【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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121話◆戦後始まるデスマーチは寝室から。

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「私、不感症なんですよね。」


「ブッ。」


いきなりのメイの告白に、わたしは紅茶を噴いた。

私室の長椅子に座り、侍女のメイとカチュアを前に久しぶりにゆったりとくつろいでいたわたしに、メイからのまさかの告白。


「だからぁ、ベタベタ触られたり揉まれたりベロベロされても鬱陶しいだけなんですよぉ。」


メイは羽ハタキを手に持ち、ハァーっと大きな溜息をつく。

いや、侍女が邸の奥様に愚痴る様な話しじゃないかと。


「そ、そうなんだ…えっと…気持ち良くならない…って事かしら。
気持ち悪いとか…?不快感がある?」


「身体に色々されても気持ち良くもなりませんけど、不快でも無いんですよね。
本当に鬱陶しいだけで。」


それはまた変わった……不感症…?


「だからって毎回断るのも面倒くさいんで、たまに何してもイイって言ってやったらクソボケがずっとベッタリくっついてベタベタ、ベロベロ。うっぜぇんすよ。

一回サクッとヤらせたら、もうベタベタしませんかね。」


メイの貞操観念が低い…。

これで処女で、自分は気に入った男女を骨抜きにしたいとか意味が分からんのだけれど。


「そ、そういうモンじゃないと思うわよ、メイ。
スファイはメイの事が本当に好きなんだから。
そんなサクッと一回なんて………

ベタベタベロベロはするのに、メイを奪おうとはしないんだ?スファイは。」


それって、スファイはメイがちゃんと受け入れてくれるのを待ってるんじゃないの?

スファイは、メイやわたしが思っている以上に本気でメイを大事にしたいと思っているのかも知れない。


「別にヤってもいいって、前に言ったんですけどね。
そしたらベタベタベロベロするだけで鬱陶しいんで。
今はウザいんで側に来て欲しく無いです。
アイツと夫婦だなんて、まっぴらゴメンですし。
新しく誰かを好きになって欲しいんですよね。」


うーん、無理そう……。


乙女ゲームの攻略対象だったスファイは、厳しいお姉さんが好きなタイプではあったけど…今、同じ様な人が現れたとしてもなびかないと思うなぁ。

わたしから見て、スファイのメイを好きな気持ちは揺るがない気がする。

ゲームの中ではスファイを蔑む悪役令嬢のディアーナに怯えていた、あの小さなスファイが…

殴られても、どつかれても平気なほど強くなった…とゆーか図太くなったとゆーか…メイに惚れてキャラ変わった?


「でも、メイがスファイをこの邸に置いてって、お義母様にお願いしたんでしょ?婚約者って立場で…。
スファイの事を嫌いってワケじゃないよね?」


「好きか嫌いかで言えば嫌いですよ。
婚約者だってのも、ただの下層平民を邸に置けないと言われたから私が身元保証人みたいなモンって理由だけです。
だって、あのクソボケを野放しにしたら、すぐ悪い方に流されてオッ死んでしまいそうじゃないですか!
アイツが死んだら寝覚めが悪いとゆーか。」


ううん…スファイを応援してメイとくっついて欲しい気もするけど、これだけ頑ななメイにスファイを好きになってあげたら?なんて言うのも要らぬ世話だろうし。


「奥様が二人を何とかしてあげようなどと思う必要はありません。放っておけば良いのです。
この先を紡いで行くのは二人なのですから。
結ばれるも別れるも二人が選ぶ事です。」


