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本篇・1年目前期
1等星に願いを。弥生side
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今夜はわらび餅を持って待っていよう、そう思ってお店で選んでいた。
「これ、新作ですか?」
「そうですよ。好きなのおまけするから、選んでね」
「ありがとうございます」
わらび餅の他に、いつもの大福を買う。
「それじゃあ、おまけをどうぞ」
「これにします。またきます」
可愛らしいうさぎのべっこう飴をもらう。
なんだか嬉しくなって、なかなか食べられずにいた。
葉月からの連絡に、何と返せばいいのかかなり迷った。
ただ、安心してほしかった。
(あの先生、やっぱり外れだったか)
都会ではどうなのか分からないけれど、定年間近の教師が異動になる理由は二つ。
一つは、主幹や教頭、校長に昇格した場合。
もう一つは...問題をおこして失敗した場合。
なんとなく、勘で後者なのではないかと思っていた。
(あの教師、なんだか信用できない)
一人分のべっこう飴をそっと口に含む。
「...美味しい」
今日は葉月はこないのかもしれない、そう思っていたときだった。
「弥生...」
「葉月、体調は?」
「もう大丈夫だよ」
なんだか元気がない。
頭痛のせいなのか、それとも何かあったのか...。
「何かあった?」
「ううん、何にもないよ」
「...そっか」
ふと空を見あげると、そこには一段と輝く星がうかんでいた。
「葉月、あれ綺麗だね」
「ほんとだ...どうしてあれだけ輝いてるんだろう」
「1等星だからだと思う。この時季って何か星座が見えたような気もする...なんだったかな」
葉月に踏みこまなかった。
踏みこめなかった。
嫌がられるのが怖くて、何も言えなかった。
「食べよう」
「うん!」
それが空元気だということくらい分かっていたのに、こういう日もあると無理矢理納得させた。
「やっぱり大福はいいね」
「うん、すごく美味しい!どうやったらこんなに美味しくなるのかな...」
それから少しして葉月は帰ってしまった。
「...何やってるんだろう」
数年前の出来事を思い出す。
『ずっと友だちだよ!』
『ありがとう...』
私の味方でいてくれた人。
ずっとずっと、私の側にいてくれた人。
けれど、やっぱり私は...。
...どうか、少しでも葉月の気が楽になりますように。
流れ星でもないのに、一等星に願ってしまう。
そのとき、鈍く光ったような気がした。
翌日以降、段々葉月と会う時間が減ってきて...。
「また明日ね!」
けれど、そう言って笑うものだから安心していた。
次の日曜日、葉月は学校にこなかった。
ーーそれから葉月を見かけることはなくなってしまった。
「これ、新作ですか?」
「そうですよ。好きなのおまけするから、選んでね」
「ありがとうございます」
わらび餅の他に、いつもの大福を買う。
「それじゃあ、おまけをどうぞ」
「これにします。またきます」
可愛らしいうさぎのべっこう飴をもらう。
なんだか嬉しくなって、なかなか食べられずにいた。
葉月からの連絡に、何と返せばいいのかかなり迷った。
ただ、安心してほしかった。
(あの先生、やっぱり外れだったか)
都会ではどうなのか分からないけれど、定年間近の教師が異動になる理由は二つ。
一つは、主幹や教頭、校長に昇格した場合。
もう一つは...問題をおこして失敗した場合。
なんとなく、勘で後者なのではないかと思っていた。
(あの教師、なんだか信用できない)
一人分のべっこう飴をそっと口に含む。
「...美味しい」
今日は葉月はこないのかもしれない、そう思っていたときだった。
「弥生...」
「葉月、体調は?」
「もう大丈夫だよ」
なんだか元気がない。
頭痛のせいなのか、それとも何かあったのか...。
「何かあった?」
「ううん、何にもないよ」
「...そっか」
ふと空を見あげると、そこには一段と輝く星がうかんでいた。
「葉月、あれ綺麗だね」
「ほんとだ...どうしてあれだけ輝いてるんだろう」
「1等星だからだと思う。この時季って何か星座が見えたような気もする...なんだったかな」
葉月に踏みこまなかった。
踏みこめなかった。
嫌がられるのが怖くて、何も言えなかった。
「食べよう」
「うん!」
それが空元気だということくらい分かっていたのに、こういう日もあると無理矢理納得させた。
「やっぱり大福はいいね」
「うん、すごく美味しい!どうやったらこんなに美味しくなるのかな...」
それから少しして葉月は帰ってしまった。
「...何やってるんだろう」
数年前の出来事を思い出す。
『ずっと友だちだよ!』
『ありがとう...』
私の味方でいてくれた人。
ずっとずっと、私の側にいてくれた人。
けれど、やっぱり私は...。
...どうか、少しでも葉月の気が楽になりますように。
流れ星でもないのに、一等星に願ってしまう。
そのとき、鈍く光ったような気がした。
翌日以降、段々葉月と会う時間が減ってきて...。
「また明日ね!」
けれど、そう言って笑うものだから安心していた。
次の日曜日、葉月は学校にこなかった。
ーーそれから葉月を見かけることはなくなってしまった。
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