満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

ゲームに願いを。葉月side

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「色々持ってきたよ」
「色々...?」
私はボードゲームやトランプ、花札を取り出す。
「成程、これを持ってきてたからあのすごい量の荷物...」
弥生は笑っていて、その中から花札をとった。
「こいこいのルール、知ってる?」
「え、うん、多分...」
「それじゃあ、勝負」
「お、お手柔らかに...」
花札を配りながら、弥生に淹れてもらったお茶を一口飲んでみる。
「すごく美味しい...!これってすごい茶葉を使ったものなの?」
「今葉月が飲んだのは普通の煎茶。私のは普通のほうじ茶だよ」
「そうなんだ...あ、親はどうしようか」
「葉月は先攻と後攻、どっちがいい?」
私は後攻でゲームをはじめる。
淡々と札をとっていくと、弥生が聞いてきた。
「葉月は普段、献立とかどうやって決めてるの?」
「そうだな...食べたいもの、とか」
「栄養バランス考えてる?...はい、あがり。」
松に鶴が描かれた札を取り、弥生があがりを宣言する。
私はいつの間にか進んでいたゲームを見てみる。
「...四光!?」
「気づいてなかった?ちゃんとできた役を言いながらやってたんだけど...」
「よく見てなかった...」
葉月らしいなんて言いながら、弥生は次のゲームを用意してくれた。
「私、一人でしかやったことないんだ。...だから、次はこれを一緒にやってほしいな」
「テレビゲームなんて初めてかも」
「そうなの?」
頷きながら、嫌なことを思い出す。
『そんなもの買うわけないだろう!勉強しなさい!』
『葉月ちゃん、これも知らないの?なんで?やったことぐらいあるでしょ?』
あの人たちを困らせないようにしてきたつもりだったのに、みんなと一緒に遊びたかっただけなのに...それさえも聞き入れてもらえなかった。
(っ、いけない。暗い気分になってる場合じゃない)
「やり方教えてください...!」
「...うん、いいよ」
コントローラーを持ったのは、おもちゃ屋さんでこっそりお店の貸し出し機で遊ばせてもらったのが最後だろうか。
「それじゃあ、これは二人で協力してやっていこうか」
「うん!」
拙い私の動きをサポートするように弥生は素早く動いてくれた。
「葉月上手いね」
「そうかな?」
「私が初めてのときはもっと苦戦したよ」
そうして楽しく午後のひとときは過ぎていく。
やったことがないものを友人と楽しみながらできる...そのことが堪らなく嬉しくて、つい夢中になってしまうのだった。
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