満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

贈り物に願いを。弥生side

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葉月から連絡がきて数時間後、私はショッピングモールにいた。
(葉月、ちゃんと返信見てくれてるといいけど...)
《葉月、体調がよくなったらまた家にこない?それから、今日洗濯物をしていたら葉月のものを見つけたよ。今度洗って渡すね》
「何かお探しですか?」
「すみません、人に贈るのにおすすめの部屋着ってありますか?」
店員さんに話しかけられた私は即答した。
もうすぐクリスマス。
だから、どうしても葉月に何かあげたくて...。
先日のお泊まり会のとき、葉月が忘れていった寝巻きがある。
(サイズを勝手に見ちゃったのは申し訳なかったけど、喜んでもらえるといいな...)
「おすすめはこちらです」
それは、可愛らしいワンピース形のものだった。
「これにします」
「ありがとうございます」
買い物なんて本当に久しぶりにきた。
いつもなら必要最低限のものをスーパーで揃えて終わり。
けれど、今日は少し違う。
(...ついでに自分の洋服も見ようかな)
ちょうど今着ているものが傷みはじめたところだ。
どれにするかを考えていると、近くを笑い声が通りかかる。
(あれは...)
私は何も見ないふりをして、そそくさと別の場所に移動した。
ショッピングモールは列車で二時間かかる場所にあるのだけれど、まさか元同級生がいるとは思っていなかった。
(受験生なのに、勉強しなくてもいいのかな...)
楽しく笑う姿に堪えられず、すぐにここを出ようと思った。
「...」
帰りの列車のなかで本を読んでいると、スマートフォンが点滅していることに気づく。
...葉月からだ。
《いいね、またやりたい。早く治さなきゃ...!》
《焦らなくても大丈夫だよ》
なかなか返信がこないということは、やっぱり体調が悪いんじゃないだろうか。
今からでも訪ねた方がいいんじゃないだろうか...そこまで考えて、ある可能性に行き着いた。
(もしかして...母親?)
いつも突然帰ってきては怒鳴り散らすのだと、葉月は哀しそうな目で言っていた。
分かりあえる日なんてこないのだと、そう言っていたのだ。
大丈夫なはずがない。
だけどもし、ここで私が行けば...最悪の結果に繋がってしまうかもしれない。
何もできない自分が嫌で、悔しくて仕方ない。
(とにかく今は、葉月に寄り添っていたい)
そんなことを思いつつ、流れていく景色を見るのも忘れて...何を話せば葉月を笑顔にできるのかをずっと考えていた。
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