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隠暮篇(かくれぐらしへん)
ふたりだけのワルツ
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「やっぱり似合うな、お嬢さん」
その声はとても優しいけれど、普段自分では選ばない洋服な分恥ずかしさもある。
「少しだけ、休んでもいいですか...?」
「木葉なら多分寝てるだろうし、お嬢さんのおかげでやっぱり進み具合がいい。
側にいて、起きた瞬間驚かせてやってくれ」
「...ありがとうございます」
全部を言わなくても分かってしまったのはどうしてだろう。
そう思いながらもラッシュさんに一礼して、音をたてないようにしながら部屋に入る。
近くにあった椅子を拝借して、すやすやと眠る木葉の側に座った。
(...それにしても)
自分が着ている服を見て、思わず息を吐いてしまう。
自分では絶対に選ばない類いの服...ふりふりのブラウスに、レースがついたズボン。
まるでお伽噺の主人公のような服装に、やっぱり戸惑いを隠せない。
ラッシュさんは笑顔でまた手伝ってもらうこともあるだろうからとくれたけれど、お礼なんて気にしないでほしいというのが本音だ。
(でも、私に合わせて作られた服なら他の人は着られないだろうし...)
そのとき、ばさっと羽音がしてそちらを向く。
そこには木葉の友人がとまっていた。
「...ノワール?」
ノワールは私の方に飛んできて、伸ばした腕にぴたっととまる。
移動してくる瞬間さえも微笑ましくて、そっと頭を撫でた。
「起こしちゃうといけないから、静かにね」
これだけ眠ったままの木葉も珍しい。
きっと彼にも私が知らない何かがあって、疲れてしまっているのだろう。
「...話してほしいと思うのは、我儘かな」
何かを隠していることは分かっている。
それでも、訊いていいかどうかは分からずにあと1歩が踏み出せない。
「七海...?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「...その格好、可愛いね」
「あ、ありがとう」
眩しいくらいの笑顔でそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、木葉のそれの破壊力はすさまじい。
「折角だから、ちょっとだけ踊ってみない?」
「神楽や剣舞なら」
「そうじゃなくて...こういうの」
立ちあがった木葉に体をぐっと引き寄せられて、そのまま倒れこんでしまいそうになる。
「どうすればいいの?」
「大丈夫。そのまま体を預けてて」
されるがまま躍り続けて、だんだん楽しくなってくる。
最後にターンをすると、部屋の中に拍手が響き渡った。
「おまえら、本当に仲がいいな」
「ら、ラッシュさん...」
「人がいる部屋に入るときはノックするのがマナーじゃない?」
恥ずかしくて何も言えなくなってしまう私と、ラッシュさんにむかって不機嫌そうに話す木葉。
そんな私たちを交互に見て、ラッシュさんはにやりと笑った。
「別にいいだろ、仲がいいのは本当のことなんだからよ。それより...折角だから木葉の分も作らせてくれ」
「いいの?」
「その代わり、この部屋の掃除を頼む」
ほとんど散らかっていないその場所を私たちはふたりで片づける。
時々窓から入ってくる夕陽が目に滲みた。
その声はとても優しいけれど、普段自分では選ばない洋服な分恥ずかしさもある。
「少しだけ、休んでもいいですか...?」
「木葉なら多分寝てるだろうし、お嬢さんのおかげでやっぱり進み具合がいい。
側にいて、起きた瞬間驚かせてやってくれ」
「...ありがとうございます」
全部を言わなくても分かってしまったのはどうしてだろう。
そう思いながらもラッシュさんに一礼して、音をたてないようにしながら部屋に入る。
近くにあった椅子を拝借して、すやすやと眠る木葉の側に座った。
(...それにしても)
自分が着ている服を見て、思わず息を吐いてしまう。
自分では絶対に選ばない類いの服...ふりふりのブラウスに、レースがついたズボン。
まるでお伽噺の主人公のような服装に、やっぱり戸惑いを隠せない。
ラッシュさんは笑顔でまた手伝ってもらうこともあるだろうからとくれたけれど、お礼なんて気にしないでほしいというのが本音だ。
(でも、私に合わせて作られた服なら他の人は着られないだろうし...)
そのとき、ばさっと羽音がしてそちらを向く。
そこには木葉の友人がとまっていた。
「...ノワール?」
ノワールは私の方に飛んできて、伸ばした腕にぴたっととまる。
移動してくる瞬間さえも微笑ましくて、そっと頭を撫でた。
「起こしちゃうといけないから、静かにね」
これだけ眠ったままの木葉も珍しい。
きっと彼にも私が知らない何かがあって、疲れてしまっているのだろう。
「...話してほしいと思うのは、我儘かな」
何かを隠していることは分かっている。
それでも、訊いていいかどうかは分からずにあと1歩が踏み出せない。
「七海...?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「...その格好、可愛いね」
「あ、ありがとう」
眩しいくらいの笑顔でそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、木葉のそれの破壊力はすさまじい。
「折角だから、ちょっとだけ踊ってみない?」
「神楽や剣舞なら」
「そうじゃなくて...こういうの」
立ちあがった木葉に体をぐっと引き寄せられて、そのまま倒れこんでしまいそうになる。
「どうすればいいの?」
「大丈夫。そのまま体を預けてて」
されるがまま躍り続けて、だんだん楽しくなってくる。
最後にターンをすると、部屋の中に拍手が響き渡った。
「おまえら、本当に仲がいいな」
「ら、ラッシュさん...」
「人がいる部屋に入るときはノックするのがマナーじゃない?」
恥ずかしくて何も言えなくなってしまう私と、ラッシュさんにむかって不機嫌そうに話す木葉。
そんな私たちを交互に見て、ラッシュさんはにやりと笑った。
「別にいいだろ、仲がいいのは本当のことなんだからよ。それより...折角だから木葉の分も作らせてくれ」
「いいの?」
「その代わり、この部屋の掃除を頼む」
ほとんど散らかっていないその場所を私たちはふたりで片づける。
時々窓から入ってくる夕陽が目に滲みた。
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