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第7章【金の髪に翡翠の瞳。天使の様な乙女ゲーム主人公オフィーリア】
140#最終話。テオドール王国の悲劇は喜劇となり終幕。
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建国記念日のフィナーレ、大舞踏会は大波乱のままに幕を下ろし、学園に来た者は様々な表情をして帰路についた。
デュランとロザリンドの、年の差を越えたドラマチックなプロポーズに溜息をついてウットリした表情で帰路につく少女達と、なぜか年配の女性達。
ロザリンドの芝居に乗って、フローラを苛める事に便乗していた学園の者達は青ざめた顔をして、ワルト達からも距離を置きつつ帰路につく。
この後、自主的に退学した者もいた。
舞踏会に参加した貴族達の中には、甘い汁を吸うつもりでいたハワード派の者も多く居り、国王どころか王太子でさえ無くなったハワードを見限りたいが、この場でどう動いて良いか分からない。
新国王のランドルに取り入ろうと近付けば、王妃になったフローラが「あぁ!?」と鋭いガンを飛ばして来る。
仕方なく、その場は諦めて帰路につくしかなかった。
学園のホールに残った王族と、テイラー公爵夫妻やロジャー男爵夫妻。
他、今回の騒動の関係者達を残し、オフィーリアとディアーナはその場を離れた。
「何だか、いい感じにまとまった…と解釈して良いのかな、これは。」
フローラと同じ、ピンクのドレスを着たままのオフィーリアがディアーナに微笑み掛ける。
「いんじゃないの?私としては、暴れ足りないけど。
ぶっ殺したろか!的な奴、いなかったもんね。
私には平和過ぎるわ。」
ディアーナはくすねて来た料理の盛られた大皿を手に持ったまま、ヒョイパクと延々食べ続けている。
「ロザマンジが生粋の悪役令嬢じゃなかったのよね~根は優しい女の子だったし。
フローラのが強いわ、つかレディースよねフローラは。」
「だな、結局俺が学園でスケバンと言われてしまった行動とフローラの本質が、余り変わらんみたいだし。」
二人は学園ダンスホールの高い屋根の上に座り、夜空を見上げ会話を続けた。
途中、ディアーナが登場の際に外した明かり取りの窓枠をはめ直す。
「お疲れさん、二人とも。」
二人が居る屋根の上に、白衣を纏い眼鏡を掛けたジャンセンが降り立つ。
「しっっ!!しょおお!!白衣!眼鏡!」
目を輝かせてジャンセンに飛び付きたがるディアーナを、オフィーリアが背後から羽交い締めにして止める。
「抱き付くのも舐めるのも俺だけにしとけって!!
親父も、その格好やめろ!わざとだろ!!
娘の萌えポイント押さえやがって!!」
ジャンセンが、まぁね。とニヤリと笑いながら呟いて白衣と眼鏡を片付けた。
「白衣と眼鏡ぇ…むぅ…もっと見たかった。」
名残惜しそうに呟くディアーナの頭をポンポンと叩くジャンセンに、触るのもやめろと嫉妬深いオフィーリアがディアーナの身体を引き寄せる。
「親父、今回はえらく回りくどい事をさせたな。
つか、これ位の国の揉め事、神が手を出すような事件じゃないだろ?
いくら、フローラが俺に似てウケたからって。」
隣でディアーナが、そんな理由で始まったんだ?今回の騒動。みたいな顔でヘラリと笑っている。
「フローラに会って、ウケたのは本当。仲良くなったもんでダベっていたら面白い話聞けたし、だったら、こんな脚本はどう?と脚本提供した。
その際、フローラの背景を全て把握したもんで、面白そうだからお前ら巻き込んでてんやわんやの喜劇に仕上げた。」
「フローラが魅了に掛からない事も知ってたんだよな…親父は。」
淡々と説明していくジャンセンに、はぁ…と溜息をつくオフィーリアは、ビシッとジャンセンを指差した。
「それだけじゃねーよな!今回の親父の目的は、この国がスティーヴンとこと国交を結ぶ事だろう!!
カカオの流通、チョコレートの普及!しかもスティーヴンの国の産業発展の為じゃなく、最終的にはディアーナが世界各地でいつでもどこでもチョコ菓子が食えるような世界にする為に!!
どんだけ娘に甘いパパやってんだよ!!あんたは!!」
「アホでもメスのゴリラでも、娘ってのは可愛いもんだ。」
「アホとゴリラは余計でしょうよ!!師匠!!」
ホールの屋根の上では神の一族が親子ゲンカをしたまま夜を明かしたが、太陽が出る頃には三人の姿はその場から消えていた。
▼
▼
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三ヶ月後
ディアーナとレオンハルトが再びテオドール王国を訪ねた。
何の前触れもアポイントメントも無く、転移魔法でいきなり玉座の間に居るランドルとフローラの前に二人は現れた。
「だ、誰だ!?……ディアル?ディアーナ嬢!?……と……」
ランドルはディアーナが寄り添う様に立つ金髪の青年に見覚えは無かったが、何かもう、雰囲気だけで分かってしまった。
細マッチョだし、ディアーナにベッタリだし、妙に偉そう。
「……貴方は…オフィーリアか?」
「よく分かったな!!ランドル!同じベッドで寝た仲だもんな!!」
「一緒には寝てないし。俺のベッドがオッサンみたいなオフィーリアに占領されていただけだし。」
思い出しただけでランドルが暗くなる。だが……
代々国の頂点となる者だけに伝わる神の御子の存在。
国王となったランドルと王妃になったフローラは、ディアーナとレオンハルトが神の一族であると、もう知っていた。
二人は膝を落とし、頭を下げる。
「神の御子レオンハルト様、月の聖女ディアーナ様、その節は我が国の為にご尽力下さり、ありがとうございました。
そして、数々の無礼をお許し下さい。」
「いや!ランドセルと私達って、マブダチじゃん!!今さら堅苦しいのはなーし!!」
ディアーナは並んで頭を下げる二人の真ん中にどーん!とダイブし、二人の肩を抱く。
「余り絡んでませんが、わたくしもマブダチでよろしいんですの?ディアーナ様。」
フローラがクスリと笑って尋ねれば、ディアーナがニンマリ笑う。
「フローラは旅人の真似事していたおトンと友達なんでしょ?
