満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

節約に願いを。葉月side

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「それでは、全校集会を行います」
私は弥生の隣に座り、じっと話を聞く。
「まずは校外研修ですが、今年はここに行くことになりました」
校外研修とはいえ、きちんと自由時間も用意されているらしい。
(楽しみだな...)
こういった行事には、特別行事出席点が沢山入るのでできるだけ参加したい。
...泊まりがけとなると厳しいけれど、日帰りならきっと大丈夫だ。
「弥生、」
「私は参加する。...スポーツ大会出なかったからこれに出ないと点数が足りないんだよね」
特別行事出席点が不足すると、たとえきちんと評価が全て五でも進級できないというルールが存在する為、いずれかの行事には出席しておかないと非常にまずいのだ。
弥生は苦笑しながら、葉月は?と聞いてくれる。
「行くよ。...一緒のバスに乗ろう」
「住んでる場所似たようなところだし、一緒に乗っていけると思う」
配られた用紙の参加するに丸をつけながら、なんだかわくわくしていた。
入学式や卒業式が一点しか入らない分、スポーツ大会や校外研修は六点入る為、ここを落とすわけにはいかなかった。
(どうしよう、今から楽しみになってきちゃった...)
弥生もなんだか楽しそうで、二人揃って笑みを零した。
...ただ、それは生活費から捻出しなければならないという小さな問題を抱えていた。
「葉月、お待たせ」
「弥生...」
「大丈夫?」
弥生は本当に人の変化に敏感だ。
隠しても仕方のないことなので、私は正直に話した。
しばらくカツサンドを持ってこられそうにないこと、いつも余るくらいのお金をもう少し節約しなければならないこと...弥生は黙って聞いてくれた。
「...成程。それは大変」
「ごめんね」
「どうして謝るの?あんなに美味しいものをタダで食べさせてもらっておいて、文句を言えるような立場じゃないよ」
それに、と弥生が続ける。
「...それに、それなら今度は私が作ってくればいい。でしょ?」
「弥生...」
「葉月みたいに上手くできるわけじゃないけど、そこそこならちゃんと作れるはずだから」
来週のお弁当も作ってくると目の前の友人は言う。
その姿がなんだか頼もしくて、寄りかかりたくなってしまう。
「変な遠慮とか必要ないから。...研修、楽しみだね」
「うん!本当にありがとう」
弥生は少し恥ずかしそうに笑っていたけれど、やっぱりその笑顔は眩しく見えた。
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