62 / 150
本篇・1年目後期
ブレスレットに願いを。葉月side
しおりを挟む
「これって...」
弥生サンタからの贈り物を開けてみると、そこにはブレスレットが入っていた。
【色々と一人で抱えこみすぎないように。メリークリスマス】
どんな宝石よりも輝いて見えて、嬉しさのあまり言葉を失っていた。
(どうしよう、物凄く嬉しい)
その日一日中、家のなかだけで大切につけておくことにした。
外に出るときはポケットに仕舞って、また部屋に入ったらすぐ身につけて...。そんなことをずっと繰り返していた。
《弥生、本当にありがとう。すごく気に入った!》
弥生も、私が渡した包みを開けて中身を確認してくれただろうか。
気になっても聞けずにいると、弥生からメッセージが届いた。
《私も開けたよ。...ありがとう。友だちとプレゼント交換することそれ自体が初めてで、本当にこれでいいのかとか沢山迷いながら決めたんだけど、喜んでもらえたのも嬉しい》
...弥生も初めてだったんだ。
パーティの準備の手際がいいから全く気づいていなかった。
『どうする?はづきちゃんもさそう?』
『いやだよ、なんでさそわなきゃいけないの?』
聞こえてくるのはいつもそんな声で、家でパーティーなんかしたこともなかった。
『サンタ?そんなもの存在するわけないでしょ!』
幼心のうちから、夢を見ることすら赦されなかった。
...今なら、夢を見ることは赦されるのだろうか。
誰にも縛られずに生きていけるようになるだろうか。
つい、そんなことを考えてしまう。
(弥生、どうしてるかな...)
《弥生、今夜もあの場所にいる?》
返事はなかなかかえってこない。
きっと予定があったのだろうと思っていると、家の鍵が開いたことに気づく。
カツサンドの作りかけを部屋に持ち帰って、できるだけ顔を合わせないようにする。
「葉月?いないの?」
今さら優しい口調で話しても無駄だ。
ずっとずっと、激しく言われ続けたのだから。
そのとき、弥生から返信がきた。
《今日、病院でしょ?遅くなるから危ないよ...》
そういえば、と思い出す。
(どうしよう、次の列車までに乗らないと...!)
家の扉の開閉音がして、今しかないと悟る。
《すっかり忘れてた...ありがとう!それじゃあ、今日はやめておくね》
《病院、気をつけて行ってきてね》
その文章には優しさが滲み出ていて、なんだか心がほろほろと温かくなっていくのを感じる。
(弥生...ありがとう)
私はすぐに列車に向かう。
光り輝くブレスレットを見ると、病院まで向かう足が少しだけ軽くなったような気がした。
弥生サンタからの贈り物を開けてみると、そこにはブレスレットが入っていた。
【色々と一人で抱えこみすぎないように。メリークリスマス】
どんな宝石よりも輝いて見えて、嬉しさのあまり言葉を失っていた。
(どうしよう、物凄く嬉しい)
その日一日中、家のなかだけで大切につけておくことにした。
外に出るときはポケットに仕舞って、また部屋に入ったらすぐ身につけて...。そんなことをずっと繰り返していた。
《弥生、本当にありがとう。すごく気に入った!》
弥生も、私が渡した包みを開けて中身を確認してくれただろうか。
気になっても聞けずにいると、弥生からメッセージが届いた。
《私も開けたよ。...ありがとう。友だちとプレゼント交換することそれ自体が初めてで、本当にこれでいいのかとか沢山迷いながら決めたんだけど、喜んでもらえたのも嬉しい》
...弥生も初めてだったんだ。
パーティの準備の手際がいいから全く気づいていなかった。
『どうする?はづきちゃんもさそう?』
『いやだよ、なんでさそわなきゃいけないの?』
聞こえてくるのはいつもそんな声で、家でパーティーなんかしたこともなかった。
『サンタ?そんなもの存在するわけないでしょ!』
幼心のうちから、夢を見ることすら赦されなかった。
...今なら、夢を見ることは赦されるのだろうか。
誰にも縛られずに生きていけるようになるだろうか。
つい、そんなことを考えてしまう。
(弥生、どうしてるかな...)
《弥生、今夜もあの場所にいる?》
返事はなかなかかえってこない。
きっと予定があったのだろうと思っていると、家の鍵が開いたことに気づく。
カツサンドの作りかけを部屋に持ち帰って、できるだけ顔を合わせないようにする。
「葉月?いないの?」
今さら優しい口調で話しても無駄だ。
ずっとずっと、激しく言われ続けたのだから。
そのとき、弥生から返信がきた。
《今日、病院でしょ?遅くなるから危ないよ...》
そういえば、と思い出す。
(どうしよう、次の列車までに乗らないと...!)
家の扉の開閉音がして、今しかないと悟る。
《すっかり忘れてた...ありがとう!それじゃあ、今日はやめておくね》
《病院、気をつけて行ってきてね》
その文章には優しさが滲み出ていて、なんだか心がほろほろと温かくなっていくのを感じる。
(弥生...ありがとう)
私はすぐに列車に向かう。
光り輝くブレスレットを見ると、病院まで向かう足が少しだけ軽くなったような気がした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる