53 / 150
本篇・1年目後期
贈り物に願いを。弥生side
しおりを挟む
葉月から連絡がきて数時間後、私はショッピングモールにいた。
(葉月、ちゃんと返信見てくれてるといいけど...)
《葉月、体調がよくなったらまた家にこない?それから、今日洗濯物をしていたら葉月のものを見つけたよ。今度洗って渡すね》
「何かお探しですか?」
「すみません、人に贈るのにおすすめの部屋着ってありますか?」
店員さんに話しかけられた私は即答した。
もうすぐクリスマス。
だから、どうしても葉月に何かあげたくて...。
先日のお泊まり会のとき、葉月が忘れていった寝巻きがある。
(サイズを勝手に見ちゃったのは申し訳なかったけど、喜んでもらえるといいな...)
「おすすめはこちらです」
それは、可愛らしいワンピース形のものだった。
「これにします」
「ありがとうございます」
買い物なんて本当に久しぶりにきた。
いつもなら必要最低限のものをスーパーで揃えて終わり。
けれど、今日は少し違う。
(...ついでに自分の洋服も見ようかな)
ちょうど今着ているものが傷みはじめたところだ。
どれにするかを考えていると、近くを笑い声が通りかかる。
(あれは...)
私は何も見ないふりをして、そそくさと別の場所に移動した。
ショッピングモールは列車で二時間かかる場所にあるのだけれど、まさか元同級生がいるとは思っていなかった。
(受験生なのに、勉強しなくてもいいのかな...)
楽しく笑う姿に堪えられず、すぐにここを出ようと思った。
「...」
帰りの列車のなかで本を読んでいると、スマートフォンが点滅していることに気づく。
...葉月からだ。
《いいね、またやりたい。早く治さなきゃ...!》
《焦らなくても大丈夫だよ》
なかなか返信がこないということは、やっぱり体調が悪いんじゃないだろうか。
今からでも訪ねた方がいいんじゃないだろうか...そこまで考えて、ある可能性に行き着いた。
(もしかして...母親?)
いつも突然帰ってきては怒鳴り散らすのだと、葉月は哀しそうな目で言っていた。
分かりあえる日なんてこないのだと、そう言っていたのだ。
大丈夫なはずがない。
だけどもし、ここで私が行けば...最悪の結果に繋がってしまうかもしれない。
何もできない自分が嫌で、悔しくて仕方ない。
(とにかく今は、葉月に寄り添っていたい)
そんなことを思いつつ、流れていく景色を見るのも忘れて...何を話せば葉月を笑顔にできるのかをずっと考えていた。
(葉月、ちゃんと返信見てくれてるといいけど...)
《葉月、体調がよくなったらまた家にこない?それから、今日洗濯物をしていたら葉月のものを見つけたよ。今度洗って渡すね》
「何かお探しですか?」
「すみません、人に贈るのにおすすめの部屋着ってありますか?」
店員さんに話しかけられた私は即答した。
もうすぐクリスマス。
だから、どうしても葉月に何かあげたくて...。
先日のお泊まり会のとき、葉月が忘れていった寝巻きがある。
(サイズを勝手に見ちゃったのは申し訳なかったけど、喜んでもらえるといいな...)
「おすすめはこちらです」
それは、可愛らしいワンピース形のものだった。
「これにします」
「ありがとうございます」
買い物なんて本当に久しぶりにきた。
いつもなら必要最低限のものをスーパーで揃えて終わり。
けれど、今日は少し違う。
(...ついでに自分の洋服も見ようかな)
ちょうど今着ているものが傷みはじめたところだ。
どれにするかを考えていると、近くを笑い声が通りかかる。
(あれは...)
私は何も見ないふりをして、そそくさと別の場所に移動した。
ショッピングモールは列車で二時間かかる場所にあるのだけれど、まさか元同級生がいるとは思っていなかった。
(受験生なのに、勉強しなくてもいいのかな...)
楽しく笑う姿に堪えられず、すぐにここを出ようと思った。
「...」
帰りの列車のなかで本を読んでいると、スマートフォンが点滅していることに気づく。
...葉月からだ。
《いいね、またやりたい。早く治さなきゃ...!》
《焦らなくても大丈夫だよ》
なかなか返信がこないということは、やっぱり体調が悪いんじゃないだろうか。
今からでも訪ねた方がいいんじゃないだろうか...そこまで考えて、ある可能性に行き着いた。
(もしかして...母親?)
いつも突然帰ってきては怒鳴り散らすのだと、葉月は哀しそうな目で言っていた。
分かりあえる日なんてこないのだと、そう言っていたのだ。
大丈夫なはずがない。
だけどもし、ここで私が行けば...最悪の結果に繋がってしまうかもしれない。
何もできない自分が嫌で、悔しくて仕方ない。
(とにかく今は、葉月に寄り添っていたい)
そんなことを思いつつ、流れていく景色を見るのも忘れて...何を話せば葉月を笑顔にできるのかをずっと考えていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
どうぞご勝手になさってくださいまし
志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。
辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。
やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。
アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。
風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。
しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。
ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。
ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。
ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。
果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか……
他サイトでも公開しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACより転載しています。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる