バッドエンド

黒蝶

文字の大きさ
上 下
6 / 34

5頁

しおりを挟む
【神子の世話係である巫女には神聖な力が宿ると云われており、光栄なお役目である。
御子の世話役には巫が選ばれるが、その身を滅ぼす可能性が高い。
神子には美しいもののみを知らせる。
そのため、御子の存在は知られてはならない。
神子と御子の力は対になっており、混ざれば大きな力をもたらすが村を滅ぼす可能性がある。】
「だから僕はここに閉じこめられたんですね」
「あたしが出してあげられればよかったのに……ごめんよ」
「僕、おばあさんがいてくれて幸せです!あなたが巫なんですか?」
「……そういうことになるね」
おばあさんの顔は曇っていて、僕の頭を優しく撫でてくれた。
「おばあさんに撫でてもらうの、好きです」
「そうかい。…どうかそのまま、真っ直ぐ育ってくれ。憎い相手が出てくるだろうけど、決してそれだけで心を満たしてしまわないように」


「また夢……。そういえば、あんな本ありましたね」
小さい頃から小屋にあった本を読み漁っていた。
神子に御子、巫女、巫…読み方は全部『みこ』だ。
きっと御子の存在を隠すためにどの役職を呼んだか分からないようにしたかったんだろう。
「そろそろ行きましょうか」
道中、狼の群れに会った。
《この奥に祭壇があるが、近寄らない方がいいぞ》
「教えてくれてありがとうございます。それ、僕が壊さなきゃいけないものなんです」
《気をつけろ。あの瘴気にあてられれば最悪死ぬぞ》
狼の群れのリーダーはそう言って去っていった。
泡沫の呪いは4つの祭壇の力を得て邪気を集めているらしい。
だったら、まずはそれを壊すのが先だ。
《あなた、何者です?》
「誰でもいいじゃないですか」
《ここに人間は立ち寄れないはず…ああ、あなたもしかして御子ですか?
愚かな人間どもにさえ見捨てられた、哀れな子…。我々のところへ来ませんか?》
「お断りします。僕はただ、やりたいようにやるだけなので」
《そうですか…では》
相手は真っ黒な霞みたいだった瘴気から扇を造り出す。
《少々お相手願えますか?》
「勿論です!」
影を刀に纏わせて思いきり振って鏡ごと斬ったら、相手の体は粉々になってしまった。
(これで終わり?思ったよりあっさりしていました)
刀を仕舞って、痺れた腕をふる。
もし仲間になるって言ったら、本当に僕のことを受け入れてくれたんだろうか。
「考えてもしかたないですよね」
持っていた花を供え、目を閉じて両手を合わせる。
死んだ人にはこうやって手を合わせるって、おばあさんが教えてくれた。


──おばあさん、僕、ちゃんとできていますか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

神様の愛と罪

宮沢泉
キャラ文芸
陽治郎(ようじろう)は唯一の友である神様と、たくさんの養い子たちとともに楽しく暮らしていた。しかし病魔に侵されて亡くなってしまう。 白い光に導かれ目覚めると、陽治郎の魂は数百年後の令和の時代で生きる少女・蓮華(れんげ)の体の中に入っていた。父親を亡くしたばかりで失意に沈む蓮華は心の奥底に閉じこもってしまっていた。蓮華の代わりとなって体を動かそうとしたとき、かつての友であった神様・紫(ゆかり)と再会する。蓮華の後見人になった紫に連れられ、自然に囲まれた地方にある家にやってくる。 しばらくして、陽治郎は死んだ理由が紫にあることを知ってしまいーー。

さよならまでの六ヶ月

おてんば松尾
恋愛
余命半年の妻は、不倫をしている夫と最後まで添い遂げるつもりだった……【小春】 小春は人の寿命が分かる能力を持っている。 ある日突然自分に残された寿命があと半年だということを知る。 自分の家が社家で、神主として跡を継がなければならない小春。 そんな小春のことを好きになってくれた夫は浮気をしている。 残された半年を穏やかに生きたいと思う小春…… 他サイトでも公開中

少女探偵

ハイブリッジ万生
キャラ文芸
少女の探偵と愉快な仲間たち

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

鬼道ものはひとり、杯を傾ける

冴西
キャラ文芸
『鬼道もの』と呼ばれる、いずれ魔法使いと呼ばれることになる彼らはいつの世も密やかに、それでいてごく自然に只人の中にあって生きてきた。  それは天下分け目の戦が終わり、いよいよ太平の世が始まろうというときにおいても変わらず、今日も彼らはのんびりと過ごしている。  これはそんな彼らの中にあって最も長く生きている樹鶴(じゅかく)が向き合い続ける、出会いと別れのお話。 ◎主人公は今は亡きつがい一筋で、ちょいちょいその話が出てきます。(つがいは女性です。性別がくるくる変わる主人公のため、百合と捉えるも男女と捉えるもその他として捉えるもご自由にどうぞ) ※2021年のオレンジ文庫大賞に応募した自作を加筆・修正しつつ投稿していきます

私の周りの裏表

愛’茶
キャラ文芸
市立桜ノ小路女学園生徒会の会長は、品行方正、眉目秀麗、文武両道、学園切っての才女だった。誰もが憧れ、一目を置く存在。しかしそんな彼女には誰にも言えない秘密があった。

処理中です...