満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

マスコットに願いを。弥生side

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「葉月、おはよう」
「おはよう...」
欠伸を噛み殺して、席に荷物を置いた葉月がゆっくり近づいてくる。
「なんだかすごく眠い...」
「今日は薬飲んできた?」
葉月は首を横にふる。
体調が悪い訳ではないといいと思いながら顔色を見てみるけれど、我慢している様子はない。
「弥生?」
「ごめん、なんでもない」
朝学活が終わり、私は一時間だけ自習した後国語、葉月はやはりこれからすぐ授業というスケジュールだった。
「葉月、体調が悪くなったらすぐ言って?」
「ありがとう...」
照れくさそうに笑って、そのまま別教室へ行く後ろ姿を見送る。
レポートはもう既に終わっていて、何をしようかとかなり悩んだ。
(やっぱり本読もうかな...)
もふもふのマスコットをふにふにしながら本を探していると、誰かがやってきた。
...生活指導の先生だ。
「おはよう」
「お、おはようございます...」
なんだか緊張してしまい、ガチガチになってしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「す、すみません...」
「学校にはなれてきた?」
「はい、おかげさまでなんとか」
「それならよかった」
生活指導といえば怖いイメージがあったけれど、この先生は柔らかい。
「あ、まずい。教頭先生に呼ばれてたの忘れてた」
そう言って苦笑いしながら、すっと立ちあがる。
そのまま遠ざかっていく背中を見ながら、私はまたマスコットをふにふにとするのだった。
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、葉月が戻ってくるのを待つ。
「お疲れ」
「お疲れ様...」
なんだか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
(聞いてみた方がいいかな...)
歩きながらじっと葉月を見つめる。
「弥生?」
「葉月、もしかして、」
「葉月ちゃん!」
...彼女たちは、どうやら私のことが気にいらないらしい。
何故毎回葉月と話しているときに、決まって間に入ってくるのだろう。
葉月はぐいぐい押されるような形であっという間に遠ざかっていく。
(...まあたしかに、私は可愛くないけど、だけどどうしてあんな態度をとられるんだろう)
葉月の横顔が楽しそうじゃなかったことも気になる。
嫌なことでも嫌と言えなくて困っているんじゃないか、そう仮定することができた。
こればかりは単刀直入に聞くしかない。
「...ね」
思わずマスコットに話しかけてしまう。
なんだか寂しいと感じてしまい、その心に押し潰されてしまいそうだった。
この後の授業をどう乗り切ったのか、よく覚えていない。
(...悪意なき敵意、か)
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