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本篇・春休み
逃亡に願いを。葉月side
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「どうしても、家にいたくなかったの。...ごめんなさい」
「何があったのかは聞かせて」
私は頷いて、ゆっくり話しはじめた。
...それは、数時間前のこと。
「あれ...何時...?」
気づいたときには空が朝焼けで眩しくて、ヒステリックなものを聞かなくて済むようにした結果、自分がそのまま寝てしまっていたのだと気づく。
(流石にもういないよね、静かだし...)
やっぱりいなくなっていてほっとしたそのとき、忘れ物を取りにきたあの人に会ってしまったのだ。
「おはよう」
「...おはよう」
「今日は早く帰れそうなの!一緒にご飯に行きましょう」
あんな修羅場に居合わせろと言うのだろうか。
「ごめんなさい、今日はちょっと...」
その瞬間、事情も聞かずに爆発した。
「なんで?なんで私との予定が優先じゃないの?というか、他に予定があるならそっちを断るでしょ、普通!なんで私の言うことが聞けないの!」
いつものがはじまってしまって、私はただ固まってしまった。
具合がよくないから休ませてほしいと言いたかっただけなのに、どうしてそんなことを言われなければならないのか。
(結局、分かろうとなんてしてない)
「...私は」
「何?」
「私は、あなたの操り人形じゃない」
冷静に言いたいことをぶつける。
「あなたとは絶対に行かない。楽しくないから。今日はどうしても外せない約束があるから邪魔しないでください」
私はすぐ出られるようにといつも準備しているものを片手に家を出た。
...振り返ることもせずに。
「そっか、そんなことがあったんだね...」
弥生は何も言わずに最後まで聞いてくれた。
「逃げちゃった。...逃げちゃいけなかったのに、気づいたら必死に走ってた」
弥生はそっと手を握ってくれる。
「大丈夫。...ただ、明日は帰った方がいいかもしれないね。下手をすると警察が動くかもしれないから」
もう既に、泊まっていってもいいという反応でほっとした。
「丁度葉月が読んでた本を読もうと思ってたところなんだ。何か飲み物とってくるから、それまでに荷物はこの前の部屋に入れておいで」
「ありがとう...」
「今日はお泊まり会だったってことにしようか」
「ごめんね...」
「そんなに気にしなくてもいいから、ご飯何が食べたいかとか考えておいて」
今回も弥生の優しさに甘えてしまった。
(どうして弥生はいつも優しくしてくれるんだろう)
そう思うと涙が止まらなくなって、しばらくその場にとどまった。
「何があったのかは聞かせて」
私は頷いて、ゆっくり話しはじめた。
...それは、数時間前のこと。
「あれ...何時...?」
気づいたときには空が朝焼けで眩しくて、ヒステリックなものを聞かなくて済むようにした結果、自分がそのまま寝てしまっていたのだと気づく。
(流石にもういないよね、静かだし...)
やっぱりいなくなっていてほっとしたそのとき、忘れ物を取りにきたあの人に会ってしまったのだ。
「おはよう」
「...おはよう」
「今日は早く帰れそうなの!一緒にご飯に行きましょう」
あんな修羅場に居合わせろと言うのだろうか。
「ごめんなさい、今日はちょっと...」
その瞬間、事情も聞かずに爆発した。
「なんで?なんで私との予定が優先じゃないの?というか、他に予定があるならそっちを断るでしょ、普通!なんで私の言うことが聞けないの!」
いつものがはじまってしまって、私はただ固まってしまった。
具合がよくないから休ませてほしいと言いたかっただけなのに、どうしてそんなことを言われなければならないのか。
(結局、分かろうとなんてしてない)
「...私は」
「何?」
「私は、あなたの操り人形じゃない」
冷静に言いたいことをぶつける。
「あなたとは絶対に行かない。楽しくないから。今日はどうしても外せない約束があるから邪魔しないでください」
私はすぐ出られるようにといつも準備しているものを片手に家を出た。
...振り返ることもせずに。
「そっか、そんなことがあったんだね...」
弥生は何も言わずに最後まで聞いてくれた。
「逃げちゃった。...逃げちゃいけなかったのに、気づいたら必死に走ってた」
弥生はそっと手を握ってくれる。
「大丈夫。...ただ、明日は帰った方がいいかもしれないね。下手をすると警察が動くかもしれないから」
もう既に、泊まっていってもいいという反応でほっとした。
「丁度葉月が読んでた本を読もうと思ってたところなんだ。何か飲み物とってくるから、それまでに荷物はこの前の部屋に入れておいで」
「ありがとう...」
「今日はお泊まり会だったってことにしようか」
「ごめんね...」
「そんなに気にしなくてもいいから、ご飯何が食べたいかとか考えておいて」
今回も弥生の優しさに甘えてしまった。
(どうして弥生はいつも優しくしてくれるんだろう)
そう思うと涙が止まらなくなって、しばらくその場にとどまった。
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