【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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109話◆狂女と二人。

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神聖国の宿屋。

わたしの部屋にメイとスファイとわたしの3人が集まり、お留守番をしていた所、わたしはいきなり現れたエリーゼさんに拉致されてしまいました。


わたしは首に腕を回されたまま引きずられる様にして、立派な寝室のベッドで伸びている知らないオジさんの前に転移して連れて来られたんだけど。


……このオジさん…ダレ?


知らないオジさんの寝室で、エリーゼさんがわたしを解放した。



「ミランダ、勝手に逃げようとしたらお前を殺す。
死んでも次の転生先がまた楽しいゲームの世界とは限らないからな。」



「やっぱり、エリーゼさんも転生者なのね。
現代日本人でしょ?
なんでこんな酷い事が出来るの!」



エリーゼさんは暖炉の火かき棒を手にし、その先をわたしの顔に向け近付けた。



「うるっせぇな。
ゲームのヒロインも居なくなった今、この世界は転生させられた俺が主人公なんだよ。
だったら、俺が好きにしたっていーだろうが。」



なんて自分勝手な言い分。

いや、百歩譲ってエリーゼさんが主人公だったとしよう。

乙女ゲームの世界で血みどろの戦争を起こす主人公とか、どうなんだ。



「転生させられたら主人公だって言うなら、わたしもディアーナも主人公じゃない。
って言うより、ここは造られたゲームの世界では無いのよ!?
現実にある、この世界がゲームの舞台に選ばれただけなの!
この世界に生きている人たちは架空の人物ではないの!」



エリーゼさんが手にした火かき棒を高く振り上げ、わたしの足元の床を抉るように叩きつけた。



「うるっせぇな!!
お前もムカつくが、ディアーナだ!
俺やお前がゲームに関係ない人物に転生してるっつーのに、悪役令嬢だぁ?
で、悪役令嬢のクセに主人公のオフィーリア様とくっついて…
この世界の女神だと?
ふざけんのも大概にしろよ!!」



激昂したエリーゼさんは口汚く大声で怒鳴り散らし始めた。

火かき棒を何度も床に打ちつけながら大声で喚く騒々しさに、気を失っていたオジさんが目を覚ました。



「え、エリーゼぇえ!!ぉ、ぉ、お前ぇ…」



「やかましい!!黙れ!!クソが!!」



ベッドの上で身体を起こした老年の男をエリーゼさんが火かき棒で叩きつけ始めた。



「エリーゼさん!!やめて!!
オジさん死んじゃう!!暴力反対!」



オジさんが誰だか知らんけど!でも、止めないと!!

わたしはエリーゼさんに抱き着くようにして動きを止めようとした。



「俺が!俺が、悪役令嬢ディアーナに転生するべきだったんだ!
そうすりゃ、俺が女神になっていて、ヒロインのオフィーリアともくっついて!!
お前みたいなカスの娘なんかになったせいで!!」



「違うよ!エリーゼさん!
ディアーナは元々がこの世界の女神なの!
創造神サマの娘なの!
地球の日本人に転生していただけなの!
ディアーナには、誰もなれないの!!」



何かね……神聖国に来てさ……
街に並ぶ神作品の神像という名のフィギュアを見てさ………

漫画やアニメやゲームが好きだなんて、何だか仲良くなれそうとか思っていたんだけど…。

同郷の仲間意識みたいなものもあったけどさ。
無理だ。



「うるせぇ!黙れ!ブスが!!」



「お前こそ、うるせーわ!!
同じ日本人として恥ずかしいわ!!
ちょっと魔力あったからって、『ワァイ、チートだぁ、世界征服しちゃお!』とかカルイ頭で思っちゃうとか、厨二病よりヒデェわ!!」



あまりにも腹が立ち過ぎて、取っ組み合いの喧嘩をするように思わずエリーゼさんの髪を掴んでしまった。

エリーゼさんもわたしの髪や衣装を掴む。

その内、ポロリがあるかも知れない。



この際、ポロリでもボロリでもいーわ!!

同じ日本人のオタクとしてコイツは恥だ!!
成敗してくれるわ!!



互いの髪を掴み睨み合う。

くんずほぐれつ位に取っ組み合っていたわたしの頭に、山崎めぐみだったわたしの最後の記憶と、恐らくエリーゼさんの前世の最後の記憶が混ざり、ひとつの映画のワンシーンの様な映像となって流れた。







そこは日本のイベント会場へと続く大通り。


イベントを午前参加だけで終え、早めに帰路につこうと会場から出たわたしは友人達数人と歩いていた。



ああ、そうだ………わたし、ここで車に跳ねられた。



「やべー!!イベントあんのに、寝過ごした!!
近道…!車両禁止だけど、ここ通ればショートカット出来るじゃん!!行っちまえ!」



映像は映画の様に、別の登場人物視点からも流れされた。



本来、車が来るはずの無い路地から突然飛び出して来た車に、わたしと友人達は跳ね飛ばされた。

わたしは悲鳴をあげる間もなく即死し、友人達は大怪我をして呻き声をあげていた。



飛び出して来た車はわたし達を跳ねてパニックになったのか、そのまま加速して大通りに突っ込む格好で他の車と衝突し



シートベルトもせず運転していた若者はフロントから飛び出し、身体中をひしゃげさせ死んだ━━





「…………………え……?」



わたし、こんな……最期?
わたしだけじゃない、わたしの友達だって、あんなに血が出て……



わたし達をそんなヒドイ目に遭わせた人が、反省どころか、今度は自らが計画して大量殺戮をしようとしていたの?



