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108話◆片腕無くした追う女豹と、追われ逃げ惑う女狐。
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エリーゼは、自身の身柄が拘束される事を恐れた。
だからこそ今回の戦争ごっこが、思い描いた様な結果にならず不発に終わった時に、素早く敵の手が届かない場所に逃げてしまおうと思った。
だがここにきて初めて、ゲームやアニメ、映画等の作られた映像でしか知る事が出来なかった大量殺戮のシーンを、自身の目で見る事が出来るという誘惑に駆られた。
「み、見たい……
普段平和ボケしてる奴らが、いきなり殺されてく所……」
圧倒的な力により蹂躪されていく人々の恐怖や断末魔を見たい、知りたい、聞きたい。
むせ返る程の血と肉のにおいを嗅ぎたい。
大丈夫、ちょっとだけ見て…すぐ転移して逃げればいい……
「いきなり現れた1万もの猛獣たちに、何匹のネズミが食い殺されてんのかな…。
ネズミどものちぎれた首や手足が転がってんのかな…
あはは…見たいな…。」
エリーゼは欲望を抑える事が出来なかった。
想像するだけで性的興奮にも似た熱が身体に蓄積されていく。
「はぁ…見たいわぁ…」
他人の絶望や恐怖、命がゴミの様に扱われる理不尽で残酷な光景を見たくて始めた戦争。
その欲望を止める事が出来ず、エリーゼは兵士達を置き去りにした場所から距離を置いた所に転移をした。
「こ、こんな事有り得ない!!なぜだ!」
兵士達を置き去りにして数時間後。
地獄絵図のような凄惨な風景を目にするのを期待して中央広場の外れに現れたエリーゼが目にしたのは、一滴の血を吸った様子も無い舗装された石畳。
その石畳の広場を通り酒場へと行き交う大人達。
いつもどおりの平和な夜の日常。
犠牲になった街の住人の遺体はおろか、自分が置き去りにした兵士の遺体も、身体の一部、肉片すら見当たらない。
ラジェアベリアの兵士が制圧したにしても、その痕跡が何ひとつ無いなんて有り得ない。
「1万もいた俺の兵が消えた?…
1人も居ない…どうやって、そんな事…」
狐につままれた様な気味の悪さを感じたエリーゼはここにきて初めて、この世界の人ならざる者の存在を意識した。
自分が執着して探し回っていた最凶の剣士、銀狼鬼の存在さえ霞む脅威。
自分は一体、何を敵に回した?人間離れした業…
こんな有り得ない事を出来る力を持つ者って何だ?
神?神だと!?そんな胡散臭いもん、この世にはいやしねぇよ!
………何の根拠も無く、そう思い込んでいた。
だって、地球に居た頃の俺は無神論者だったし、神なんか会った事だってある訳無いし…神なんて居ないし、奇跡なんて起きない…………
━━━━じゃあ、この世界に転生しちまった俺の今は何だ?
奇跡のひとつじゃネェのか?
少なくとも、こちらの世界に神は………居る!━━━━
「はぁ!?で、何だ!
あの悪役令嬢のブスが女神だとか言ってんのか!?
あぁ、忌々しい…。
あの金髪の神の御子とやらと夫婦をしてる?ザケんな!!」
ディアーナが自身よりも格上だというだけで腹立たしくて仕方が無いエリーゼは、その苛立ちをどこに向けて良いか分からない。
ただ、この場は危険だと一旦離れ、神聖国の外れにある古びた邸内に飛んだ。
「この国もヤバいな。
俺が王を殺しちまったからな……
さっさと他の国に逃げよう…」
「エリーゼ様。」
廃墟となった邸の一室、暗がりの中から声を掛けられたエリーゼがビクッと身体を強張らせながら、ゆっくり声の方を振り返った。
「ご無事でしたのね、エリーゼ様。
わたくし心配しておりましたのよ。」
暗闇に溶ける黒い衣装。闇に同化したその姿がエリーゼには一瞬見えなかった。
喪服のドレスを身に着けた貴婦人が左手に剣を持ち、廃墟と化した邸の暗闇の中に、まるで幽霊の様に立っている。
「ライオット夫人?……今さらお前がわたくしに何の用?」
エリーゼはアセレーナを警戒した。
前々から、何を考えているのか分からない気味の悪い女だと思っていたが、サイモンを恨んでいると言うからヒールナー家を精々引っ掻き回してくれたらいいだろう位の気持ちでスファイとつるませた。
その女がこのタイミングで、回収したはずの転移石を使いエリーゼに会いに来た。
なんて不気味な行動をする女だろう、とエリーゼは距離を取る。
「まぁ、そんな冷たい事をおっしゃらずに…
エリーゼ様は、ずっとわたくしを探して下さいましたのでしょう?
