102 / 150
本篇・1年目前期
久しぶりの実感、独りでもやるしかない。
しおりを挟む
記録
『弥生と、久しぶりに話した気がする。
画面越し、震える指を動かして...ようやくごめんを言えた。
...言えてよかった。
前期の残り、ゆっくり休もう。
...できるだけあの人たちに会わないようにしながら。
お買い物は、ネットショッピングで済ませて...』
スポーツ大会、というものがある。
それに参加しないと、特別課題の点数が足りなくなってしまう...。
(怖い...でも、ちゃんと行かなくちゃ)
運動音痴の私が独りで行かなければならないのは、やっぱり辛いと思うところもある。
けれど、それでもやるしかないのだ。
どんな状況でも切り抜けなくてはならないのだと、強く思った。
...のだけれど。
「悪い、ちょっと一回だけ先生と組んでくれる?」
見学している人も多い中、人手が足りない試合に補充要員として入ったり、審判をすることがかなりあった。
けれど、補充要員として入ったときはいつも話す先生がパートナーで...相性が悪い訳ではなかった。
「お、ナイス!」
『弥生、やっぱり上手いね!』
『そうかな...?』
目を閉じて、そんなことを思い出す。
...葉月の笑顔を忘れてしまいそうで、少しだけ怖くなる。
だんだん泣きたくなるのを必死で堪えて、なんとかその場をやり過ごした。
「それじゃあみなさん、お疲れ様でした」
知らない人が混ざっていると思っていたら、どうやら夜間部と合同だったらしい。
(水曜日にきている人たちがいるにしても人数が多いと思った...)
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れ」
そんな言葉を交わして、外へ出る。
...私の足はいつもより重いような気がした。
夜。いつもの場所へ行ってみても、やっぱり葉月はいなかった。
「...っ!」
これは明日、筋肉痛で動けなくなるだろう。
それと、捻った足が微妙にずきずきと痛む。
...やっぱり夜風が気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうになる。
(ここに埋もれていたい...)
それだけ安心していられる場所で、そういった場所はもうここしかなくて...。
何よりも、それを一番痛感した。
いてもいいのだと心から思える場所が、人がこない大木だけがたっている場所で...多分、私は普通じゃない。
普通になんか、なれない。
『弥生』
あんなふうに優しく呼ばれることも、きっとない。
やり場のない思いを慰めるように、夜風がふわっとさっきより優しく頬を撫でた。
『弥生と、久しぶりに話した気がする。
画面越し、震える指を動かして...ようやくごめんを言えた。
...言えてよかった。
前期の残り、ゆっくり休もう。
...できるだけあの人たちに会わないようにしながら。
お買い物は、ネットショッピングで済ませて...』
スポーツ大会、というものがある。
それに参加しないと、特別課題の点数が足りなくなってしまう...。
(怖い...でも、ちゃんと行かなくちゃ)
運動音痴の私が独りで行かなければならないのは、やっぱり辛いと思うところもある。
けれど、それでもやるしかないのだ。
どんな状況でも切り抜けなくてはならないのだと、強く思った。
...のだけれど。
「悪い、ちょっと一回だけ先生と組んでくれる?」
見学している人も多い中、人手が足りない試合に補充要員として入ったり、審判をすることがかなりあった。
けれど、補充要員として入ったときはいつも話す先生がパートナーで...相性が悪い訳ではなかった。
「お、ナイス!」
『弥生、やっぱり上手いね!』
『そうかな...?』
目を閉じて、そんなことを思い出す。
...葉月の笑顔を忘れてしまいそうで、少しだけ怖くなる。
だんだん泣きたくなるのを必死で堪えて、なんとかその場をやり過ごした。
「それじゃあみなさん、お疲れ様でした」
知らない人が混ざっていると思っていたら、どうやら夜間部と合同だったらしい。
(水曜日にきている人たちがいるにしても人数が多いと思った...)
「お疲れ様でした」
「はい、お疲れ」
そんな言葉を交わして、外へ出る。
...私の足はいつもより重いような気がした。
夜。いつもの場所へ行ってみても、やっぱり葉月はいなかった。
「...っ!」
これは明日、筋肉痛で動けなくなるだろう。
それと、捻った足が微妙にずきずきと痛む。
...やっぱり夜風が気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうになる。
(ここに埋もれていたい...)
それだけ安心していられる場所で、そういった場所はもうここしかなくて...。
何よりも、それを一番痛感した。
いてもいいのだと心から思える場所が、人がこない大木だけがたっている場所で...多分、私は普通じゃない。
普通になんか、なれない。
『弥生』
あんなふうに優しく呼ばれることも、きっとない。
やり場のない思いを慰めるように、夜風がふわっとさっきより優しく頬を撫でた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる