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本篇・1年目後期
夕食に願いを。弥生side
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「楽しかった...!」
「それならよかった」
気づくともう夕陽が沈みかけていて、空はだんだん紺碧色に変わろうとしていた。
「夕食、これを作りたいと思います!」
葉月が出した材料は高級品が多くて、私はそこにただただ驚愕してしまった。
(見たことないくらい大きいステーキ...。私はスープを作ろうかな)
「葉月、私ポタージュ作るね」
「それじゃあ私はメイン担当で」
それだけでは寂しいから、私は冷蔵庫に残っていた野菜を切り分ける。
付け合わせにできるように、できるだけ食べやすいサイズに切る。
勿論、ただ切るだけでは相性が悪いので温野菜風にするつもりだ。
「弥生、切るの早い...」
「そうかな?ただなれてるだけだと思うよ。...一時期野菜スティックサラダを作るのにはまってたからかもしれないけど」
「自分で作ったの!?ドレッシングも?」
そんな話をしながら、少しずつテーブルの上に完成した料理が並べられていく。
...二人分の料理がテーブルに並ぶのは、初めてかもしれない。
いつも独りで食べていて、時々食事を抜いていた。
(懐かしいことを思い出しちゃったな)
「弥生?」
「ごめん、なんでもない。もうすぐ冷やし終わるよ」
「冷製ポタージュ!?」
葉月の反応がいちいち可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
葉月はてきぱきと料理をこなし、もう全ての工程を終えていた。
(よし、そろそろかな)
「はい、どうぞ」
「美味しそう...!いただきます」
「いただきます」
二人で一斉に食べはじめるのだけれど、無言で食べ続ける。
(美味しすぎて何もでてこない...)
「美味しすぎてつい無言になっちゃった」
「...うん。私も」
二人でこのあとどうするかを話しつつ、何を楽しみにするかも決めていく。
(さて、お風呂を沸かさないと)
「ちょっと待っててね」
「うん」
入浴の準備もついでに整えて戻ると、葉月が食器を洗ってくれているのが目にはいる。
「ありがとう。後は私がやるからお風呂先入って?」
「ありがとう。それじゃあお邪魔します」
葉月の後ろ姿を見送りつつ、自分の腕に目をやる。
そこには一生消えない傷があって、それを葉月には見せたくなかった。
きっと心配して、不安に思ってしまうから。
(さて。片づけたら部屋をもっと過ごしやすくしておこうかな)
いつもとは違う過ごし方。
これはこれで楽しいと思ってしまう自分がいる。
葉月も楽しいと思ってくれているだろうか。
そう考えると、少しだけ心配になってきた。
「それならよかった」
気づくともう夕陽が沈みかけていて、空はだんだん紺碧色に変わろうとしていた。
「夕食、これを作りたいと思います!」
葉月が出した材料は高級品が多くて、私はそこにただただ驚愕してしまった。
(見たことないくらい大きいステーキ...。私はスープを作ろうかな)
「葉月、私ポタージュ作るね」
「それじゃあ私はメイン担当で」
それだけでは寂しいから、私は冷蔵庫に残っていた野菜を切り分ける。
付け合わせにできるように、できるだけ食べやすいサイズに切る。
勿論、ただ切るだけでは相性が悪いので温野菜風にするつもりだ。
「弥生、切るの早い...」
「そうかな?ただなれてるだけだと思うよ。...一時期野菜スティックサラダを作るのにはまってたからかもしれないけど」
「自分で作ったの!?ドレッシングも?」
そんな話をしながら、少しずつテーブルの上に完成した料理が並べられていく。
...二人分の料理がテーブルに並ぶのは、初めてかもしれない。
いつも独りで食べていて、時々食事を抜いていた。
(懐かしいことを思い出しちゃったな)
「弥生?」
「ごめん、なんでもない。もうすぐ冷やし終わるよ」
「冷製ポタージュ!?」
葉月の反応がいちいち可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
葉月はてきぱきと料理をこなし、もう全ての工程を終えていた。
(よし、そろそろかな)
「はい、どうぞ」
「美味しそう...!いただきます」
「いただきます」
二人で一斉に食べはじめるのだけれど、無言で食べ続ける。
(美味しすぎて何もでてこない...)
「美味しすぎてつい無言になっちゃった」
「...うん。私も」
二人でこのあとどうするかを話しつつ、何を楽しみにするかも決めていく。
(さて、お風呂を沸かさないと)
「ちょっと待っててね」
「うん」
入浴の準備もついでに整えて戻ると、葉月が食器を洗ってくれているのが目にはいる。
「ありがとう。後は私がやるからお風呂先入って?」
「ありがとう。それじゃあお邪魔します」
葉月の後ろ姿を見送りつつ、自分の腕に目をやる。
そこには一生消えない傷があって、それを葉月には見せたくなかった。
きっと心配して、不安に思ってしまうから。
(さて。片づけたら部屋をもっと過ごしやすくしておこうかな)
いつもとは違う過ごし方。
これはこれで楽しいと思ってしまう自分がいる。
葉月も楽しいと思ってくれているだろうか。
そう考えると、少しだけ心配になってきた。
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