満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

友人に願いを。葉月side

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《今日はごめんね》
家で一人、メールを打つ。
返事は思っていた以上にすぐかえってきた。
《気にしないで。それより体調はどんな感じ?》
《もう大丈夫そう。明日会える?》
《流石に明後日にしよう。病み上がりは危ないから》
こんなふうに人から心配されたのはいつ以来だろうか。
《分かった。それじゃあ明後日》
(明後日ははりきって作っていこう)
その日、私は早く着きすぎてしまっていた。
楽しみすぎて、夕方からもう木の下でぼうっとしていた。
「...っ!」
瞬間、頭痛がおこる。
それはやがて耐えられない程のものになり、私はそのまま目を閉じた。
(少しだけなら、大丈夫だよね...)
弥生がくるまでになんとかすればいい。
考えが甘かったと、後に後悔した。
「ん...」
「あ、起きた?」
頭の上から弥生の声がして、どういう状況になっているのか整理する。
(たしか久しぶりに外に出て、頭が痛くなって、それで...)
それで、眠ってしまったようだった。
「葉月」
「...もしかして私、」
「うん。なんだか痛そうだったけど大丈夫?」
「ごめんなさい...」
ぐっすり眠ってしまって本当に申し訳なく思った。
「いいよ。それよりまた体調悪そうだけど、帰らなくていいの?」
「あそこには戻りたくない...」
「そっか。それと、そのバスケットどうしたの?」
カツサンドや卵焼き、サラダにベーコン...ピクニックができてしまうのではないかというほどの量を作って持ってきたのだ。
「それは、えっと...今朝から作ったお礼」
「お礼って...量多いよ。けどありがとう」
弥生は笑いながらそう言ってくれた。
それに、とにかく戻りたくないことを深く聞かないでくれた。
その優しさに感謝しつつ、私は風呂敷を広げ終えた後そのまま両手を合わせた。
「いただきます」
「い、いただきます」
二人で食べるご飯は美味しくて、やっぱり誰かと食べるのは楽しいと感じた。
(体調のこと、やっぱり弥生には話しておこうかな...)
「葉月...?」
「弥生、私ね」
そのとき、ざあ、と風がふいた。
「ごめん、今ので全然聞こえなかった...」
「私、酷い頭痛持ちなの」
弥生はぽかんとした様子だったけれど、何かに納得したような表情をしていた。
「成程。だから薬飲んでるんだね」
「気づいてたの...?」
「うん。だけどよかった、本当は死んでしまうような病気を隠しているんじゃないかって思ってたから...」
体調悪くなったらすぐ言って、そんな言葉をかけてくれた。
「弥生」
「ん?」
「ありがとう」
「このくらい当然だよ」
弥生に嫌いにならないでほしい、心からそう願った。
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