23 / 150
本篇・1年目後期
マスコットに願いを。弥生side
しおりを挟む
「葉月、おはよう」
「おはよう...」
欠伸を噛み殺して、席に荷物を置いた葉月がゆっくり近づいてくる。
「なんだかすごく眠い...」
「今日は薬飲んできた?」
葉月は首を横にふる。
体調が悪い訳ではないといいと思いながら顔色を見てみるけれど、我慢している様子はない。
「弥生?」
「ごめん、なんでもない」
朝学活が終わり、私は一時間だけ自習した後国語、葉月はやはりこれからすぐ授業というスケジュールだった。
「葉月、体調が悪くなったらすぐ言って?」
「ありがとう...」
照れくさそうに笑って、そのまま別教室へ行く後ろ姿を見送る。
レポートはもう既に終わっていて、何をしようかとかなり悩んだ。
(やっぱり本読もうかな...)
もふもふのマスコットをふにふにしながら本を探していると、誰かがやってきた。
...生活指導の先生だ。
「おはよう」
「お、おはようございます...」
なんだか緊張してしまい、ガチガチになってしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「す、すみません...」
「学校にはなれてきた?」
「はい、おかげさまでなんとか」
「それならよかった」
生活指導といえば怖いイメージがあったけれど、この先生は柔らかい。
「あ、まずい。教頭先生に呼ばれてたの忘れてた」
そう言って苦笑いしながら、すっと立ちあがる。
そのまま遠ざかっていく背中を見ながら、私はまたマスコットをふにふにとするのだった。
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、葉月が戻ってくるのを待つ。
「お疲れ」
「お疲れ様...」
なんだか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
(聞いてみた方がいいかな...)
歩きながらじっと葉月を見つめる。
「弥生?」
「葉月、もしかして、」
「葉月ちゃん!」
...彼女たちは、どうやら私のことが気にいらないらしい。
何故毎回葉月と話しているときに、決まって間に入ってくるのだろう。
葉月はぐいぐい押されるような形であっという間に遠ざかっていく。
(...まあたしかに、私は可愛くないけど、だけどどうしてあんな態度をとられるんだろう)
葉月の横顔が楽しそうじゃなかったことも気になる。
嫌なことでも嫌と言えなくて困っているんじゃないか、そう仮定することができた。
こればかりは単刀直入に聞くしかない。
「...ね」
思わずマスコットに話しかけてしまう。
なんだか寂しいと感じてしまい、その心に押し潰されてしまいそうだった。
この後の授業をどう乗り切ったのか、よく覚えていない。
(...悪意なき敵意、か)
「おはよう...」
欠伸を噛み殺して、席に荷物を置いた葉月がゆっくり近づいてくる。
「なんだかすごく眠い...」
「今日は薬飲んできた?」
葉月は首を横にふる。
体調が悪い訳ではないといいと思いながら顔色を見てみるけれど、我慢している様子はない。
「弥生?」
「ごめん、なんでもない」
朝学活が終わり、私は一時間だけ自習した後国語、葉月はやはりこれからすぐ授業というスケジュールだった。
「葉月、体調が悪くなったらすぐ言って?」
「ありがとう...」
照れくさそうに笑って、そのまま別教室へ行く後ろ姿を見送る。
レポートはもう既に終わっていて、何をしようかとかなり悩んだ。
(やっぱり本読もうかな...)
もふもふのマスコットをふにふにしながら本を探していると、誰かがやってきた。
...生活指導の先生だ。
「おはよう」
「お、おはようございます...」
なんだか緊張してしまい、ガチガチになってしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「す、すみません...」
「学校にはなれてきた?」
「はい、おかげさまでなんとか」
「それならよかった」
生活指導といえば怖いイメージがあったけれど、この先生は柔らかい。
「あ、まずい。教頭先生に呼ばれてたの忘れてた」
そう言って苦笑いしながら、すっと立ちあがる。
そのまま遠ざかっていく背中を見ながら、私はまたマスコットをふにふにとするのだった。
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、葉月が戻ってくるのを待つ。
「お疲れ」
「お疲れ様...」
なんだか疲れているように見えるのは気のせいだろうか。
(聞いてみた方がいいかな...)
歩きながらじっと葉月を見つめる。
「弥生?」
「葉月、もしかして、」
「葉月ちゃん!」
...彼女たちは、どうやら私のことが気にいらないらしい。
何故毎回葉月と話しているときに、決まって間に入ってくるのだろう。
葉月はぐいぐい押されるような形であっという間に遠ざかっていく。
(...まあたしかに、私は可愛くないけど、だけどどうしてあんな態度をとられるんだろう)
葉月の横顔が楽しそうじゃなかったことも気になる。
嫌なことでも嫌と言えなくて困っているんじゃないか、そう仮定することができた。
こればかりは単刀直入に聞くしかない。
「...ね」
思わずマスコットに話しかけてしまう。
なんだか寂しいと感じてしまい、その心に押し潰されてしまいそうだった。
この後の授業をどう乗り切ったのか、よく覚えていない。
(...悪意なき敵意、か)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる