【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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95話◆神が身近過ぎて神だと思えない件について。

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神聖国が戦争を起こすにあたり


戦争を有利に進める為の駒として手に入れようとして、候補に挙げた人物が何人か居る。


長年、戦乱というものが無かったこの辺りでは、戦争での英雄は歳をとっている者ばかりで既に死んでる者も多く、生きていても平和ボケしている者ばかりで戦争の駒にはならない者ばかりだったと、マグスは語った。



「30年近く前の戦争の時に、武神やら英雄って呼ばれた奴等は当時が騎士団長とか役職についていたオッサンが多くてな。

今、会ってみるとジジィばかりで戦争には何の役にも立ちゃしねぇ。」



マグスの為に用意された貴賓室に勝手に入って来てソファーに座り、マグスの為に用意された菓子と茶を勝手にたいらげる。

そんなディアーナの姿を、頭にカニを二匹乗せたままのマグスが呆れる様に眺めていた。



「いいのかい?敵国にそんな情報を与えてしまって。」



スティーヴンはニコニコと微笑んだままマグスの話しを聞き続ける。



「いいも何も俺は捕虜だし、それ位は答えとくわ。

って言うか、もううちの国に勝ち目はネェよ。

本物の神さんが居る国に、どうやって勝てる?

しかも、その神さんが容赦ねぇ。

……強いっつーより、色んな意味で容赦ねぇ。」



マグスは女神によって腹にワンパンを二回受け、肩を踏まれ顔面に青アザが出来る位に床に顔を押し付けられ、頭にカニをみっちり乗せられ、せっかく用意された菓子と茶を奪われた。

マグスが両手で顔を覆って項垂れる。



「もう、勘弁して下さい……マジで。」



理不尽過ぎて泣ける。

その理不尽極まりない相手が、神であり不死身ですとか、反抗する意思さえ無くして心がバッキバキに折れる。



「…で、現役で強い者、となると浮かぶのが神の御子と月の聖女だったワケだね。

エリーゼ嬢はこの国の者だからね。

諸外国の現在の強者なんて分からないだろうし。」



「……あのスベタ、銀狼鬼にもこだわってるよ。

もうジジィだろうからほっとけって言ってんのにな。」



スティーヴンとマグスの会話を聞いていたディアーナが菓子を飲み込んで口を出す。



「あの女は、そういう2つ名を持つキャラが好きなのよ。

あと、正体不明とか最凶のとか、そーゆーレアなキャラが好きなの。

ちなみに私はアルティメットなのよね。」



マグスとスティーヴンが、意味が分からないと「はて?」と言いたげな表情をしているのを無視してディアーナが立ち上がる。



「さて、また遊びに行こうっと!

謎の剣士の銀狼鬼と、どんな姿かも知らない神の御子をどうやって駒にする気なのかしら。

うふふ。これ、お土産。」



ニヤニヤと笑いながら、ディアーナが部屋から出て行った。

マグスの頭にヤドカリを一匹乗せて。













同日深夜



ラジェアベリア国のヒールナー伯爵邸に、二人組の賊が侵入した。



目的は銀狼鬼に関する情報を得る事。

あるいは、本人を捕獲する事。




「うふふ……ちまたでは、亡くなったと噂されているヒールナー伯爵夫人……
貴女が銀狼鬼なのでしょう?

まさか女性とは思わなかったわ…しかも、まだご存命とは…。」



深夜の温室、ランタンだけが灯された暗い空間に現れたエリーゼは、扇で口元を隠しながら嗤う。



「エリーゼさんでしたっけ?私に何の用かしら?

まさか、私を捕らえに来たとか言うんじゃないでしょうね?

見ての通り、ただのオバサンよ。もう、若くないのでね。

役には立たないわよ。」



「まだ40代でしょう?それ位なら充分動かせるわ。」



呆れ気味のグレイスの返事に対するエリーゼの答えは、身を守らせる事を前提としない、肉体を操り武器を手に斬り込むだけの道具にする気だと語っている。



「それで、私を捕らえる為に馬鹿息子を連れて来たのね。

なぁに?サイモンには貴女の魔法とやらが効いちゃってるの?」


グレイスの前に剣を持って立つサイモンに、グレイスが笑った。


「わたくしの魔力には、そう簡単には抗えないのよ!!

さぁ、サイモン!!

多少傷つけても構わないわ!あの女を捕らえて!!」


黒い隠密装束のままのサイモンが、剣を抜きグレイスに斬り掛かる。

グレイスは温室のテーブル前の椅子に腰掛けたまま動かなかった。



「私、銀狼鬼とは言ってもねぇ

現役騎士のサイモンに敵う程の剣の使い手じゃあないのよね。」



やれやれとばかりに紅茶を口にしたグレイスに代わりサイモンの剣を受け止めたのは、金色の長い髪を緩く結んだ翡翠の瞳の剣士。



瞬き無く開いたままの意思の感じられない瞳のサイモンは、退く事をせず、受け止められた剣をそのまま振り下ろそうと力任せに押して来る。



「……頭ワリィ戦い方させんなよ。

勿体ないだろ?サイモンが。」



金色の髪の剣士、レオンハルトはサイモンの剣を受け止めた剣を片手だけで持ち、空いた片手で頭をポリポリ掻く。

そして、退屈そうにアクビをした。



「あらやだ、そんな力だけでごり押しするような肉体の使い方されたら私なんて何の役にも立たないわよ?

