満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

ブレスレットに願いを。葉月side

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「これって...」
弥生サンタからの贈り物を開けてみると、そこにはブレスレットが入っていた。
【色々と一人で抱えこみすぎないように。メリークリスマス】
どんな宝石よりも輝いて見えて、嬉しさのあまり言葉を失っていた。
(どうしよう、物凄く嬉しい)
その日一日中、家のなかだけで大切につけておくことにした。
外に出るときはポケットに仕舞って、また部屋に入ったらすぐ身につけて...。そんなことをずっと繰り返していた。
《弥生、本当にありがとう。すごく気に入った!》
弥生も、私が渡した包みを開けて中身を確認してくれただろうか。
気になっても聞けずにいると、弥生からメッセージが届いた。
《私も開けたよ。...ありがとう。友だちとプレゼント交換することそれ自体が初めてで、本当にこれでいいのかとか沢山迷いながら決めたんだけど、喜んでもらえたのも嬉しい》
...弥生も初めてだったんだ。
パーティの準備の手際がいいから全く気づいていなかった。
『どうする?はづきちゃんもさそう?』
『いやだよ、なんでさそわなきゃいけないの?』
聞こえてくるのはいつもそんな声で、家でパーティーなんかしたこともなかった。
『サンタ?そんなもの存在するわけないでしょ!』
幼心のうちから、夢を見ることすら赦されなかった。
...今なら、夢を見ることは赦されるのだろうか。
誰にも縛られずに生きていけるようになるだろうか。
つい、そんなことを考えてしまう。
(弥生、どうしてるかな...)
《弥生、今夜もあの場所にいる?》
返事はなかなかかえってこない。
きっと予定があったのだろうと思っていると、家の鍵が開いたことに気づく。
カツサンドの作りかけを部屋に持ち帰って、できるだけ顔を合わせないようにする。
「葉月?いないの?」
今さら優しい口調で話しても無駄だ。
ずっとずっと、激しく言われ続けたのだから。
そのとき、弥生から返信がきた。
《今日、病院でしょ?遅くなるから危ないよ...》
そういえば、と思い出す。
(どうしよう、次の列車までに乗らないと...!)
家の扉の開閉音がして、今しかないと悟る。
《すっかり忘れてた...ありがとう!それじゃあ、今日はやめておくね》
《病院、気をつけて行ってきてね》
その文章には優しさが滲み出ていて、なんだか心がほろほろと温かくなっていくのを感じる。
(弥生...ありがとう)
私はすぐに列車に向かう。
光り輝くブレスレットを見ると、病院まで向かう足が少しだけ軽くなったような気がした。
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