貴女の様な美しい方に興味を持って頂き、強く請われるなんて…女冥利に尽きますわ。」
黒いヴェールの向こう側で赤い唇が微笑む。
弧を描く赤い唇を隠す様に、アセレーナの顔の前に鞘から出された剣が構えられた。
「誰がお前みたいな、くたびれたババァに興味なんか……」
「わたくしがお探しの銀狼鬼ですわよ。」
ビュッと剣が振り下ろされる瞬間、エリーゼは姿を消していた。
エリーゼはアセレーナが身に纏う、異様な殺気に早々に気付いた。
エリーゼにとっての理解の範疇を越えた多くの事がエリーゼを神経過敏にさせ、アセレーナの言葉を聞き終わらない内にエリーゼは別の場所に飛んでいた。
頭の中に浮かんだ人物が誰かすら、記憶にない。
だが逃げる為にエリーゼは、咄嗟に頭に浮かんだ人物の居る場所に飛んだ。
結果、数日前に軽食を買った露店のオッサンのベッド上にダイブしてしまったのだが。
「ギャー!なんだ!強盗か!?夜這いか!?」
「黙れジジイ!!夜這いなワケねぇだろうが!!」
同じく、エリーゼを追って露店の店主の部屋に現れる剣を握ったアセレーナ。
「エリーゼ様、貴女とわたくしはもう、この世に生きているべきではありません。
ご一緒に逝きましょう。」
「うるせえババァ!てめーが銀狼鬼だと!?
信じられっか!」
「誰か、誰か助けてくれぇ!」
庶民である露店の主の狭い部屋のベッドの上に現れてモメる貴婦人が二人。
部屋の中は騒然となり、エリーゼは転移を忘れそのままアセレーナから逃げるように露店主の部屋を飛び出した。
「ああっ !あああ!うぜー!うぜー!
なんだって俺がこんな目に!!
この転生が、神が与えた奇跡だっつーなら、もっとマシな仕事しやがれよ!俺がラクしてゲームを楽しめる様に!」
━━そもそも乙女ゲームの世界なんだから、主要人物以外がどうなったっていいだろうが!
ゲームのクリア時期だってとっくに過ぎてるんだし、もう無くなってもいい世界だ!
乙女ゲームの背景として制作会社に作られただけの世界なんか、その中に転生させて貰えた俺が楽しむ以外に、もう存在する意味ねーじゃん!━━
エリーゼは爪を噛みちぎり、激しい苛立ちを顔に出しながら下町を走り続ける。
アセレーナが追って来るかも知れない。
アセレーナにすぐに殺されないようにする為に盾にする人質が欲しい。
連想ゲームのようにアセレーナから思いついた人物は共に行動させていたスファイ。
スファイがアセレーナに対して人質の役割を果たすかは疑問だが、自身を追って来たアセレーナの左手に握られた鈍い銀の刃を見た瞬間、エリーゼはスファイの姿を頭に思い描き、スファイの元へ飛んだ。
「ブハッ!!!!え、エリーゼ様!?」
一番最初に目が合ったメイが、口にしていた飲み物を噴き出した。
エリーゼは自分が飛んで来た場所が何処であるかを確認する。
平民用ではあるが安宿ではない、少し良い造りの宿の1室。
先ほどの露店主の部屋よりは広さのある部屋にベッドがひとつ。
部屋の中にはスファイが1人で立っており
部屋のベッドに腰掛ける、メイとミランダ。
「ああ、ミランダぁぁあ!!お前がいたわ!!」
エリーゼはニィと口角を上げ歯を見せて笑った。
「え、エリーゼさん…?なぜ、ここに……
ラジェアベリアに居るのでは…」
ミランダの言葉を聞いたエリーゼは、自身が飛んだ場所が神聖国であることに気付いた。
ミランダの腕を掴んでベッドから立たせたエリーゼは、ミランダの首に腕を回した。
「そうだよ!そのラジェアベリアで、テメーの旦那やら悪役クソ令嬢に邪魔されたんだよ!
