満天の星空に願いを。

黒蝶

文字の大きさ
上 下
65 / 150
本篇・1年目後期

テスト発表に願いを。弥生side

しおりを挟む
(午前中一時間、午後から最後の二時間って...)
嘘でしょ、の一言に尽きた。
「はい、それじゃあ現国のテスト範囲です。まずはレポート第六回、『こころ』。これは絶対に出します」
メモを取っていくのだけれど、予想外に範囲が広いようで狭い。
(...つまり、言われた場所は全部答えられるくらいにしておかないと点数が取れないということかな)
お昼まで待っていようかとも思ったのだけれど流石にそこまで間を持たせられず、仕方なく一度家に戻る。
「...洗濯物を片づけようかな」
ただ無心で食器や衣類を片づけていく。
どうやら最近の学校の流行りは『こころ』らしい。
中学でもあの学校でも、『こころ』が範囲のテストがあった。
《無理して間に合わせなくていいからね》
葉月の気遣いいっぱいの返信を見て、畳んでいた洗濯物を放り出してただ走った。
葉月がいなかったときの私のように、葉月はきっと一人でご飯を食べている。
(どうして気づかなかったんだろう)
大福ボックスしか持っていないけれど、そんなことはどうでもよかった。
「葉月」
「弥生...!どうしたの、汗びっしょりだよ?」
「は、葉月と食べたくて...ちょっと走った」
嘘だ。本当は十分ほど走った。
けれど、そんなことを言えば、きっとまた葉月に気を遣わせてしまう。
「それより...食べよう」
「うん!」
色とりどりの大福を出すと、葉月の目がきらきらと輝いていた。
「ねえ、それって何味?」
「なんか色々あるらしいよ。...どれかあげる」
「いいの?ありがとう」
葉月が選んだのは、パンダの形をした大福だった。
「美味しい?」
「うん、すごく。胡麻かな...?」
変わり種もあると評判で、試しに食べてみたかったのだ。
「弥生は可愛いものが好きなんだね」
「小物とかはそうかも。...服はそういうのは苦手で着ないけど」
二人で食べ終え、次の教室に向かう。
体育が実技だけならよかったのにと思いながら向かう。
「はい、それじゃあ体育の範囲!レポート一枚しかないし、まあこれしかないよな。...ここは出すっていうところ言うから、メモしておいてください」
ちゃんと赤点の人を出さない工夫をしているのだと、さっきからよく分かる。
(頑張って勉強しよう)
他の人たちは八教科、対して私は三教科だ。
他の人たちより時間があるうえ、来週は学校そのものが休みで...テストは二時間・一時間の割合。
絶対にやってやると小さく決意しながら、発達と保育の範囲もしっかりメモしておいたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫と愛人が私を殺す計画を立てているのを聞いてしまいました

Kouei
恋愛
結婚してから3か月。 夜会である女性に出会ってから、夫の外出が増えた。 そして夫は、私の物ではないドレスや宝飾の購入していた。 いったい誰のための物? 浮気の現場を押さえるために、クローゼットで夫と愛人と思われる女性の様子を窺っていた私。 すると二人は私を殺す計画を立て始めたのだった。 ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

怪異・おもらししないと出られない部屋

紫藤百零
大衆娯楽
「怪異・おもらししないと出られない部屋」に閉じ込められた3人の少女。 ギャルのマリン、部活少女湊、知的眼鏡の凪沙。 こんな条件飲めるわけがない! だけど、これ以外に脱出方法は見つからなくて……。 強固なルールに支配された領域で、我慢比べが始まる。

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...