【R18】夜の帳に聖なる契り 『転生後の異世界で、腐女子のわたしがBLネタにしていた推しに喰われる漫画を描く罰ゲーム』

DAKUNちょめ

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24話◆王都を離れ、だだっ広い草原にて。

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「……お嬢さんに言われた通り、辱しめればいいんだよな?あの子を。」



幌馬車の荷台にミランダを押し込めた男は馬車の御者席に座り手綱を握ってメイに尋ねる。



「そうね…お嬢様が、殺さなければ何をしてもいいと仰有っていたわ。
もう、サイモン様の前に顔を出せなくなる位、世間に顔を出せなくて修道院に行くしか無い位に目茶苦茶にしてやってって。
……あと、自分で勝手に死んだのなら仕方ないってさ。ウフフ。」



御者席に座った男は、軽蔑の眼差しをメイに向ける。



「……可愛い顔をして、恐ろしい女だな……あんたも、お嬢さんも。」


「ほっといてちょうだい。じゃあ、私は邸に帰るわ。」



メイは馬車から離れ、ヒールナー伯爵邸に戻って行った。

男は馬車を走らせ、王都の門に向かう。



幌馬車の荷台は……貴族夫人、ついこの間までご令嬢だった少女が捕らえられているとは思えない程、騒がしい。



「こっちはこっちで、可愛い顔をして、恐ろしい女だな…獣並に暴れまくってるじゃん。」



男は独り言つと王都の中心部から逆方向に馬車を走らせた。

王都と城下町を囲む壁の一部が大きな門となっており、そこを越えれば王国内ではあるが、次の町や村までは、ただ街道と草原、森や林があるだけの土地が拡がる。



男とミランダを乗せた馬車は、王都から遠く離れて行き、草原を走っていた。











出て行った時と同じ、裏門から勝手口を通ってヒールナー邸に戻ったメイは、何事も無かったように侍女としての自身の仕事を始めた。



「おかえりなさい、メイ。
奥様に果物のお菓子はお渡し出来たのですか?」


不意に話し掛けられた言葉にビクッと身体が強張り、メイは恐る恐る声の主を見る。


「スチュワートさん…い、意味が分からないですぅ…
私、今日は奥様にお会いしてませんものぉ…。」


「そうですか。」


にこやかに微笑むスチュワートの隣に立つ、穏やかな笑顔をした老女の侍女頭は、笑顔のままメイの髪を鷲掴みした。


「痛い!痛い!な、なにするんですかぁ!!」


カフェオレブラウンのメイの髪がブチブチと引きちぎれる。

髪を引きちぎられたメイは頭を押さえ、涙目になって床にヘタリと座り込んだ。



「一度…ではありませんでしたね。貴女が奥様の美しい御髪おぐしを傷つけたのは…。」



床に落とされたメイのちぎられた髪を踏むスチュワートは、微笑みを絶やさぬまま、侍女頭の老女に目で合図をする。

老女は穏やかな笑顔を崩さないまま頷き、再びメイの髪を鷲掴みした。


「ば、ババア!!何するのよ!やめろぉ!」


暴れるメイを見て、スチュワートが微笑みながら話し掛けた。



「メイ、使用人が主を故意に傷付けるなど許される行為ではありません。罰を受けるのは当然です。
それとも、貴女の本当の主は貴女に傷付けられても黙って許してくれるような優しい方なのですか?」



床にヘタリ込んだまま、老女に髪を鷲掴みされているメイの前に、にこやかに微笑むスチュワートが立つ。



「そんな心の広い主ならば、貴女が犯した罪を代わりにあがなって下さいますかね…。
貴女の本当の主は誰なのですか?…教えて下さいませんか?
言っておきますが、どんな高貴な方の名前が出ようと、その方には罪を贖って貰います。
もう、髪を引きちぎる位では収まりませんよ。」