何されたかすら分かんねぇ、俺の兵士をどっかに消しやがった!!
お前なんか知ってんだろ!!」
「奥様!!」「奥様にナニすんのよ!!」
騒ぎ立てるスファイとメイに、あからさまに苛ついたエリーゼがグンッと魔力を込めて二人を睨み付けた。
「うるさい黙れ!!あんま、魔力使わせんじゃねぇよ!!」
スファイとメイは身体を硬直させ、ピタリと動きを止めた。
身体は動かなくなっているが意思は消えてないようで、メイは苦しそうな顔をしながら何とか自身の身体を動かそうと試みているが、冷や汗ばかりが流れ動けない。
「クソ…こいつらを傀儡にするには時間も魔力も無い。
アセレーナ、お前が持つ転移石を全部よこせ。
隠していても分かるからな。
誤魔化しやがったらミランダの顔を刻む。」
エリーゼを追ってひと足遅れて部屋に現れたアセレーナに、ミランダを囚えたエリーゼが言った。
現れたアセレーナは無言で、胸に掛かる転移石のネックレスを外すとエリーゼの足元に投げる。
エリーゼはそれを踏んで粉砕した。
「さっきからハエみたいに俺の回りをブンブン飛びやがって。
うぜーんだよババァ。」
「……ミランダ様をお離し下さい。エリーゼ様。
わたくしは、もう貴女を追う事は出来ませんわ。
お一人で、お逃げ下さいまし。」
エリーゼは首に腕を回したままのミランダをチラッと見た。
よく考えれば、アセレーナが追って来なくてもサイモンやマグス、ディアーナが追って来るかも知れない。
ミランダはそれら全てに対して有効な人質だ。
「やなこった。」
エリーゼはミランダの首を拘束したまま、宿から姿を消した。
だからこそ今回の戦争ごっこが、思い描いた様な結果にならず不発に終わった時に、素早く敵の手が届かない場所に逃げてしまおうと思った。
だがここにきて初めて、ゲームやアニメ、映画等の作られた映像でしか知る事が出来なかった大量殺戮のシーンを、自身の目で見る事が出来るという誘惑に駆られた。
「み、見たい……
普段平和ボケしてる奴らが、いきなり殺されてく所……」
圧倒的な力により蹂躪されていく人々の恐怖や断末魔を見たい、知りたい、聞きたい。
むせ返る程の血と肉のにおいを嗅ぎたい。
大丈夫、ちょっとだけ見て…すぐ転移して逃げればいい……
「いきなり現れた1万もの猛獣たちに、何匹のネズミが食い殺されてんのかな…。
ネズミどものちぎれた首や手足が転がってんのかな…
あはは…見たいな…。」
エリーゼは欲望を抑える事が出来なかった。
想像するだけで性的興奮にも似た熱が身体に蓄積されていく。
「はぁ…見たいわぁ…」
他人の絶望や恐怖、命がゴミの様に扱われる理不尽で残酷な光景を見たくて始めた戦争。
その欲望を止める事が出来ず、エリーゼは兵士達を置き去りにした場所から距離を置いた所に転移をした。
「こ、こんな事有り得ない!!なぜだ!」
兵士達を置き去りにして数時間後。
地獄絵図のような凄惨な風景を目にするのを期待して中央広場の外れに現れたエリーゼが目にしたのは、一滴の血を吸った様子も無い舗装された石畳。
その石畳の広場を通り酒場へと行き交う大人達。
いつもどおりの平和な夜の日常。
犠牲になった街の住人の遺体はおろか、自分が置き去りにした兵士の遺体も、身体の一部、肉片すら見当たらない。
ラジェアベリアの兵士が制圧したにしても、その痕跡が何ひとつ無いなんて有り得ない。
「1万もいた俺の兵が消えた?…
1人も居ない…どうやって、そんな事…」
狐につままれた様な気味の悪さを感じたエリーゼはここにきて初めて、この世界の人ならざる者の存在を意識した。
自分が執着して探し回っていた最凶の剣士、銀狼鬼の存在さえ霞む脅威。
自分は一体、何を敵に回した?人間離れした業…
こんな有り得ない事を出来る力を持つ者って何だ?
