの想い出たちがあったからなのに、どうしてか日に日に思い出せなくなっていた。
ただ単に私がどこかで忘れてしまっていただけなのか、美桜さんの影響なのか...。
(簡単に訊けるようなことではないけど、気にはなる)
《怪我、早く治るといいね》
やたら治りが遅いことに疑問を感じつつ、早く治したいとは思っている。
毎日木葉にガーゼを換えてもらわないといけないのは申し訳ないし、心臓が持たない。
「ただいま」
「木葉...おかえりなさい」
「手紙、読み終わったの?」
「木葉も?」
そんな話をしながら、なんだか木葉の様子がおかしいことに気づく。
「どうかしたの?」
「...頬のガーゼ、換えさせて」
「あ、ありがとう...」
甘い雰囲気が流れるなか、木葉の表情は苦々しいものだった。
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