50 / 150
本篇・1年目後期
パソコンに願いを。葉月side
しおりを挟む
私がとっている授業のなかには、パソコンを使うものがある。男の先生で、ほがらかな性格の人だ。
「はい、じゃあ今回も基礎からやっていこうと思います」
こういうものなら苦手じゃない。
寧ろ、こういったものは楽しい。
けれど今は、弥生のことが気になってしかたがない。
(大丈夫かな...)
あんなに気にしている弥生をあまり見たことがない。
パソコンが苦手なのか、それとも...作文に納得がいっていないのか。
私には、どちらなのか分からなかった。
「弥生」
「葉月...それって、」
「うん。ノートパソコンで練習してたんだ」
その日の夜、私は一足先にきてタイピングの練習をしながら待っていた。
「授業で使ってるの?」
「打つのが遅いから練習。あとは、おえかきできる機能を見つけたから試してみてる」
「おえかき...私もやってみていい?」
首を楯にふって、弥生にパソコンを差し出す。
「弥生、こういうのは得意?」
「絵心ないから苦手。...でも、自分の意志で描けるのはすごく楽しい」
その言葉には少し重みがあって、それはまるで弥生が今まで歩いてきた道を示しているかのようだった。
「これって、そのままドラッグ?」
「うん。それから色はここで変えて...」
二人で試行錯誤しながら、少しずつ絵を完成させていく。
「...夜空。星があんまり上手く描けなかったけど...」
「どうしよう」
「葉月?」
「私、朝陽を描いちゃった...」
二人で代わりばんこに描いた結果、画面半分が朝で残り半分が夜というなんとも不思議なものができあがってしまった。
「すごいことになっちゃったね」
「そうだね」
二人で顔を見あわせ笑いあう。
カツサンドをほおばりながら、その後も少しだけおえかきを続けた。
(弥生、楽しそうで本当によかった)
「葉月、なんだか嬉しそうだけどどうしたの?」
「え、あ、ううん。...今日も楽しいなって思っただけだよ」
「そっか」
弥生はいつものように大福を分けてくれる。
私はカツサンドを渡しながら、大福を一口ほおばる。
「あれ?今日は中身がいちごじゃない...?」
「いちごが売り切れてて、ノーマルなやつにした」
「ノーマルなやつ...」
二人で話していると、夜も寂しくなくなる。
『お母さん、あのね...』
『忙しいから』
いつだってそうやって話をろくに聞いてもらえなかった。
けれど、弥生は違う。
(私の話なんて楽しくないはずなのに、いつも聞いてくれるのはどうしてなんだろう)
気になりつつも、なんとなく聞くのが怖い。
だから私はただ笑った。
...弥生に気づかれているとも知らずに。
「はい、じゃあ今回も基礎からやっていこうと思います」
こういうものなら苦手じゃない。
寧ろ、こういったものは楽しい。
けれど今は、弥生のことが気になってしかたがない。
(大丈夫かな...)
あんなに気にしている弥生をあまり見たことがない。
パソコンが苦手なのか、それとも...作文に納得がいっていないのか。
私には、どちらなのか分からなかった。
「弥生」
「葉月...それって、」
「うん。ノートパソコンで練習してたんだ」
その日の夜、私は一足先にきてタイピングの練習をしながら待っていた。
「授業で使ってるの?」
「打つのが遅いから練習。あとは、おえかきできる機能を見つけたから試してみてる」
「おえかき...私もやってみていい?」
首を楯にふって、弥生にパソコンを差し出す。
「弥生、こういうのは得意?」
「絵心ないから苦手。...でも、自分の意志で描けるのはすごく楽しい」
その言葉には少し重みがあって、それはまるで弥生が今まで歩いてきた道を示しているかのようだった。
「これって、そのままドラッグ?」
「うん。それから色はここで変えて...」
二人で試行錯誤しながら、少しずつ絵を完成させていく。
「...夜空。星があんまり上手く描けなかったけど...」
「どうしよう」
「葉月?」
「私、朝陽を描いちゃった...」
二人で代わりばんこに描いた結果、画面半分が朝で残り半分が夜というなんとも不思議なものができあがってしまった。
「すごいことになっちゃったね」
「そうだね」
二人で顔を見あわせ笑いあう。
カツサンドをほおばりながら、その後も少しだけおえかきを続けた。
(弥生、楽しそうで本当によかった)
「葉月、なんだか嬉しそうだけどどうしたの?」
「え、あ、ううん。...今日も楽しいなって思っただけだよ」
「そっか」
弥生はいつものように大福を分けてくれる。
私はカツサンドを渡しながら、大福を一口ほおばる。
「あれ?今日は中身がいちごじゃない...?」
「いちごが売り切れてて、ノーマルなやつにした」
「ノーマルなやつ...」
二人で話していると、夜も寂しくなくなる。
『お母さん、あのね...』
『忙しいから』
いつだってそうやって話をろくに聞いてもらえなかった。
けれど、弥生は違う。
(私の話なんて楽しくないはずなのに、いつも聞いてくれるのはどうしてなんだろう)
気になりつつも、なんとなく聞くのが怖い。
だから私はただ笑った。
...弥生に気づかれているとも知らずに。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる