【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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126話◆あの人の愛が欲しい、夫婦になりたい。そう願うヤリチン。

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カチュアがウィットワース伯爵邸から出て行った後、従者の若者はオースティンの私室を訪れた。


従者の若者はオースティンの部屋から出て行くカチュアの姿を見たが、オースティンに馬車まで見送られる事無く一人で部屋から出て来て帰って行く女性の姿を見るのは初めてだった。


カチュアは乱れた髪を掻き上げながら騎士服の上着を右肩に乗せて、シャツとトラウザーズ姿で颯爽と邸を出て行った。


今までにも邸に連れ込まれた女性が部屋から出て来る姿を何人か見てきたが、熱に浮かされ様にポワンとなっている女性や、真っ赤になった顔と態度を隠す様に必要以上に毅然とした態度を見せるか…

どちらにしろ、満足げな笑みを浮かべるオースティンにエスコートされる様に部屋から出て来る。

それがいつもの事だったのだが。

いつもと様子が違い過ぎる。一体何が?


「オースティン様、入りますよ…?」


「………ぁぁ入れ……」


か細い声での入室の許可の声が聞こえ、従者の若者は静かにドアを開いた。


「失礼します………オースティン様?」


オースティンは乱れたドレス姿のままベッドの上にペタンと尻をついて座っていた。

随分としおらしく、何だったら今まで見た「女」を演じる芝居の中で一番女らしい。


「いかがなされました…?
カチュア様、一人で帰ってゆかれましたけど…。」


「帰ったのか……カチュア……
俺が…今までしてきた事って…
独りよがりの自慰と同じだったんだなって…。」


「はぁ?ナニ言ってんですか。」


従者の若者は、ぼんやりと窓の方に目を向けたオースティンの顔を覗き込んだ。

オースティンの片目からポロッと涙が落ちる。

従者の若者は思わず「げ!」と身を引いた。


「あんなふうに優しく、甘く、愛を囁かれて身体中を愛撫されて…
激しく求められて奪われて…抱かれるって、愛されるって、あんなの……俺は誰にもしたこと無い…。」


「……ではオースティン様は……その……
カチュア様に……奪われたと……。
そんなオースティン様を奪う、男性器のような道具を持ち歩いてるんですかカチュア様。」


確かにカチュアは自分を男だと言っていた。

だが自称男とは言え、女性がそんなディルドらしきものを持ち歩くのはどうなんだろう。

と言うか、それを使ってなのかオースティンが女にされてしまった事実。


━━いやぁ、まさかそうなるとは思わなかった
しかも、ほだされてやんの。━━


従者の若者は遠い目をした。

だが、よくよく考えれば主のオースティンには申し訳無いが少なからず、いい気味だと感じて可笑しくて笑いが込み上げてくる。


「まぁ、痛い目に遭わないと分からないタイプですからねーオースティン様は。
ま、これに懲りたら、女性を手玉に取るような真似は控えるんですね。
カチュア様との事も悪い夢でも見たんだと諦めて。」