「わ、私は…!ヒールナー様以外の誰にも仕えてない…!」


「教える気はないと…いいんですよ、メイ。
今何も言わなくても。私、拷問は得意なので。
では皆さん、準備をお願いします。」


回りにいた、他の侍女や使用人達がバタバタと動き出す。


「ちょっと…ちょっと待ってよ!準備って何なの!」


「色々あるのですよ…場所を整え、器具を用意し…
私のお気に入りの爪を剥がす器具も揃えて貰いましょう。」


「や、やめてよ!私、何も知らない!」


スチュワートも他の誰もが、メイの言葉には耳を貸さずに黙々と何かしらの準備をしていく。

メイの髪を鷲掴みしている老女が、穏やかな笑顔のまま口を開いた。


「苦痛のあまり気がおかしくなったり、死ななければいいわねぇ。
爪が全て無くなっても、顔が半分焼かれても、生きていれば、いいことあるかも知れないもの。」


「っや、やめて!!言う!言うから…!痛い事はやめてぇ!!」


メイは身体中をガタガタ震えさせながら、青い顔色をして涙を流していた。


「ふむ、それは賢明な判断ですね…。
では、教えて貰いましょう。」



スチュワートは床に座り込んだまま震えるメイの手を紳士的に取り立ち上がらせ、エスコートするように部屋の中央にある椅子に座らせた。


「偽りを語っていると感じましたら、指を一本ずつ折らせて戴きますので、そのつもりで。」












王都を離れ街道からも逸れて馬車を走らせ、ただただ見渡す限り草原だけの場所に馬車が停まる。


馬車を停め、御者席に座ったままで男は、苦悶に満ちた表情をした。


街をふらついていた破落戸ごろつきみたいな自分に大金を渡し仕事を依頼してきた貴族の令嬢。

ヒールナー伯爵家に嫁いだばかりの令嬢を、ヒールナー伯爵家から追い出したいと。


「…あの子には、何の罪も無いのにな…」


見知らぬ男から辱しめを受けるなんて、高貴な令嬢ならば耐えられずに自ら死を選んだりするかも知れない。


目の前で死なれたりしたら寝覚めが悪い。

だが、仕事として受けてしまった以上は…やり遂げるしかないのか…。


男は静かになった荷台に目をやる。

幌が掛かっていて見えないが、先ほどまでの騒がしさが嘘のように静かになった。


まさか…悲観して、すでに自ら死を?


男が荷台の確認に向かう為に馬車から降りた。

その瞬間、



ドゴーーーン!!!



今まで生きて来た人生の中で、聞いた事も無い爆音が響いた。


「えっ!?えっ!?な、何だ!このデカイ音は!!
山が噴火したのか!?」


男が両耳を塞いで地面に尻をつく。

そんな男の前を、馬車の荷台から飛び出した少女が全速力で走り抜ける。



ドレスの裾を持ち、いそいそと…ではなく。


ドレスの裾は膝より上で切り揃えられ、生足あらわに貴族の令嬢が、大股開きで大爆走して行く。


「おりゃーー!!!」


男はしばらく茫然と、変な掛け声と共に走り去るミランダの後ろ姿を見ていたのだが


「ま、待て待て待て待て!!ちょっと待て!
何かが色々おかしい!!」


男は我に返ると、慌ててミランダの後を追う。


「待て!待てって!何なんだお前!何をした!
どうやって荷台から脱走を…!」



男がミランダに追い付き、手首を掴む。

ミランダは、男の太ももにローキックをかました。



「触んな!!とりゃー!!」


「いって!!何をしやがる!何だお前!それでも貴族の令嬢か!!」


男はミランダの両手首を掴み、向かい合った状態で互いの顔を睨み合う。


「貴族だとか貴族じゃないとか、関係あるか!
か弱い乙女を食っちゃおうとするケダモノなんか、使いモンにならなくしてやるわ!!」


暴れるミランダは手を掴まれたまま身を低くして、サイモンにもかました事があるラガーマン、タックルを男にお見舞いする。


「うわ…!!」


男とミランダの手が繋がった状態で、男の上にミランダが重なるように、二人絡んで倒れた。

ミランダの生足の間に、男の片足が挟み込まれた格好になっている。


「…っ!!」


男の方が顔を赤くして、照れたようにミランダから顔をそむけてしまった。


ミランダは下敷きにしている男の太ももを跨いだまま、男の顔を見下ろすようにジイッと見る。


針葉樹のように、深い暗い緑色の髪に、珍しい赤と青のオッドアイ。


「……あれ…?まさか…スファイ?」


男は、依頼主にさえ明かしてなかった自身の名前を呼ばれ、驚愕の表情をした。



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