満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目前期

久しぶりに感じる夜風が、少しだけ心地よかった。

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記録
『今日、スマートフォンを確認してみると、沢山のメッセージがきていた。
その中には、先生からのものもあった。
ただ一言、《体調はどうですか?》って...その優しさに、涙が出そうになった。
ただ、やっぱり返す気にはなれなくて、そのまま放置してしまった。
弥生からもきているからちゃんと返したいのに...』

「いらっしゃい」
「大福ください」
「あらあら、いつもありがとね」
いつものように大福を買って、そのままいつもの場所に直行する。
(葉月...今日もきてないみたいだな)
二人分の大福を食べて、ただ無感情に空を見あげる。
「...星」
葉月も同じ空を見ているだろうか...なんて、らしくないことを考えてしまう。
(大丈夫かな...)
何があったのか、
体調が悪いのか、
一人で苦しんでいるんじゃないのか...
聞きたいことは沢山あるけれど、質問攻めにはしたくない。
だから私は今日も、無難な内容を送ってみる。
《葉月

今日は星が綺麗だよ。
新食感の大福を試しながら、いつもの場所で星を眺めています。
葉月が可愛すぎてどこから食べていいか分からないって言ってた和菓子、パンダのが出てた。
今度一緒に食べよう》
学校のことは伏せて、できるだけ無難に...。
そして、葉月が傷つかないように。
「...何もできないのかな」
私には、何もできないのかもしれない。
今だって、何ができるか分からない。
本当にこれでいいのか、もっとできることがあるんじゃないか...色々考えてはみるけれど、答えは出ない。
きっと正解はひとつではないのだろうけれど、それでも自分なりの答えを出したかった。
「...どうするのが一番よかったんだろう」
口からはそんな言葉がもれだして、それと同時に涙が止まらなくなる。
...少し冷たい夜風が、そっと頬を撫でる。
「優しいね」
誰に宛てるでもなく、風に向かってそっと言葉を投げかける。
すると、再び風が頬を撫でた。
(すごく心が落ち着く...)
また泣きそうになるのを堪えながら、必死に前を向く。
そして、そのまま芝生に寝転がった。
今日はこの景色を見ていたい、不思議とそんな気分になる。
...結局、深夜まで独り星を見続けた。
葉月にまた会えますようにと。
半年、独りでも頑張れますようにと。
...そんな願いをこめて。
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