「諦める!?なぜ諦めなきゃいけない!?
嫌だ、俺はカチュアを諦めるなんて出来ない!」


「はぁ?ナニ言ってんですか。」


従者の若者は、本日二度目の同じ台詞を吐いてしまった。

色んな女の味見をするのが好きだったスケコマシの主人が、処女を奪うつもりだった男装の女性に逆に処女を奪われて……

ハッキリ言えばケツを掘られて、心までも女みたいになったとでも言うのだろうか。


「俺がカチュアにされたのと同じ事をされて、カチュアに同じ言葉を囁かれる奴がこの先現れるなんて絶対に嫌だ!!」


「ホントに何を言ってんですかね、オースティン様は。
今まで散々、女性達に今のオースティン様と同じ思いをさせておいて、自分は簡単に切り捨てたクセにですよ。」


いけないとは思いつつも、従者の若者はオースティンに対して嘲笑を浮かべた表情を向けてしまった。

主人と従者としては仲が良い方ではある二人だが、さすがに無礼だったかと叱咤される前に従者の若者は表情を抑えた。


「じゃあ…どうしたらいいんだ…
俺がカチュアと…夫婦になるには…」


「…え?…それ、どっちが夫で、どっちが妻なんです?」












ウィットワース伯爵邸に行ったカチュアが深夜に無事戻って来た。

その翌朝、わたしは騎士のカチュアを同行させて王城に向かった。

馬車を走らせ王城に到着したわたしは、サイモンに見つかる前に、カチュアを連れてそそくさと仕事部屋に移動。

忍者のごとく仕事部屋に入ったわたしは、早速メモを取り出して取材の準備に入った。


「さぁ!詳しく教えて!
カチュアが大人の男になって、ヤリチンオースティンを散らせた話を!」


「メグミン先生の為なら喜んで!」


休憩用の長椅子にカチュアを座らせ、オースティンとのやり取りをネチネチと詳しく聞いたわたしは、感心と共に呆れたように溜息を漏らした。


いや、あのね…オースティンがゲームの中ではナンパキャラだったのは良く分かってたのよ。

それが現実となり、その設定時から数年も経ってると…
性経験も豊富になっていて、リアルにヤリチンだし。

花から花へと飛び回って蜜吸って。
で、一回蜜の味を識れば、その花にはもう興味を無くすとか。

お前はグルメ気取りのチョウチョか。

わたしの大事なカチュアも毒牙にかけようとしやがって。

………まぁ、逆に花に食われちゃってんのだけれど。


花だと思って近付いたらハナカマキリだったって感じかしら。ざまぁ。

本来あるはずの無い、神に与えられた男性化の魔法など使いたくないと言っていたカチュアだけれど、その力を使ってくれて良かったわ。

邸に入ってから部屋に連れ込まれてベッドに倒された話を聞いたけど、カチュアが魔法を使わずに女のままだったら、絶対アイツに食われてた。

無事でいてくれて良かった…ただ…

カチュアが彼の新しい扉を開いちゃった様で…


「オースティンはカチュアの事、諦め切れないんじゃないかなぁ…
しかも、興味本位でカチュアを手に入れたいと思っていたのが、何か恋焦がれた様な感じになってない?」


「さぁ……私は彼には全く興味が無いので。」


クールだなカチュア。
初めてを奪った相手に対してそんなもんか。

いや、それはヤツも同じだしな。

オースティンは、自分が今まで女性に対してしてきた事を逆にカチュアにされてしまってるワケだが…

そんなオースティンに、帰りしなに縋り付かれるって、よほどだよなァ…。

カチュアに開かれた新しいドアは、そんなに素晴らしかったのか。
コイツ、完タチ扱いされていたけどネコでもイケたんだな……

オースティン受け側での初絡み、描いてみるか……!

って、漫画のネタじゃなくて!


「でも、これでもうヒールナー邸にオースティンが来なくなる……訳ではないんだろうなぁ…。」


わたしの知るゲームでのオースティンは、「ナァに言ってんだか!」と鼻で笑いたくなるが、彼いわく真実の愛とやらを知ったら一途に主人公を想う。


プレイボーイだった彼がたった一人に自身の愛を捧げる話の流れは、それはそれで支持されていたりもした。

主に20代から先の年代の成人女性に。


「遊び人てのも大概だけど、一途ってのもある意味厄介よね……。」


特に、この世界の男どもはな。

スファイ然り、スチュワートさん然り…惚れたらストーカーみたいになるじゃん。重いわ。

でも一番は…


バァーン!!


わたしの仕事部屋のドアがいきなり全開状態になる。

デスクに座るわたしは驚いた様にドアの方を見てブフッと一瞬吹いたが、青ざめた顔でニコリと微笑んだ。



開け放たれたドアのど真ん前に、一途がゆえに一番厄介なわたしの愛しい旦那さま…

サイモンが立っていやがった。


「カチュア……サイモンのかわりに訓練場に行って朝の運動にいい汗でもかいてきたら?
……わたしも今からここでいい汗……
ううん、やらしい汗をかく事になりそう。」


「…そのようですね。では奥様、ご武運を。」


ご武運って、何の……


部屋を出るカチュアが入口に立つサイモンに頭を下げて礼をし、サイモンの横を通り過ぎようとした。


「カチュア、オースティンが城に来ている。
気をつけろ。
お前に何か不幸があったら、ミランダが悲しむ…」


「心得ました。」


カチュアはそのまま部屋を出て行った。

カチュアのかわりに部屋に残ったサイモンが後ろ手で仕事部屋に鍵を掛ける。


「…俺のめぐみを悲しませるような真似をオースティンがカチュアにするのであれば、俺はオースティンを許さない。」


あー……サイモンはカチュアがオースティンを頂いた事をまだ知らないから…。

スケコマシのオースティンが、まだカチュアを狙ってる位にしか把握してないんだろうな…。


わたしのデスクの隣にまで来たサイモンが、わたしの横で床に片膝をついた。

いきなりガバチョだと思っていたわたしは、首を傾げる。


「………?どうしました?」


「めぐみ、今夜は邸に帰る。
夕食が済んだら、その後は君と朝まで繋がっていたい。」


ゲフッ!そんな宣言かい。

いや、じゃあ今、ここでは何もしないって事?

……だったら助かるけど……じゃあ何でしゃがんでるの。


「わ、分かりました…けど……??」


「だから、夜まで我慢する為に君を味わいたい。」


ハァ?意味わかんない!!

それ、結局するって事!?


「あ、味わうって!そーゆーことですか!
はいはいはいはい!」


スカートを捲り上げられて、中に頭を突っ込んだサイモンに、パニクった私が壊れた人形の様にコクコクコクと素早く何度も頷いた。


サイモン、本当に口で味わうだけで済むの!?

済まない方に、賭けます!!わたし!!

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