満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

レポートに願いを。葉月side

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「弥生」
「どうかした?」
「...少しだけ質問してもいい?」
弥生は頷くと、自分が座っている場所の隣の席をたん、と指でたたいた。
「座ってやった方がいいでしょ?」
「ありがとう...。ここの問題なんだけど、この答えがどうしても出なくて...」
「ああ、これならこの公式を使えば出てくるよ。ここにこれを代入して...」
弥生は丁寧に説明してくれた。
そういうやり方もあるのだと、ただじっと見ていることしかできなかった。
「...ごめん、ざっくりとしか説明できなかったけど、大丈夫そう?」
「うん、すごく分かりやすかったよ。ありがとう」
弥生がはっとした様子で時計を指さす。
「授業、行かないと間に合わなくなるんじゃない?」
「...!本当だ、いってくるね!」
「いってらっしゃい」
少し軽くなった足で授業に向かう。
弥生のお陰でなんとなく解けるような気がした...のだけれど。
(あれ...?これ、ここに入れても答え出てこない...)
応用問題になった瞬間、また分からなくなってしまった。
(ここに代入して...あれ?)
自分でやってみたけれど、答えが合わない。
「これで授業を終わります」
結局そのままチャイムが鳴り、分からないままで終わってしまった。
答えを写してみたけれど、なんだかぴんとこない。
「弥生...」
「葉月、どうしたの?」
応用問題について聞いてみると、弥生は成程と考えはじめる。
「これならこことここの公式を変形させた方がいいかもしれない」
「変形?」
「...うん。ここはこうしたらこうなって、それから...」
やっぱり弥生の説明は分かりやすくて、惚れこむように聞き入ってしまっていた。
「どうかな?これで、」
「すごいね、弥生は...すごく分かりやすかった」
「...それならよかった。数学は公式が命だから、まとめノートとか作ってみるといいかも」
「そっか...やってみるね!」
「また分からないことがあったら言って」
「うん。ごめんね...」
「いいんだよ。...久しぶりに数学ができて楽しかったし」
弥生が少しだけ楽しそうに笑っているような気がする。
それを見て、公式ノート作りを頑張ってみようと思ったのだった。
(それにしても、やっぱり数学は苦手だな...)
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