満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目前期

久しぶりの独り、上手く息ができない。

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記録
『私はまた学校に行けなくなってしまった。
弥生を独りにしてしまうのは辛い。
私も、独りでいるのが辛い。
あんなに日曜日が楽しみだったはずなのに、でも、どうしても体が動いてくれないの。
返事もかえせなくなってどのくらいだろう。
もう、日付の感覚もない。
...ごめんなさい』

葉月と連絡がとれなくなって、二週間。
こんなに独りでいるのは久しぶりなような気がする。
家に行ってみるべきか、それとも...。
迷っていると、元・担任の先生に放課後きてほしいと言われた。
(先生、部活持ってなかったっけ...)
通信制にだって、部活はある。
但し、運動部だけなので私も葉月も入らなかった。
なんだか息ができない。
どうして、と言われれば答えられないけれど、上手く息が吸えていないような気がする。
「...寂しいな」
体育の授業中、口をついてそんな言葉が出てしまう。
「...」
結局、あれから見学ばかりしている。
もし参加したとしても、組むことになるのは全然知らない後輩とになるからだ。
...それが辛い。
「はい、それじゃあ片づけましょう」
私はただ休んでいるだけ。
だから、準備と片づけは率先してやった。
他の人たちはへとへとになるまで試合してるのに、私は見ているだけだから。
二人で笑いあっている人たちの姿を見て、なんだか遠い過去と重なる。
『そっち重いなら持とうか?』
『ううん、私が持ちたいの!』
...あの時間も。
『葉月、そっち重いから持つよ』
『弥生は力持ちなんだね...』
...あの時間も。
どちらも崩壊したのは私のせいだ。
私が壊したも同然なのだ。
私は周りを不幸にしてしまう。
(私、何の為にいるんだろう...)
葉月とお揃いにしたハンカチが、手の中でひらひらと揺れている。
「...あれ?」
独り教室にいるとき気づく。
...いつのまにか、頬を涙が伝っていることに。
「...」
ハンカチで急いで顔を覆う。
声はあげずに、ただ泣き続けた。
どうして私の側にいる子たちを、いつも不幸にしてしまうんだろう。
...落ちこんでばかりではいられない。
(取り敢えずメッセージを送ってみよう)
返信がこなくてもいい。
返信できないくらい元気がないなら、それでもいい。
けれど、せめて。
せめてできることはしたい。
二週間の孤独が、それだけで吹き飛ぶような気がする。
(...そうだ、職員室に行かないと)
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