「結ばれるかぁ!!あのクソボケと私がぁ!」


カチュアの言う通り、わたしが考える事じゃないわね。
さすがはカチュアね。一本芯が通ってると言うか……

でもそんなカチュアも、えっらく疲れ果てた顔をして……


「カチュアも随分疲れ果てた顔をしているわね…
ずっとわだかまりのあったお母様と同じお邸で暮らすの、大変?」


「え?母ですか?…母の事は父…
スチュワート様に任せてありますので特に何も。」


おお、早くもスチュワートさんの事を父と呼べるのか。
自分が好きだった男性が、実は父だったって。

もっとショックを受けて、認めたくないとかゴネるかと思ったけど。
カチュアはその辺、サッパリと潔いわね。

身体は女性でも、さすが中身がイケメン。


「奥様ぁカチュアはですねー、さる貴族家嫡男様からは平民でも良いから婚約をしたいとの申し入れが。

また別の貴族家からはヒールナー伯爵家より高待遇で雇われないかとの申し入れが来ているんですよ。」


所詮は他人事だ!と思っているメイが楽しげにわたしに報告してくる。

カチュアは暗い顔をして、頭が痛いと言うかの様にこめかみを押さえた。


「え、その両家って……。」


「エイブル子爵家のアレーン様から婚約をしたいとの申し入れが。
ウィットワース伯爵家のオースティン様からは、我が邸にて雇われないかと。
お断りの手紙を出したら、エイブル子爵家からはバラの花束が。
ウィットワース伯爵家からはルビーの耳飾りが贈られてきました。
直ぐに送り返しましたが。」


思い出して苛立ったのか、こめかみを押さえたカチュアの顔が険しくなった。


「それはカチュアを…一人のレディとして見てるって事よね…?」


「…二人とも、私の精神が男であると話した上でコレですよ。
脳みそ、スカスカなんじゃないですかね。
そんな頭の悪いオス共には勿体無いですよね……アレ。

私は持ってないのに…持って生まれただけでオスなんですから。
いっそ、ちょん切ってやりましょうか…。」


ちょん切っ…!どっ!!どこを!?何の話し!?

いつも冷静なカチュアが鬼になる!!

2代目銀狼鬼の戦歴の中に、ナニをちょん切ったなんてエピソードは入れちゃ駄目でしょ!!

カチュア、目が死んでる!!


「エイブル子爵家のアレーン様は、いざとなれば力でねじ伏せて黙らせます。
ですがオースティンの阿呆は私の兄弟子にあたるんです。
恐らく強い…厄介なんですよ。」


仮にも貴族の子息を呼び捨てな上に、アホ扱い。

カチュアがこんな事、珍しい。

何があったのか分からないけど、よほど腹が立ったんだろうな…。


「奥様ぁカチュアはですねー、ずっとドレスを着たバカでかい男にチチを揉まれ続けたんですってー。」


相変わらず、他人事だと思ってメイが楽しげに暴露。

わたしとしては情報を知れて有り難いけど…メイ、お前さん中々にヒドい奴だな。


「セクハラじゃん!
ゲーム設定でもヤリチン野郎と思っていたけど、そんな野郎に大事なカチュアを渡すわけにはいかないわ!!
カチュアには、これからもわたしの専属侍女でいて貰うもの!」


そうよ!大事なカチュアの根元ズッポリは、そんなヤツを相手に描きたくない!


「セクハラ?ヤリチン?」


「ありがとうございます…奥様。」


聞き覚えのない不思議な単語にキョトンとしたメイの隣で、安堵したかの様にフワッと優しい笑みを浮かべたカチュアが両手でわたしの手を握った。


「では、あの阿呆に手ごめにされそうになったら、切り落とした上でサクッと殺っちゃう事をお許し頂けますね?」


「ナニ物騒な事を笑顔でサラッと言ってんの!!カチュア!!」


カチュアが壊れた!!

手ごめにされそう!?だから殺す!?ナニを切り落とした上で!

平和な日常に戻ったハズが!!再びおかしな事に!?








翌日から、カチュアの剣の稽古はアセレーナさんが直々につける事となった。


片手を失った状態で邸に連れて来られたアセレーナさんは、何かもう砂浜に打ち上げられたクラゲみたいになっていて……


「ワタクシこのまま水になって、この世にサヨナラ致します」


…みたいな雰囲気だったけど、腕をニョキっと生えさせられ、気が済むまでディアーナというアホみたいな強者とやり合った結果、憑き物が落ちた様にスッキリした顔になっていた。

自分を卑下し過ぎるアセレーナさんにとっては優しく慰められたり励まされるよりも、ディアーナみたいに人の事なんかお構いなしに容赦無く自分に掛かって来ようとする人の相手をする方が気がラクなのかも。


