満天の星空に願いを。

黒蝶

文字の大きさ
上 下
43 / 150
本篇・1年目後期

診断に願いを。弥生side

しおりを挟む
「それじゃあ、また後で」
「うん!」
葉月のるんるんな後ろ姿を見送っていると、背後から気配がした。
(誰...?)
後ろから接近されると、つい身構えてしまう。
「ごめんごめん。次教室やって伝えてなかったなって思って...」
勢いよくふりかえると、そこには教頭先生が立っていて...私は握りしめた拳から力を抜いた。
「教室って、一番最初の授業で使ったところですか?」
「そうそう。それからパソコン室へ移動するから」
パソコン室...?一体何をするのだろうか。
その答えは、すぐに出ることになった。
「はい、それじゃあ今日は性格診断のやつやってくぞ」
私は一人、後ろの方の席につく。
パソコンをするのは久しぶりで、なんだか少しわくわくした。
(この頁か...)
質問には二択から選択していく方式で、あっという間に終わってしまった。
「秘書?すごいやん」
「すごいんでしょうか...」
まわってくる先生とそんな話をして、もう一つの指定された診断をやっていく。
「『仲介者』...?」
少しずつ読みすすめてみる。
『残念ながら全人口の4%しかいない為、理解されていないと感じることが多いでしょう』
...自分はそんなものだったのか。
けれど、そう思うと少し自分を納得させることができた。
仕方がないのだ。
昔から、親にも分かってもらえなかった。
友人とは何かを考え続けてきた。
今は葉月がいるけど、それまでは何かが噛み合っていないような気がしていたのだ。
(葉月とはどうしてか話が合ったりするんだよね...)
その続きに、私にとっては嬉しいことが書かれていた。
『俳優や作家になっていてもおかしくないでしょう』
...つまり、今の夢は間違っていない?
頑張れば叶えられるのかもしれない...それだけで充分だった。
『あんたができるはずないでしょう!』
親には無惨に引き裂かれて、
『うわ、何あれ』
前にいた場所では勝手に読まれて笑いのネタにされていた原稿。
...あれは間違いではなかったことを祈りたい。
「お、今度もまたすごそうなやつだね」
「そうでしょうか...?」
二つの診断結果を印刷させてもらって、それらを持ち帰る。
(先生にも印刷したものがいっちゃってるんだよね...)
そう思うと、少しだけ複雑な気分になる。
けれど、これからの時間楽しいことが待っている。
「葉月、おまたせ」
「弥生...!おかえりなさい!」
「ん?」
「え、あ、その...お疲れ様」
持ってきたランプ型のライトに照らし出された表情は、耳まで真っ赤になりながら笑顔が咲いているようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...