【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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77話◆その者にとっては、悪役令嬢と馬の骨。

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カチュアのお姉さんと別れた後、わたし達は馬に乗り次の目的地に向かった。


馬を歩かせながら、わたしはカチュアに訊ねる。


「カチュアのお母様が…サイモンを恨んでいて、わたしに何かして来たとしたら…どうするの?」


「何か、の内容にもよりますが奥様に危害を加える様な真似をするなら許しません。
如何なる理由があろうとも斬り捨てます。」


淡々と答えたカチュアに、わたしは思わず焦る。

だって実のお母さんでしょ?わたしを犯そうとした輩とは違うじゃないの!それを斬り捨てるだなんて!



「駄目でしょ!?そんなの!」


「駄目じゃありません。
私が母を斬り捨てられなくとも、捕縛された先は牢獄か処刑台です。
平民の女が正当な理由もなく伯爵家の者に危害を加えようとした。それは重罪です。」


わたしは、それ以上何も言えなくなってしまった。

カチュアの顔が余りにも無感情で、カチュアの母に対する愛を一切感じなかったから。


「父と同じように大人しく、下町で乞食みたいにしていれば…もう少し長生き出来たかも知れませんがね。」


カチュアはもう、母親が犯罪者になっているのだと決め付けている。

サイモンを恨んで姿を消したからって、犯罪者になるとは限らないんじゃないの?


「母親であろうがなかろうが、私の奥様を傷付けようとするならば敵です。容赦はしません。」



………私の奥様って………どぉゆー事かしら!?











ラジェアベリア国、深夜の王城━━



この国の王太子であり第一王子のスティーヴンは寝室のバルコニーにて月を眺めながら寝酒にと口当たりの軽いワインを飲んでいた。


ワインを口に含み、空に煌々と輝く美しい月を見ていると溜息がこぼれる。



「はぁぁあ……月……か」



藍の夜空に、白く冷たく輝く月は美しく

月の聖女、月の女神と呼ばれるディアーナを連想させる。



「……うわぁ……ディアーナ嬢、また突っ走って余計な事してないだろうな……はぁぁあ……嫌だ嫌だ、考えるだけで悪酔いしそうだ。」



今のスティーヴンにとって月とはもう、不安材料でしかないディアーナを思い出すきっかけにしかならない。

美しい月を愛でる様な感情はもう、とうの昔に何処かに置いて来た。



「……戦争……?そんな物が本当に起こってしまうのか?…」



何と現実感の無い言葉だろう…神の居る国だと言われる我が国に戦争を仕掛ける様な国があるなど………

そう、長く平和なこの国で戦争が始まるなんて、現実味が無い。


なのに、なぜこうもハッキリと、嬉々としたディアーナ嬢が暴れ回る映像だけは頭に思い描かれてしまうのだろう。



「ああ…胃が痛い……」



「スティーヴン……夜風は冷たいわ、風邪をひくわよ?」



胃の辺りを撫でさするスティーヴンの居るバルコニーの扉が開き、薄手のナイトドレスを身に着けた王太子妃のウィリアが夫であるスティーヴンの傍に歩み寄る。



「ウィリアこそ…そんな寒い格好でこんな所に…風邪をひくだろう?……私を呼びに来たのかい?」



薄手のナイトドレスの下にある、ウィリアの豊満な乳房はパンっと張ったドレスの薄い布を透けさせ、薄く色付く胸の先が見えてしまっている。

スティーヴンは平静さを装いながら、ワインを口に含んだ。


「呼びに?いいえ。
わたくし、スティーヴンとアオカンをしようかと思ってバルコニーに来ましたの。」



ブフォー!!!



スティーヴンがワインを毒霧のごとく口から噴射した。


「あ、アオカン!?な、何で急に!?」


「スティーヴンは知ってますのね、アオカン。
……この世界で生まれた言葉ではないそうですけど……レオンハルト様に聞いたのでしょう?
うふふ…殿方同士でも、そんな話はなさるのね…。」