神?神だと!?そんな胡散臭いもん、この世にはいやしねぇよ!
………何の根拠も無く、そう思い込んでいた。
だって、地球に居た頃の俺は無神論者だったし、神なんか会った事だってある訳無いし…神なんて居ないし、奇跡なんて起きない…………
━━━━じゃあ、この世界に転生しちまった俺の今は何だ?
奇跡のひとつじゃネェのか?
少なくとも、こちらの世界に神は………居る!━━━━
「はぁ!?で、何だ!
あの悪役令嬢のブスが女神だとか言ってんのか!?
あぁ、忌々しい…。
あの金髪の神の御子とやらと夫婦をしてる?ザケんな!!」
ディアーナが自身よりも格上だというだけで腹立たしくて仕方が無いエリーゼは、その苛立ちをどこに向けて良いか分からない。
ただ、この場は危険だと一旦離れ、神聖国の外れにある古びた邸内に飛んだ。
「この国もヤバいな。
俺が王を殺しちまったからな……
さっさと他の国に逃げよう…」
「エリーゼ様。」
廃墟となった邸の一室、暗がりの中から声を掛けられたエリーゼがビクッと身体を強張らせながら、ゆっくり声の方を振り返った。
「ご無事でしたのね、エリーゼ様。
わたくし心配しておりましたのよ。」
暗闇に溶ける黒い衣装。闇に同化したその姿がエリーゼには一瞬見えなかった。
喪服のドレスを身に着けた貴婦人が左手に剣を持ち、廃墟と化した邸の暗闇の中に、まるで幽霊の様に立っている。
「ライオット夫人?……今さらお前がわたくしに何の用?」
エリーゼはアセレーナを警戒した。
前々から、何を考えているのか分からない気味の悪い女だと思っていたが、サイモンを恨んでいると言うからヒールナー家を精々引っ掻き回してくれたらいいだろう位の気持ちでスファイとつるませた。
その女がこのタイミングで、回収したはずの転移石を使いエリーゼに会いに来た。
なんて不気味な行動をする女だろう、とエリーゼは距離を取る。
「まぁ、そんな冷たい事をおっしゃらずに…
エリーゼ様は、ずっとわたくしを探して下さいましたのでしょう?
貴女の様な美しい方に興味を持って頂き、強く請われるなんて…女冥利に尽きますわ。」
黒いヴェールの向こう側で赤い唇が微笑む。
弧を描く赤い唇を隠す様に、アセレーナの顔の前に鞘から出された剣が構えられた。
「誰がお前みたいな、くたびれたババァに興味なんか……」
「わたくしがお探しの銀狼鬼ですわよ。」
ビュッと剣が振り下ろされる瞬間、エリーゼは姿を消していた。
エリーゼはアセレーナが身に纏う、異様な殺気に早々に気付いた。
エリーゼにとっての理解の範疇を越えた多くの事がエリーゼを神経過敏にさせ、アセレーナの言葉を聞き終わらない内にエリーゼは別の場所に飛んでいた。
頭の中に浮かんだ人物が誰かすら、記憶にない。
だが逃げる為にエリーゼは、咄嗟に頭に浮かんだ人物の居る場所に飛んだ。
結果、数日前に軽食を買った露店のオッサンのベッド上にダイブしてしまったのだが。
「ギャー!なんだ!強盗か!?夜這いか!?」
「黙れジジイ!!夜這いなワケねぇだろうが!!」
同じく、エリーゼを追って露店の店主の部屋に現れる剣を握ったアセレーナ。
「エリーゼ様、貴女とわたくしはもう、この世に生きているべきではありません。
ご一緒に逝きましょう。」
「うるせえババァ!てめーが銀狼鬼だと!?
