満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

お弁当に願いを。弥生side

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葉月の悩みを受けて、私ができることを考えた。
(本当は食べたくないって思ってるかもしれないけど、何もないよりはいいよね...)
スクーリングの日、私はいつもより早起きしてお弁当を作る。
眠気より、友人をなんとかしたいという思いの方が上だった。
「砂糖...」
慎重にくわえて、なんとかだし巻き玉子を完成させることができた。
(この調子で他のものも作ってみよう...)
そして、学校のお昼休み。
私は一人ちんまりとしていた葉月に声をかけた。
「葉月、これ...作ってみたからよかったら食べて?」
「ありがとう...!」
こうして、しばらくは私がお弁当を作って持っていくことにした。
不味かったらどうしようとも思ったけれど、友人の為に何かしたかった。
何もしない自分は嫌だから、せめて相手が迷惑だと思わない程度に何かしたい。
(大丈夫かな...)
「どう、かな...?」
「すごく美味しい!本当にありがとう」
「自分のを作るついでだから気にしないで」
「...うん」
この表情は、納得していないときのものだ。
葉月のことはだいぶ分かるようになってきたものの、当の本人は気づいていない。
(どうしよう、なんだか可愛いなって考えちゃった)
「弥生?」
「...人にご飯を作るのって初めてに近いから、美味しそうに食べてもらえて嬉しかったんだ」
半分は本当だ。
いつだって、否定されてきたから。
『あなたには無理でしょ、やめておきなさい!』
『あんたみたいなのにできるわけない』
...また嫌なことを思い出してしまった。
葉月には分からないように振る舞い、なんとか誤魔化した。
カツサンドを滅茶苦茶にされたことも思い出したけれど、やっぱり葉月には言えなかった。
「ごちそうさまでした。...お弁当箱は、洗ってからかえすね」
「そんな...私がやるから別にいいのに」
「私ばっかりやってもらってるだけだと、なんだか落ち着かないから...ね?」
こんなふうに言われてしまうと、断ることもできない。
葉月の気持ちを蔑ろにすることなんてできるはずもない。
(...次はもっと上手く作れますように)
そんなことを祈りながら、私は自分が食べた分を片づける。
来週はいよいよ校外研修...正直、不安でしかたがない。
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