バッドエンド

黒蝶

文字の大きさ
上 下
20 / 34

19頁

しおりを挟む
「おまえが知ってるみこはどんな奴だ」
「えっと……私と、私のお世話をする人」
「それ以外にもみこがいる」
「なにそれ、どういうこと?」
意味が分からない。
私以外にもみこがいる?
穂高は黒板に書いて説明してくれた。
「災の子と呼ばれ、忌み嫌われる『御子』と、その世話係を務める『巫』だ。
御子は村から隔離された場所で暮らしていて、巫は現在不在の状態になっている」
災の子?お世話してくれる人がいない?
「そんなこと、誰も──」
「教えないだろうな。大事な神子様を傷つけられたら困るから。
都合が悪いことは隠しておきたいだろうし、ここの連中はそれで幸せになれるからな」
御子という存在の残酷な掟について、持っている力……どれも私が知らないことだらけだった。
「俺はこっちの御子に会ったことがある。……友人だからな」
「時々学校を抜け出していたのは……」
「もう世話役や護衛として顔を出せない以上、村の連中の目をかいくぐる必要がある。
どうせ黒狐憑きの俺が何をしようが、あいつらはどうでもいいだろうから助かってる。……けど、昨日の放課後確認しに行ったらいなかった」
「村に来てるってこと?」
「いや。……俺が話せるのはここまでだ」
穂高は立ちあがると、教室から出ていこうとした。
「待って!もう少し詳しく言ってくれないと、」
「本来祝福の子に災いのこの話をすること自体禁じられている。俺はあいつを探す」
「それなら今夜社の前で待ってて。夜とその子が同じかどうか知りたいの」
穂高は渋い顔をしていたけど、首を小さく縦にふってくれた。
「ありがとう」
その背中を見送りながら、災の子について考える。
家族を殺されて、知らない人たちから石を投げられて、私とは別の力が使えて……怖くなかったはずがない。
もし夜が穂高が探している宵っていう女の子で災の子だったら、私はどうすればいいんだろう。
(なんて声をかけたらいいか、分からないよ)


××××××××××××××××××××××


「ここなら雨風を凌げそうですね」
食糧が底をつくかもしれない。
ルナが入っている鞄を見て、思わず溜息が零れてしまった。
「ルナ、今夜はどうしましょうか」
《……雨が降るかもしれない》
僕の力を注ぎこんでしまったルナは、実は新月が近くなると少しだけ話せるようになる。
「それは困りますね」
《足、痛まないの?》
「大丈夫です。かすり傷ですから」
なんとか笑顔を作るけど、だんだん視界が滲んできた。
《私しか見ていないんだから、思い切り泣いていい》
「駄目だなあ、ルナに心配かけちゃうなんて……。ごめんなさい。僕、本当は──」
人の気配がして、黙ってフードをかぶる。
焚き火を消して岩陰に身を潜めた。
(まさか、僕以外にも人間が送りこまれているんでしょうか……?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

神様の愛と罪

宮沢泉
キャラ文芸
陽治郎(ようじろう)は唯一の友である神様と、たくさんの養い子たちとともに楽しく暮らしていた。しかし病魔に侵されて亡くなってしまう。 白い光に導かれ目覚めると、陽治郎の魂は数百年後の令和の時代で生きる少女・蓮華(れんげ)の体の中に入っていた。父親を亡くしたばかりで失意に沈む蓮華は心の奥底に閉じこもってしまっていた。蓮華の代わりとなって体を動かそうとしたとき、かつての友であった神様・紫(ゆかり)と再会する。蓮華の後見人になった紫に連れられ、自然に囲まれた地方にある家にやってくる。 しばらくして、陽治郎は死んだ理由が紫にあることを知ってしまいーー。

さよならまでの六ヶ月

おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】 小春は人の寿命が分かる能力を持っている。 ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。 自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。 そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。 残された半年を穏やかに生きたいと思う小春…… 他サイトでも公開中

或ル男ノ断行

とっとこまめたろう
キャラ文芸
お嬢様と従者の歯車が狂ったお話。

少女探偵

ハイブリッジ万生
キャラ文芸
少女の探偵と愉快な仲間たち

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

鬼道ものはひとり、杯を傾ける

冴西
キャラ文芸
『鬼道もの』と呼ばれる、いずれ魔法使いと呼ばれることになる彼らはいつの世も密やかに、それでいてごく自然に只人の中にあって生きてきた。  それは天下分け目の戦が終わり、いよいよ太平の世が始まろうというときにおいても変わらず、今日も彼らはのんびりと過ごしている。  これはそんな彼らの中にあって最も長く生きている樹鶴(じゅかく)が向き合い続ける、出会いと別れのお話。 ◎主人公は今は亡きつがい一筋で、ちょいちょいその話が出てきます。(つがいは女性です。性別がくるくる変わる主人公のため、百合と捉えるも男女と捉えるもその他として捉えるもご自由にどうぞ) ※2021年のオレンジ文庫大賞に応募した自作を加筆・修正しつつ投稿していきます

処理中です...