信じられっか!」
「誰か、誰か助けてくれぇ!」
庶民である露店の主の狭い部屋のベッドの上に現れてモメる貴婦人が二人。
部屋の中は騒然となり、エリーゼは転移を忘れそのままアセレーナから逃げるように露店主の部屋を飛び出した。
「ああっ !あああ!うぜー!うぜー!
なんだって俺がこんな目に!!
この転生が、神が与えた奇跡だっつーなら、もっとマシな仕事しやがれよ!俺がラクしてゲームを楽しめる様に!」
━━そもそも乙女ゲームの世界なんだから、主要人物以外がどうなったっていいだろうが!
ゲームのクリア時期だってとっくに過ぎてるんだし、もう無くなってもいい世界だ!
乙女ゲームの背景として制作会社に作られただけの世界なんか、その中に転生させて貰えた俺が楽しむ以外に、もう存在する意味ねーじゃん!━━
エリーゼは爪を噛みちぎり、激しい苛立ちを顔に出しながら下町を走り続ける。
アセレーナが追って来るかも知れない。
アセレーナにすぐに殺されないようにする為に盾にする人質が欲しい。
連想ゲームのようにアセレーナから思いついた人物は共に行動させていたスファイ。
スファイがアセレーナに対して人質の役割を果たすかは疑問だが、自身を追って来たアセレーナの左手に握られた鈍い銀の刃を見た瞬間、エリーゼはスファイの姿を頭に思い描き、スファイの元へ飛んだ。
「ブハッ!!!!え、エリーゼ様!?」
一番最初に目が合ったメイが、口にしていた飲み物を噴き出した。
エリーゼは自分が飛んで来た場所が何処であるかを確認する。
平民用ではあるが安宿ではない、少し良い造りの宿の1室。
先ほどの露店主の部屋よりは広さのある部屋にベッドがひとつ。
部屋の中にはスファイが1人で立っており
部屋のベッドに腰掛ける、メイとミランダ。
「ああ、ミランダぁぁあ!!お前がいたわ!!」
エリーゼはニィと口角を上げ歯を見せて笑った。
「え、エリーゼさん…?なぜ、ここに……
ラジェアベリアに居るのでは…」
ミランダの言葉を聞いたエリーゼは、自身が飛んだ場所が神聖国であることに気付いた。
ミランダの腕を掴んでベッドから立たせたエリーゼは、ミランダの首に腕を回した。
「そうだよ!そのラジェアベリアで、テメーの旦那やら悪役クソ令嬢に邪魔されたんだよ!
何されたかすら分かんねぇ、俺の兵士をどっかに消しやがった!!
お前なんか知ってんだろ!!」
「奥様!!」「奥様にナニすんのよ!!」
騒ぎ立てるスファイとメイに、あからさまに苛ついたエリーゼがグンッと魔力を込めて二人を睨み付けた。
「うるさい黙れ!!あんま、魔力使わせんじゃねぇよ!!」
スファイとメイは身体を硬直させ、ピタリと動きを止めた。
身体は動かなくなっているが意思は消えてないようで、メイは苦しそうな顔をしながら何とか自身の身体を動かそうと試みているが、冷や汗ばかりが流れ動けない。
「クソ…こいつらを傀儡にするには時間も魔力も無い。
アセレーナ、お前が持つ転移石を全部よこせ。
隠していても分かるからな。
誤魔化しやがったらミランダの顔を刻む。」
エリーゼを追ってひと足遅れて部屋に現れたアセレーナに、ミランダを囚えたエリーゼが言った。
現れたアセレーナは無言で、胸に掛かる転移石のネックレスを外すとエリーゼの足元に投げる。
エリーゼはそれを踏んで粉砕した。
「さっきからハエみたいに俺の回りをブンブン飛びやがって。
うぜーんだよババァ。」
「……ミランダ様をお離し下さい。エリーゼ様。
わたくしは、もう貴女を追う事は出来ませんわ。
お一人で、お逃げ下さいまし。」
エリーゼは首に腕を回したままのミランダをチラッと見た。
よく考えれば、アセレーナが追って来なくてもサイモンやマグス、ディアーナが追って来るかも知れない。
ミランダはそれら全てに対して有効な人質だ。
「やなこった。」
エリーゼはミランダの首を拘束したまま、宿から姿を消した。
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