満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

折り紙に願いを。弥生side

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「弥生」
「葉月...」
「どうかした?なんだかぼうっとしてるみたいに見えたけど...」
葉月はやっぱり鋭い。
けれど、何かがあったわけではない。
「何もないよ...?」
...強いて言うなら、少し目眩がするだけだ。
この程度のことならいつもあった。
誰に言っても意味がないから言うのをやめた。
ただそれだけなのだ。
「それより、ほら。授業はじまっちゃうよ」
「あ、本当だ!それじゃあ弥生、また後で」
「うん。...また後で」
私は葉月とは別の教室へと向かう。
「はい、それでは発達と保育、はじめていこうと思います。全員揃ってるかな?」
発達と保育...はじめは何をする授業か分からなかったけれど、どうやら科目名どおりらしい。
子どもの発達と保育...子どもがどうやって成長していくのか。
どんなおもちゃを使うのか。
どんなおやつを作れば食べられるのか。
...今日はおもちゃの実習だった。
「それでは、折り紙で二作品以上作ってください。それが終わったら今日はレポートとか他の教科のでもしてていいからね」
他の人たちは大喜びだった。
それはそうだ。
一日に何教科もやっている人たちからすると、今の発言は神に近い。
「...」
私はただ一心不乱に折った。
『何それ、だっさ!』
『今時あんなもんやるとかジジイかよ!』
過去の言葉を振り払いながら、ひたすら作りたいものを折る。
(どうしようかな...)
箱、風船、蛙、独楽...それらを画用紙に貼りつけながら、説明書きをくわえていく。
そのときあるものを思いつく。
(クリスマス、か)
リースなら折ることができる。
だから...残り時間を見ながら、それを折っていくことにした。
時間をかければ丁寧さが出る。
けれど、今回は急ぎで折るしかなさそうだ。
「ええ、すごい...!」
「...!」
先生が後ろまできていることに全く気づいていなかった。
それだけ集中していたのか、それとも...。
はじめは他の人のことだろうと思っていた。
けれど、先生は見ていたのだ。
...生徒たちがどんなものを折るのかを。
「え、やばっ」
「あれってどうやって折ってるんだろう...」
周りからはそんな声が聞こえる。
折り紙を折っても誰からも馬鹿にされない...そんな不思議な時間を過ごした。
「ね、さっきのすごかったね!」
先輩のそんな一言に、私はただ頭をさげた。
いい人たちだなと思いながら、ふらつく足で教室を目指す。
...嫌な体育も、さっきのことを思い出しながらならなんとか乗り越えられそうだと思った。
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