か弱いレディですもの。

うフフ…もういいわ、母に剣を向ける様な未熟者は、顔を洗って出直してらっしゃい。」



「だとよ。んじゃ、またな。」



グレイスの言葉を合図に、レオンハルトは片手持ちのままの剣で、サイモンの剣を弾みを付けて強く押し返した。

サイモンの身体が後方に飛び、後ろに立つエリーゼも巻き込んで花壇に倒れる。



「きゃあ!!」



サイモンの下敷きになったエリーゼの「きゃあ」に、エリーゼの前世が男だと知っているレオンハルトが、オフィーリア姿の自分を棚上げしてドン引きする。

すっごく冷たい目でエリーゼを見るレオンハルトに、激昂したエリーゼが怒鳴り散らした。



「お前、一体何者なのよ!!

何なの!?その人並み外れた力は!!」



「お前だぁ?むしるぞ!!

……俺はレオンハルト。神の御子と呼ばれている。

ディアーナの夫だ。」


エリーゼの眉がピクッと上がる。


エリーゼが駒にしたいと思っていた神の御子と、その妻の月の聖女。


月の聖女の正体が、にっくき悪役令嬢ディアーナだと知り、洗脳して操ろうとしたが魔法が効かず失敗した。


その女の夫が目の前に居る。


こいつを操れば、どんなにディアーナを苦しませる事が出来るのだろう。



「頭悪そうなお前に言っておくが、ディアーナ同様に俺も魔法効かないからな?

俺を魔法で操ろうとか無理ゲーだから。」



「うるさい!無理ゲーとか言うんじゃ……!!!」



激昂したエリーゼが、自分が口にした単語に気付いて止まった。


無理ゲーなんて言葉は、こちらの世界には無い。

そんな言葉を知っている。コイツも転生者なのか?

そんな疑問がそのまま顔に出た。


「違うな。俺は転生者ではない。この世界出身の転移者だ。

俺達を敵に回すのは無理ゲーだから、やめておけ。」



レオンハルトがニヤニヤしながら花壇に埋もれたエリーゼを見下ろして言えば、頭に血の昇ったエリーゼがレオンハルトを睨んだままサイモンを連れて花壇から姿を消した。


「忠告聞かず…か。ホントに頭ワリィ小僧だな。

……グレイス、サイモンは小僧に預けたまんまだが良かったのか?」



「いいわよ。あの子そう簡単には死なないし。

それより、私を守りに来てくれた噂の『神の御子様』が、強い人間…ではなかった事に驚いたわよ。

神様なんて、人の世に降りて来ないもんでしょ?普通は。」



レオンハルトは苦笑する。



「まぁ、また何かありそうなら来るわ。

この世界を、あの小僧の好き勝手にだけは、させらんねーからな。」



レオンハルトは温室から一瞬で姿を消した。














ミランダは困り果てていた。


ミランダがアホ国と呼んだ神聖国に着いたものの、サイモンの姿が見当たらない。


ジャンセンも姿を現さないのだから、ラジェアベリアの公務員として仕事に勤しんでいるのだろうとは思うが、これでは目的の、推しをストーカー、萌え姿を覗き見が出来ない。



神聖国自体は至って平和で、ミランダ的には巨大なフィギュアの並ぶこの街は、ある意味楽しい。



なので、街中の通りにあるベンチに座って、リンゴの搾り立て果汁なんか買って飲んでいたりする。



「奥様、また変な輩に拐われたりしたら大変ですよ。」



顔の傷を隠す様に、白いテープの様な物を口端や目元に貼ったカチュアがミランダの前に立つ。



これはこれで…ヤンチャ系の美少年みたいでカッコええ……。



「グリーンヤンキーはもう現れないと思う。

ディアーナにこてんぱんにヤられちゃっていたし、何か変な糸を切ったと言ってたし。」



ミランダは指でカニみたいにチョキチョキと鋏のジェスチャーをしてカチュアに見せる。



「ああ…魔力を繋げる糸みたいなものがある様ですね…。

魔法の使えない私には、まだそれを感じる事は出来ないのですが。まだまだですね。」



そうは言うものの、日増しに傷を増やすカチュアではあるがミランダから見ても増えた傷の分だけ強くなったのが分かる。

まだまだと言いつつも、どこか自信に満ちていて、数日前までの自信喪失したかの様な暗さは無い。



「カチュア、何か吹っ切れた?清々しー顔をしてる。」



「自分がまだまだ弱い事を認識しただけですよ。

弱いなら、強くなればいい。それだけです。

奥様も、そういう言い方をなさるでしょう?」



そうだっけ?そんな顔で笑って誤魔化すミランダ。



「だけど、スチュワートさん急に鬼コーチになったよね。

カチュア、毎日ボコボコにされてるけど大丈夫?」



カチュアは笑って頷く。

強くなりたいという思いの強いカチュアにとっては、戦場の狼からの指導は願ったり叶ったりの様だ。



いい顔をしてる、カチュア!……もう一人、いい顔をしてるなぁと思っていたメイが見当たらないんだけど……。
と、ミランダがキョロキョロとメイの姿を探す。



「メイでしたら……朝早くから恐ろしい顔をして、どっか飛び出して行きましたよ?」



「飛び出して行きました?恐ろしい顔をして?宿屋から?朝早く?何で?」



さぁ?と肩を竦めるカチュアに、真似をしてミランダも肩を竦める。



「こないだは、すごく穏やかないい顔をしていたのにな…メイ。

また、スファイ同行が決まった時の唸りっぱなしの狂犬豆柴になってんの?」



ミランダとカチュアはベンチに座って、神聖国の平和な街並を見つつ、二人で首を傾げた。

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