「………え?……なんでそんな事……出来るの…」



真実を知りショックを受けているわたしに対し、エリーゼさんは頭を押さえて笑い出した。



「お前、あん時に俺が跳ねた女か!マジで?
同時に死んで、同時に転生させられたワケだ!?
じゃあよ、一人は選ばれて、もう一人はオマケで転生させられてんだわ!!」



エリーゼさんはわたしの髪を掴み顔を寄せると、火かき棒の先をわたしの目に向けた。



「オマケは当然、お前な。
お前が死ねば、サイモンも、あのディアーナも悔しがるだろうよ!
ざまーみろぉ!!」




火かき棒の先端が近付く様子が、スローモーションの様に目に入る。

ゆっくり眼球に向かって進んで来る様子が見えているのに、こんなにゆっくりなら、絶対に避けれるのに。



わたしの身体は、わたしが思う以上に遅くしか動けない。



避けれない。

あの鉄の棒はもうすぐわたしの目を……貫く。

わたし、死ぬ。



イヤだ…幸せなのに!わたし、今とても幸せなのに!!

サイモンと離れたくないの!!!



もっとサイモンに愛されて、わたしもサイモンを愛して……

長い時間を二人で過ごしたいの!!怖い!

死ぬ事より、サイモンと別れる事が一番怖い!!




「サイモン!!助けてぇ!!」



わたしは泣いて叫ぶ様にサイモンの名を呼んだ。









「………………………は?………ンだ、これ……マジで?…」



わたしの視界は力強く大きな手の平で閉ざされて、鉄の棒の先端から守られていた。

何も見えなくなったわたしの耳にかすれたエリーゼさんの声だけが聞こえ、その後、ズシャっと床に人が倒れる音がした。





わたしの視界を遮っていた手の平が外されると、わたしの目の前にはサイモンが立っていた。



「めぐみ…!」



「サイモ………ん………サイモン!!!!」


ブワッと涙が溢れてくる。


ボロボロと涙を溢すわたしを両手で抱き締めたサイモンは、手に持っていた剣を床に落とした。

赤く染まった剣が目に入る。

わたしを抱き締めるサイモンの後ろにいるエリーゼさんがどんな状態なのかが……

血まみれの剣と、わたしを抱き締めながらカタカタと震えているサイモンを見るだけで良く分かる。



「間に合って………良かった……めぐみ……」



「サイモン……貴方と、ずっと生きていきたいの……愛してるの…」



わたしを抱き締めるサイモンが、コクコクと頷く。

頷きながら、涙を流してわたしの頬に唇を寄せた。



「俺も愛してる……君を失ったら、俺も生きてはいられない…」



「わたしも…」







「ラブシーンは自宅に帰ってからにしろ。
人んチでイチャつくんじゃない。」



わたしと抱き締め合っているサイモンの背後に、ジャンセンさんが立っていた。

その位置、エリーゼさんが倒れてなかった?

まさかエリーゼさんを踏んづけている?



「じゃ、ジャンセン様…自宅って言いましても…神聖国は遠い場所ですし、邸に帰るにはまた2ヶ月程かかりますし…」



すぐイチャイチャしたい場合は、どうすれば!?

まさか2ヶ月我慢しろと!?



「めぐみ、自宅でなくても愛し合える。
2ヶ月肌を重ねないのは無理だ。俺が。」



ジャンセンさんは無言で窓を開き、暗闇に浮かぶ城を指さした。



「あれはラジェアベリア城、ここはラジェアベリア、ヒールナー邸はあそこ。

歩いても三十分かからん。」



……………神聖国の宿に居たわたし、ラジェアベリアに居たのか。

転移魔法って便利ね。



エリーゼさんの石、すごーい。



「便利ですが、この世界にあるべき物ではない。
全部、消失させます。」



わたしが思った事が分かったのか、ジャンセンさんが呟いた。



「めぐみ、ヒールナー邸に帰ろう…俺たちの邸で、君を愛し尽くしたい。

カチュアももう、ラジェアベリアに居る。」



わたしのこめかみにキスをしながら囁くサイモンに身を預け、コクリと頷く。



……………神聖国に残されたメイとスファイは??



スチュワートさん、どこ行ったの??



サイモンがわたしを横向きにして抱きかかえ、エリーゼさんにボコボコにされていたオジさんの部屋を出た。


部屋を出る間際に、ジャンセンさんがオジさんに何か魔法らしき物を使っているのを見た。



「お前には最初っから娘なんて居なかった。
悪かったな、変な縁をくっつけちまって。」



そうか、ここはクロスバート侯爵邸だったんだわ。







クロスバート侯爵邸を出て、ヒールナー邸の方に向かう。

邸の外に、お馬さんのアンバーがいるかと思っていたけど、居なかった。

サイモン、どうやってわたしを助けに来たの?と尋ねたら、指輪の力だった。
サイモンがくれた氷の指輪、GPS付いてんだったね。


サイモン、わたしの居場所限定で転移して来れるんだった。

でもこれ、わたしのあるんだか無いんだかな魔力をかなり使うらしい。

だから、自宅まで疲労しているわたしを抱いて歩くと。

うーむ、タフネス。



これで……すべてが終わったのかしら……









壁と天井、床の境界の無い真っ白な真っ白な世界。

床と呼べるかも分からない足元を、太い赤線が延々と続く。

髪を掴まれ血の道を引きながら引きずられる女の屍は、微動だにしないが魂は側に居り、悪態をつき続けていた。



━━俺の身体を離しやがれ!何なんだテメー!!━━



「これはもう、死体だ。生き返りはしない。」



白い場所に女の身体を転がし、足蹴にする。



「だが、俺の世界で造られた肉体だ。ダニの器にゃ勿体ネェ。」



ジャンセンは見えない椅子に腰掛け脚を組み、宙に浮いた姿で微笑む。



「さぁダニ。俺とお喋りしようか?」

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