ウィリアはナイトドレスの腰の帯をほどいてスティーヴンの前に立つ。

豊満な乳房に細い腰、丸みを帯びかつクンと上がった臀部。

ウィリアの身体は女性らしく美しく、そして男性を魅了するような、セックスシンボルと言える様ないやらしい身体をしている。

レオンハルト命名、豊満我が儘ボディ。

そんな肢体が今、スティーヴンの目の前に下履き一枚だけの姿で開かれている。


「ああ…こんな場所で…君を抱くのか…?それはそれで……」


何だか興奮する。それがアオカン?
初めての経験だが悪くないかも知れない……。


「……と、思っていたのですけれど……わたくし、先ほど『友人』の一人から、ディアーナ様について探りを入れられましたの。
……とても不愉快でしたわ。」


ウィリアの乳房に延ばしけかけたスティーヴンの手が止まる。


「その友人とは、クロスバート侯爵令嬢エリーゼかな?」


「ええ、わたくしの『自称友人』の第一人者ですわ。」












王城の中庭にて、侍女を付き従え読書をしていたウィリアの前に現れたエリーゼはカーテシーをしてウィリアに挨拶をした。


「王太子妃殿下ウィリア様…ご機嫌麗しゅうございます。
先日は、旧くからのご友人の方々との楽しい時間をお過ごしになられたとお聞きしましたわ。
……わたくし、遠くからお姿を拝見したのですけれど……あの、青い御髪の方は……ディングレィ侯爵令嬢ディアーナ様ではございませんか?」


「…エリーゼ嬢……ディアーナ様をご存知なのですか?…」


扇を持たないウィリアは手にした本で口元を隠し尋ね返した。



「ええ、少し……
ウィリア様にはお伝えしにくいのですが…スティーヴン王太子殿下の婚約者でいらしたかと……
余り良い話は聞かない方でしたわ。」



エリーゼは申し訳無さげに眉尻を下げ、だが口元には嘲笑にも似た笑みを浮かべて探る様にウィリアからディアーナの情報を引き出そうとする。


「そんな方が、王城に出入りしており、ウィリア様と親しくなさっているなんて…ウィリア様、謀られておりません?
わたくし、ウィリア様の事が心配ですのよ…。」


「ホホホホ!エリーゼ嬢、わたくしを心配してくれて嬉しいわ、でもディアーナ様はわたくしの姉のような存在。ご心配は無用でしてよ。
もう、お話は終わりですわね。ごきげんよう。」



口元を隠したままウィリアは高笑いし、エリーゼを残して中庭を離れた。

振り返ってエリーゼの顔を見る事はしなかったが、小声で呟かれた悪態を耳にした。




「このアマ…殿下はお前みたいな馬の骨なんかとくっつく予定じゃなかったんだよ…」













「……そんな事が……」



「ええ、ありましたのよ。
うふふ…スティーヴンは、誰とくっつく予定だったと言うのでしょうね。」


スティーヴンは自身の膝の上に向かい合う格好で座る、あられも無い姿のウィリアに、時々意識が逸らされてしまう。

話の途中で、何度かたわわに揺れる胸に触れようとしてペチリと手の甲を叩かれた。



「ディアーナ嬢がディングレィ侯爵令嬢だったという記憶は、ほとんどの人の記憶から消されているハズだ。
ジャンセンの野郎がそうしたからな。」


目の前の美食を、お預けされている苛立ちから思わず創造神であるジャンセンを野郎呼びしてしまう。


「例外がありますでしょ?わたくしを含めた王族の者は、ディアーナ様が人であった時の記憶を消されませんでしたわ。」


「ああ、それともうひとつ例外がある。………ミランダ嬢も、ディアーナ嬢がディングレィ侯爵令嬢だった事を覚えているらしい。
……ジャンセンが言うには、ディアーナ嬢の居た、あちらの世界から来た者からは記憶が消えなかったらしい。」



「まぁ……そうでしたの……でしたらエリーゼ嬢は……ふぁ…」



ウィリアがスティーヴンの膝から立ちあがり、ふわぁとアクビを出した。



「ウィリア……アオカンは…?」



「眠くなりましたの…今夜はやめておきますわ。」



「バルコニーでなくても!!寝室で今すぐ君を…!!」



「いやん…眠くなりましたのぉ…ムリですわぁ…お先にぃ…おやすみなさい。」



どこか幼い仕草で目を擦るウィリアは、ナイトドレスの帯を結び直し、バルコニーから寝室へと入って行った。



「そ、そんな!!私のこの…!この昂った気持ちと身体はどうしたらぁあ!!くっそぉ!!エリーゼぇ!!お前のせいかぁあ!!」



ヒールナー伯爵家が得た情報を把握しているスティーヴンは、ミランダを誘拐しようとしている者が居る事も、その者達がクロスバート侯爵家と何らかの関係がある事も把握している。



「何を企んでる…!つかもう、何も企んでなくても許せん!!うがぁあ!!」



初アオカンが急遽中止となった辛さに、暫くの間スティーヴンはバルコニーで吠えていた。

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