満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・夏休み

久しぶりの手紙、緊張した。

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「...やってみよう」
ある日、思い浮かんだことをやってみることにした。
もうすぐ休みも終わる。
だから、それまでに何としてでも成し遂げたい。
《葉月へ

最近、どう過ごしていますか?
私は最近、ゲームセンターに行ってきました。
なかなか面白い仕組みの新しいクレーンゲームができてたよ。
なかなかとれなくて、苦戦した。
また今度、機会があったら一緒に行きたいな》
返事がくる可能性は、限りなく零に近い。
それでも、やってみる価値はあるはずだ。
《返事は葉月がしたいと思ったときにくれればいいし、嫌なら返さなくてもいい。
そういえば、最近和菓子屋さんで新しいメニューが出たよ。
あとは、夏限定のアイスが出て...すごく美味しいんだよ。
私のおすすめはやっぱり抹茶だけど、人気なのは王道のバニラらしい。
いつか一緒に食べられるといいよね。
また連絡する。迷惑だったらごめんね。

弥生》
なんとか書き終えたけれど、心臓がばくばくして止まらない。
(これを出しに行くわけだけど、もし嫌がられたらどうしよう...)
考えれば考えるほど、そんな不安に襲われる。
...怖い。
本当は怖くてしかたがない。
もし拒絶されたら、もし読んでもらえなかったら、もし傷つけてしまったら...。
どうしてもそんなことばかりで頭が埋め尽くされる。
(お願い、どうか届いて...)
本当は学校にだってきてほしい。
けれど、それを言われるのがどれだけ負担になるかは...身を以て知ってるから。
学校に行かないことが、身を守ることに繋がることもある。
「...葉月、読んで」
ポストに吸いこまれていく封筒を見つめながら、私はそっと目を閉じる。
思い浮かぶのは葉月の顔と、かつての親友の笑顔だった。

記録
『もうすぐ新学期。
弥生から手紙が届いた。
私は全く返事をかえせていないのに、いつも優しくしてくれて本当に嬉しいと感じると同時に申し訳なく思う。
弥生を独りにしてしまって怒られても仕方ないのに、弥生は絶対に私を否定しない。
それに、学校にこいというようなことは言わないでいてくれる。
...一緒に過ごす為に頑張りたい。
なんとか一緒に過ごせるようになりたいな...』
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