満天の星空に願いを。

黒蝶

文字の大きさ
上 下
93 / 150
本篇・1年目前期

メッセージに願いを。葉月side

しおりを挟む
「それじゃあ、また後で」
「うん!」
弥生は体育が終わると帰ってしまった。
「学校にはだいぶなれたかな?」
「え、あ、はい」
背後から声をかけてきたのは、初老の教師だった。
(どうして私が一人でいるところにきたんだろう...)
恐怖に近い感情で、どっと汗が吹き出る。
「つ、次の授業があるので失礼します」
ゆっくり歩いていると、何故か後からついてくる。
私は少し怖くなって、ペースを早めた。
(次の時間ってここだっけ...)
今日はお弁当も一人で食べなければならない。
けれど私は、一人になれる場所を知らない。
色々ありつつも、なんとか午前中を乗りきる。
「...はあ」
「大丈夫?ちょっと顔色悪いけど...」
そう声をかけてくれたのは、前の担任の先生だ。
「すみません、保健室を使わせてもらってもいいですか...?お昼休みが終わったら、授業には行くので」
「頭痛?」
私は小さく頷く。
本当は薬で抑えられるくらいだけれど、あの先生がきそうで怖かった。
今こられても、対処できない。
(どうすればいいんだろう...)
布団に寝かせてもらいながら、保健の先生が出ていった瞬間に弥生にメッセージを送る。
《あの先生、何かが変。どうしよう、気づきたくなかった...》
少しして返信がかえってくる。
《世界には知らない方がいいこともあるのに、私が変なこと言ったせいでごめん。
大丈夫?何があったの?》
読んでからすぐ返信する。
《どうして私が一人のところに話しかけてきたのかな...。
それから、どうして後ろからついてきたんだろう?》
《そうだな...葉月が一人でいるのを初めて見たから、心配だったとかかな?
それか、本当は校舎になれてないから迷ってたとか》
その後半部分に笑ってしまった。
《ありがとう!迷子だったって思うことにする!
そろそろ授業だから行くね!》
次は、本日二回目の体育だ。
「はい、それじゃあ体育をやっていこうと思います。ペアを組んでください」
全く知らない人と、ペア?
どうすればいいのか、一瞬で分からなくなった。
周りがざわざわとなっていくなか、私は全然知らない人と組むことになった。
「...」
「...」
しかも、種目は全くルールを知らないテニス。
けれど、相手に話しかけることができない。
...私はこの時間をどうやって乗り切ったのか、覚えていない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

処理中です...