満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

薬に願いを。葉月side

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「弥生」
「葉月...早かったね」
私はいつもどおりに作ってきたカツサンドを差し出す。
「ごめん、いつも大変じゃない?」
「このくらいなら全然平気だよ」
二人でいつものように食べていると、少しだけ頭痛がしたような気がする。
(気圧のせいかな...)
「葉月...?もしかして具合悪い?」
「そんなことないよ」
弥生は鋭いし、人のことをよく見ているから...ちゃんと誤魔化せた気がしない。
大丈夫だと言っても、弥生は心配そうだった。
「...ねえ、葉月。一つ聞いてもいい?」
「うん、どうぞ」
「葉月には、将来の夢ってある?」
将来の夢...今がせいいっぱいで考えたこともなかった。
「そうだな...調理関係の仕事に就けるといいなって思ってるけど、確定じゃないかな」
「そっか...」
「弥生は?」
その場の空気が凍ったような気がして、どうしたらいいのか分からなくなった。
(聞いてはいけなかったのかもしれない...)
「ごめん。言いたくなかったら、」
「...笑わない?」
「うん、絶対笑わない」
「私は...小説家になりたい。いつかちゃんと本を出して、色んな人に何か一つ感情を持ってほしいんだ」
学校を辞めるという決断をしてここまできている弥生は、やっぱり眩しくて。
その決意はきっと固いのだろうと思った。
「弥生ならきっとできるよ」
「葉月もね」
こういうのを友情と呼ぶのだろうか。
(なんだかくすぐったいな...)
弥生としばらく話して帰路につく。
「...っ」
足に力が入らなくなりそうで、私は急いで家に戻った。
「...もう少し持つと思ったのにな」
錠剤と水を口に放りこむ。
私は幼い頃から酷い偏頭痛に襲われてきた。
『葉月ちゃん、まだ仕事が終わりそうにないの。ごめんね』
母親からはいつもそう言われ、
『葉月ちゃんまたサボってる!』
周囲からはそうして理解されず、
『葉月、これ以上お父さんを困らせないでくれ』
...父親は私に興味すらないようだった。
熱が出る程酷いときも、自分独りでなんとかしてきた。
(弥生と一緒にいる間だけは、どうか治まっててほしい...)
いつもそう願っているけれど、いつまで持つか分からない。
サボっていると言われ続けた結果、私は学校へ行くのが怖くなり、最後は行くのをやめてしまった。
「...もう諦めたくない」
弥生には話した方がいいのだろうか。
けれどもし、他の人たちと同じ反応をされたら?
この日は結局ずっと弥生に話すかどうか考えてしまい、あまり眠ることができなかった。
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