ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
上 下
16 / 258
日常篇

ハロウィンナイト

しおりを挟む
僕は半分化け物なんだ。
幼い頃のことを思い出して、ついそんな言葉が出てしまった。
七海と一緒にいたい...その想いが変わることはないが、少し怖いと思うこともある。
「いつか人に僕が人間じゃないってバレちゃったらどうしようって、ふとそんなことを考えちゃった」
ごめん、そう続けようとしたとき、七海に抱きしめられていた。
「ハロウィンは襲われないようにする為にってよく言うけど、私は違うと思う」
「どういうこと?」
「きっと、普段交流できない人たちとも仲良くできるようにあるんじゃないかな...?」
──嗚呼、やはり彼女は。
「それが人でもそうじゃなくても、悪戯好きな人でも感謝を伝えたい人でも...色んな理由の人が集まっていいんじゃないかな?」
やはり七海はすごい。
僕には絶対にできない考え方で、いつだって暗闇の中から連れ出してくれる。
「七海...」
「前にも言ったけど、私はどんな姿になっても木葉自身が好きだから」
沸きあがる衝動に耐えきれず、勢いに任せて抱きしめてしまう。
「木葉、どうしたの?」
「...ありがとう。僕も七海のこと大好きだよ」
「こんな街中で言われるのは、ちょっと恥ずかしいよ...」
顔を真っ赤にする七海にキスを落とすと、ますます頬が赤みを増す。
それだけでこんなに心が満たされるなんて、今まで全く知らなかった。
ただ、それと同時に危うい衝動がだんだんふくらむのも感じる。
「七海、よかったらなんだけど...僕の家にこない?」
「え、いいの?」
「七海が嫌じゃなかったら。ここから近いんだ」
人を家に招くのなんていつ以来だろう。
できるだけ関わらずに生きてきて、これからもそうするつもりだった。
けれど、そんな思いはあっという間に別のものに変わったのだ。
全部七海のおかげだから、きちんとお礼をしたい。
そして、できれば衝動を抑えきりたいところではある。
「木葉、行こう?」
向けられた太陽のような笑顔に、色んな想いが溢れてくる。
甘えてほしい、抱きしめていたい...噛みたい。
好きの気持ちの中には、噛みたいが少し混ざっているような気がする。
だが、これを堪えられるようになれば...もっと沢山の場所に行けるかもしれない。
「うん」
手を繋いでしばらく歩き、家へと招き入れる。
部屋を見て、七海は驚きの声をあげた。
「すごい、こんな家初めて見たかもしれない...」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

Tell me eMotion

黒蝶
キャラ文芸
突きつけられるのは、究極の選択。 「生き返るか、僕と一緒にくるか...」 全てに絶望した少女・雪芽は、ある存在と出会う。 そしてその存在は告げる。 「僕には感情がないんだ」 これは、そんな彼と過ごしていくうちにお互いの心を彩づけていく選択の物語。 ※内容が内容なので、念のためレーティングをかけてあります。

処理中です...