満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

ハンカチに願いを。葉月side

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「はあ...」
この日初めて学校を休んだ。
この怠さといい、頭痛の状態といい...授業を受けられる状態ではないから。
(行くだけになるくらいなら、今日はゆっくりしよう...)
《今日は学校に行けそうにありません。ごめんね》
たしかそんな文面にしたような気がするけれど、もうはっきりとは覚えていない。
(駄目だ、怠い。もう寝てしまおう...)
そう思っているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。
目を開けるともうお昼過ぎになっていて、私は冷蔵庫の中を物色した。
(卵、野菜、ご飯...これくらいあれば何か作れそう)
「...いただきます」
自分の為だけの昼食。...こんなの久しぶりだ。
そうこうしているうちに、鈍い光が見えた。
(...ん?メール?)
それは、担任の先生からのものだった。
《体調は大丈夫ですか?もしよくなったら予備日に授業を受けてください。そうすれば遅れとかなくなりますから》
まさかこんな内容のメールがきているとは思わなかった。
予備日というのは日曜日と全く同じ時間割りで授業をやっている日で...たしか水曜日だったはずだ。
(遅れの心配なんてされたこともなかったな)
『葉月ちゃん、こんなことも分からないの?』
『なんでできてないの?』
『みんな、葉月ちゃんは休んでたでしょ?』
その後先生に質問に行くと、面倒くさいという表情をされて...最後の方は諦めていた。
『亀は兎に追いつけないのだから』と、諦めることにしていたのだ。
(学校、行きたかったな...)
私はそんな自分自身に驚いていた。
今まで学校に行きたいなんて思ったことはなかった。
毎日毎日、明日なんかこなければいいと思っていた。
「...弥生」
夕方、ただその名前を天井に向かって呟いて再びスマートフォンを手に取る。
そこには弥生から心配の連絡が入っていた。
(やっぱり弥生は優しいな...)
着替えながら、返事を打ちこもうとする。
《今はもうそんなに酷くないから大ーー》
「...っ」
大丈夫だよ、と入れるつもりが途中で送信ボタンを押してしまったようだったけれど、もう取り返しがつかなかった。
(駄目だ、思考が働いていない...)
目を閉じて意識を手離す。
本当は行きたかったけれど、それさえも無理そうだ。
突然の強い頭痛に不安を覚えながらも、先日弥生に選んでもらったハンカチを握りしめながら、ただ弥生のことを考えていた。
(弥生...行けなくてごめんなさい。ちゃんと行って、今日の話を聞きたかった...)
...私も、今日感じた寂しさを話したかったのに。
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