3 / 258
日常篇
夜のデート
しおりを挟む
「ごめんね、また僕に合わせてもらっちゃって...」
「私がデートしたかっただけだから」
結局あのあともなかなか動くことができず、七海にお世話になりっぱなしだった。
「今日はどこのお店に行こうか」
「そうだな...あ、あそこに雑貨屋さんとレストランが併設されてる施設ができたんだって」
「それじゃあ、そこに行ってみよう!」
あの夜助けられてからというもの、週に1回以上会っている。
七海は知らないだろうけど、独りで過ごす時間を『寂しい』と思ってしまう。
...今までどうやって過ごしていたんだったか。
「木葉...?もしかして、嫌だった?」
「ううん、ちょっと考え事をしてただけ!
それと、こうして一緒にいられて楽しいなって思ったんだ」
「それならいいけど...」
彼女には心配性なところがある。
少し体調が悪いとずっと側についていてくれるし、怪我をするとものすごい勢いで包帯をぐるぐる巻きにされたこともあった。
「七海、通り過ぎてるよ」
「え、ここなのかな?普通の家みたいに見えるけど...」
ふたりで入ってみると、そこには色とりどりの物がずらりと並べられている。
まるで宝石のように輝いていて、手にとるのが憚られるほどのものだった。
「綺麗...」
「そうだね」
七海が選んだのは、海のような色を放つストラップだった。
「それちょっと貸して?」
「駄目だよ、ちゃんと自分で払うから...!」
「君がそのつもりなら...」
店内であることも全く気にせず、おもいっきり恋人の体を抱きしめる。
「え、ちょっと、木葉...!」
「すみません、お会計をお願いします」
店長さんらしき人は仲がいいのね、なんて話して笑ってくれた。
レストランに移動して席に着くと、七海は真っ赤な顔で僕の方に視線を向ける。
「あ、あんな方法でお金を払うのは禁止。
恥ずかしいから...」
「ああでもしないと自分で払うつもりだったでしょ?
今夜の思い出になるといいなって思ったんだ」
「そういう言い方をするのは、狡い」
しばらく話していると頼んだものが運ばれてくる。
ひとくち、またひとくちと食べていると、七海にあるものを渡された。
「...これ、さっきのお店で買ったんだ」
「え、いつの間に?」
「木葉がわくわくして別のコーナーを見ているとき、プレゼントにって思って...開けてみて」
言われたとおり箱の蓋を持ちあげると、中からは先程七海に買ったストラップの色違いのものが出てきた。
それは透きとおった緑で、綺麗という言葉では表しきれないほど美しい。
「木葉の瞳の色に似てるなって思ったんだけど、気にいらなかった?」
「すごくいい色だね!ありがとう、大事にする」
手の中で揺れるストラップを気にしつつ、目の前の笑顔に見惚れる。
──七海が1番綺麗だよって、伝えられればよかったのに。
「私がデートしたかっただけだから」
結局あのあともなかなか動くことができず、七海にお世話になりっぱなしだった。
「今日はどこのお店に行こうか」
「そうだな...あ、あそこに雑貨屋さんとレストランが併設されてる施設ができたんだって」
「それじゃあ、そこに行ってみよう!」
あの夜助けられてからというもの、週に1回以上会っている。
七海は知らないだろうけど、独りで過ごす時間を『寂しい』と思ってしまう。
...今までどうやって過ごしていたんだったか。
「木葉...?もしかして、嫌だった?」
「ううん、ちょっと考え事をしてただけ!
それと、こうして一緒にいられて楽しいなって思ったんだ」
「それならいいけど...」
彼女には心配性なところがある。
少し体調が悪いとずっと側についていてくれるし、怪我をするとものすごい勢いで包帯をぐるぐる巻きにされたこともあった。
「七海、通り過ぎてるよ」
「え、ここなのかな?普通の家みたいに見えるけど...」
ふたりで入ってみると、そこには色とりどりの物がずらりと並べられている。
まるで宝石のように輝いていて、手にとるのが憚られるほどのものだった。
「綺麗...」
「そうだね」
七海が選んだのは、海のような色を放つストラップだった。
「それちょっと貸して?」
「駄目だよ、ちゃんと自分で払うから...!」
「君がそのつもりなら...」
店内であることも全く気にせず、おもいっきり恋人の体を抱きしめる。
「え、ちょっと、木葉...!」
「すみません、お会計をお願いします」
店長さんらしき人は仲がいいのね、なんて話して笑ってくれた。
レストランに移動して席に着くと、七海は真っ赤な顔で僕の方に視線を向ける。
「あ、あんな方法でお金を払うのは禁止。
恥ずかしいから...」
「ああでもしないと自分で払うつもりだったでしょ?
今夜の思い出になるといいなって思ったんだ」
「そういう言い方をするのは、狡い」
しばらく話していると頼んだものが運ばれてくる。
ひとくち、またひとくちと食べていると、七海にあるものを渡された。
「...これ、さっきのお店で買ったんだ」
「え、いつの間に?」
「木葉がわくわくして別のコーナーを見ているとき、プレゼントにって思って...開けてみて」
言われたとおり箱の蓋を持ちあげると、中からは先程七海に買ったストラップの色違いのものが出てきた。
それは透きとおった緑で、綺麗という言葉では表しきれないほど美しい。
「木葉の瞳の色に似てるなって思ったんだけど、気にいらなかった?」
「すごくいい色だね!ありがとう、大事にする」
手の中で揺れるストラップを気にしつつ、目の前の笑顔に見惚れる。
──七海が1番綺麗だよって、伝えられればよかったのに。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる