満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目前期

久しぶりの実感、独りでもやるしかない。

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記録
『弥生と、久しぶりに話した気がする。
画面越し、震える指を動かして...ようやくごめんを言えた。
...言えてよかった。
前期の残り、ゆっくり休もう。
...できるだけあの人たちに会わないようにしながら。
お買い物は、ネットショッピングで済ませて...』

スポーツ大会、というものがある。
それに参加しないと、特別課題の点数が足りなくなってしまう...。
(怖い...でも、ちゃんと行かなくちゃ)
運動音痴の私が独りで行かなければならないのは、やっぱり辛いと思うところもある。
けれど、それでもやるしかないのだ。
どんな状況でも切り抜けなくてはならないのだと、強く思った。
...のだけれど。
「悪い、ちょっと一回だけ先生と組んでくれる?」
見学している人も多い中、人手が足りない試合に補充要員として入ったり、審判をすることがかなりあった。
けれど、補充要員として入ったときはいつも話す先生がパートナーで...相性が悪い訳ではなかった。
「お、ナイス!」
『弥生、やっぱり上手いね!』
『そうかな...?』
目を閉じて、そんなことを思い出す。
...葉月の笑顔を忘れてしまいそうで、少しだけ怖くなる。
だんだん泣きたくなるのを必死で堪えて、なんとかその場をやり過ごした。
「それじゃあみなさん、お疲れ様でした」
知らない人が混ざっていると思っていたら、どうやら夜間部と合同だったらしい。
(水曜日にきている人たちがいるにしても人数が多いと思った...)
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れ」
そんな言葉を交わして、外へ出る。
...私の足はいつもより重いような気がした。
夜。いつもの場所へ行ってみても、やっぱり葉月はいなかった。
「...っ!」
これは明日、筋肉痛で動けなくなるだろう。
それと、捻った足が微妙にずきずきと痛む。
...やっぱり夜風が気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうになる。
(ここに埋もれていたい...)
それだけ安心していられる場所で、そういった場所はもうここしかなくて...。
何よりも、それを一番痛感した。
いてもいいのだと心から思える場所が、人がこない大木だけがたっている場所で...多分、私は普通じゃない。
普通になんか、なれない。
『弥生』
あんなふうに優しく呼ばれることも、きっとない。
やり場のない思いを慰めるように、夜風がふわっとさっきより優しく頬を撫でた。
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