「何言っても、何しても、ディアーナ様は一切聞き入れてくれないんですもの。
いっそ痛めつけられても構わないと思い棒立ちになりましたら、胸を揉まれましたわ。

痛めつけられるのは構いませんが、若い女性に辱めを受けるのは…ちょっと…。

女性でありながら同性のわたくしに、何をするつもりだったのかしら。」



ごめんね、アセレーナさん。

わたしがそれに答える事は出来ないわ。だって…

ディアーナが貴女にしようとした事より多分、貴女の娘さんが貴族のお嬢さんにヤった事の方が、ずっとエロい。

だから、どうしても知りたかったら娘のカチュアに聞いて。


それにしてもアセレーナさんって、意外にウブなのかも知れないわね…。




そんなこんなで、カチュアの剣の相手はアセレーナさんがする事となった。

二人が剣を交える様子を嬉しそうに眺めるスチュワートさん。

カチュアとサイモンの師匠でもあるアリエス先生は、若い頃にグレイスお義母様の弟子でもあったという。


「今のアリエスは、全盛期の私よりも数倍強いわよ。
それでもね、全盛期のアセレーナを越える事は無いわ。」


グレイスお義母様はそう言うのだけれど。

それって、全盛期のアセレーナさんはサイモンより強かったって事?

どんだけ強いんですか。銀狼鬼。





数日経ち、グリーンヤンキー……マグスが正式に神聖国の国王になった事が王城前の立て札にて知らされた。

ラジェアベリアと同盟を結んだ、遠い場所にある国をラジェアベリアの国民達はあまりよく知らない。

「へーそーなんだ」位だろう。

その国がラジェアベリアに攻め込もうとしていた事も、それを企てていたのがラジェアベリアの貴族令嬢であった事も、誰も何も知らない。

ジャンセンさんの仕業であろう、クロスバート侯爵家にエリーゼという令嬢が居た記憶がほとんどの人々から消えていた。


今更だけど…アホみたいに強いディアーナは置いといて。


多くの人々の記憶の改竄を行ったり、多くの兵士の死体の山を血の一滴も残さずに跡形もなく消してしまえるジャンセンさんて、やはり人ではないのだと改めて思う。


ラジェアベリア国民に認識されずに終わった戦争は、エリーゼさんによって屍人に近い一万を越える兵士の襲撃から一ヶ月たった今、やっと後片付けが済んだと、サイモンがヒールナー邸に帰って来た。

邸の主であるヒールナー伯爵夫妻をはじめ、邸の使用人全てが門の前に並びサイモンを迎えた。


「おかえりなさい、サイモン!」


「ただいま、ミランダ…俺のめぐみ…俺の愛する妻…。」


ヒールナー邸の門の前で出迎えたわたしを、サイモンがヒールナー伯爵夫妻と大勢の使用人の見ている前で抱き上げた。

新妻らしく頬を染めて、サイモンの肩にそっと顔を預ける。

微笑ましい若夫婦の姿に皆が優しい笑顔を浮かべた。


「早く君を抱きたくて、たまらなかった。
今すぐ寝室に向かおう。」


「……………はい?」


サイモンの言う、抱くは抱き締めたいじゃなく…その…ナサリたいのだと…そこに並ぶ全員が分かっている。

いや帰って即、真っ昼間からヤりますって何なんだよ!?


「ちょ…いや、はぁ?」


「寝室に行こう。今すぐに。」


「はぁあぁ!?ナニ言ってんですか!
昨日も一昨日も城でシタじゃないですか!
ほぼ、毎日わたしの仕事部屋に来て!仕事にならん位にっ!

ハメまくったじゃん!!!」


ヒールナー伯爵邸に住まう皆さんの見ている前でわたしは、しなくても良い夫婦性活事情を大声で暴露してしまったのでございます。


よくよく事情を知り、人の事を構ってられない状態のカチュアとメイ以外の若い侍女達は「やぁん!」「きゃー!」と恥ずかしいけど、ステキ!的な声を上げている。

それはまぁ…なんか分かるわ。でも……

アセレーナさんが、顔を真っ赤にして俯いているのが気になるわよ。

あ、察しました。

スチュワートさんの顔を見たら。

わたしと似た様な状態なんですね。ハイ。ほぼ毎日すか。


「城では繋がれても、君の全てを味わい尽くす事が出来なかった。
互いに一糸纏わぬ身となり、君の全てを見て味わい尽くしたいのだ。」


今からデスマーチが始まりそうです!!

誰か、助けてぇ!!



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