ハーフ&ハーフ

黒蝶

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日常篇

未知との遭遇

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...ボクノ、ハハオヤ?
「ごめん、ちょっと理解が追いついてない」
あんなに若くて綺麗な人が木葉のお母さんだなんて言われても、どうしても考えこんでしまう。
信じるとは言ったけれど、あまりに予想外の答えに戸惑っているのは事実だ。
「...純血種のヴァンパイアというのは、ある一定の時期から年をとらなくなるんだ。
僕は半分だから分からないけど、母親は純血種だから見た目の年齢が止まってる。...ラッシュさんもだけどね」
「知らなかった...」
「ごめんね、僕がちゃんと説明しておくべきだった」
純血種はということは、ラッシュさんもそうなのだろうか。
詳しく訊いてもいいのか困っていると、ドアが2回ノックされる。
(こんな時間に誰だろう?)
「ごめん、ちょっと見てくるね」
「僕も行く。心当たりがないんでしょ?」
「うん...」
扉を開けると、そこには傘が立て掛けられていた。
「その傘は七海の、だよね...」
「どうしてここにあるんだろう」
ふたりで顔を見合わせ、何も見なかったことにしてドアを閉める。
「傘、回収しなくてよかったの?」
「うん。あの傘、無くしたんじゃなくて人にあげたの。
びしょ濡れで風邪を引いちゃいそうだったから」
「...その人の気配は?」
真剣な眼差しを向けられて、私はその人の特徴を覚えている範囲で話した。
「黄色いワンピースを着た女の子で、何かを待ってるみたいにずっとその場から動かなくて...他の人は気づいていないみたいだった。
だけどその子からは、なんだか冷たい空気が漂ってい、て...」
そこからだんだん声が小さくなってしまう。
それは、ある可能性に気づいてしまったからだ。
「七海、大丈夫?」
「うん。もしかしてあの子、生者じゃなかったのかな...?」
「多分そうなんじゃないかな...」
私は相変わらず、見分けがつかないことがある。
雰囲気で何となく分かることもあれば、やっぱり困っている人がいたら助けたいと思う。
...私が1番助けてほしかったとき、周りの人たちにそうしてもらえなかった。
助けてと言えない人だって、きっと世界には沢山助けてほしいと思っている人が沢山いるのだから。
(いけない、また考えちゃった)
「その子はきっと、七海にお礼がしたかったんだろうね」
「私に?」
「傘をさしてもらえて嬉しかったんじゃないかな?
だから返しに来たとか...あ、どうして家を知っていたのかは謎だけど」
木葉の言葉はいつも温かい。
少し怖いけれど、あの女の子はとてもいい子だったのだろう。
玄関に置かれていたものを回収して、もう1度ご飯を温め直す。
あの傘をずっと大切にしようと思いながら、料理皿を握りしめた。
(ありがとう)
──心の中でそう呟きながら。
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