それにフローラの姿は、私から婚約者を奪ったくせに、私の夫になっちゃったオフィーリアと同じだから、何か好き!」
「まぁ、月の聖女のディアーナ様に好きなんて言われたらわたくし…何だかときめいてしまいますわよ?」
顔を傾けたフローラが、ディアーナの唇の端にチュと軽いキスをした。
「「はぁぁ!?」」
レオンハルトとランドルが同時に大きな声を上げ、ディアーナは固まってしまった。
▼
▼
▼
王城を離れたディアーナとレオンハルトは、港町に向かった。
「親父に言われていた事が、分かったわ。
オフィーリアとほぼ同じ姿を持つフローラが俺に似ていると言っていたのが魔力抵抗力の強さだけでなく、性格も俺寄りだっての。」
「オフィーリアと同じ顔でチュウとか…焦るわ…はぁあ…」
港町に着いた二人は、拡張工事が始まった場所に向かう途中でデュランとロザリンドに会った。
「チャラ海賊王!マンジ!久しぶり!!」
二人はディアーナの顔を見るなり「げっ!!」と言いそうな顔をする。
「あんたね!いい加減に名前覚えなさいよ!いくら本物の女神でもね!言わせて貰うわよ!!」
「ロザリー、この人だけは何を言っても無駄だから諦めなさい。俺達は諦めた。」
ディアーナに食って掛かりそうなロザリンドをデュランがなだめ、二人の背後にいるデュランの側近三人と、ジージョが苦笑しながら頷いている。
デュランは海賊のアジトとなっていた島を中心に、テオドール王国の海洋に浮かぶ島を統治する辺境伯となった。
他の領主や貴族と共に港を拡張し、造船所も作り、隠居して郊外にいたロザリンドの曾祖父を相談役として島に迎え入れた。
「…分かってますわ。腹が立ちますけど、感謝はしてますわよ。……逢えて良かったですわ、貴女に。
貴女が居たから…わたくしはデュラン様と夫婦に……で、でも!怒ってますのよ!」
頬を染めながらプイと横を向くロザリンドに、ディアーナとデュランがほんわかとした笑顔になる。
何かカワエエ。
「ランドセルとフローラに負けない位にラブラブね~!
二人仲良く、私の教えた技を掛け合ってちょうだい!
夜、ベッドの上で。」
ロザリンドとデュランが、それぞれに自分の掛けられた技を思い出した。
「「あれ、ベッドの上では無理だから!!」」
▼
▼
▼
テオドール王国は新しい国王が生まれ、オフィーリアの宣言の通り王太子が居なくなった。
ランドルとフローラの国王夫妻は、この国で決められていた、テイラー公爵家に所縁のある令嬢しか王太子に嫁げないというしきたりを無くした。
海洋国家となったこの国は諸外国との国交を拡げ、友好国となったラジェアベリアとは多くの人が行き来し、互いの国の文化交流を進めた。
大使となったハワードは、よく学びよく働き、この先ラジェアベリアで伴侶を見つけ、テオドールには戻らずラジェアベリアに永住する事となる。
王城の兵士となったワルト達は、後にランドル国王夫妻の近衛兵となり、ワルトは側近となる。
夫妻の意見が対立した時は、どちらかと言うと国王より王妃寄りになってしまうのだが。
素になると「姉御」と呟いて震えてしまうのは、中々直らなかったようだ。
デュランとロザリンドは年の差を感じさせない仲睦まじい夫婦なのだが、その姿に当てられたのかジージョがデュランの側近スリーと夫婦になった。
ジージョの父のツー、アルフォンスが暴れて大変な事になったが、ジージョが黙らせる為に父に卍固めをお見舞いしておとなしくさせ、二人は夫婦となった。
長く独り身だったワンも妻を娶った。
寮母から罪人扱いで島に連れて来られたエティロールが生きた屍のようになり、見かねたワンが慰めている内に何となく、そうなっちゃった的な。
▼
▼
「港町の警備はゴロー達がやってるみたいだし、先代国王夫妻は、ハワードのお母さんの別荘で過ごしているみたいね。
国王より、王妃の方が喜んでいるみたい。大好きなお姉さんの生前の肖像画に囲まれて。」
「殺人事件の首謀者だったリッチンソンは投獄されたし、商会も無くなった。
ハワードの犠牲になった自刃した騎士の家族は辛い目にあってしまったが、多額の補償金が出てるようだから墓を立て、家族皆で兄の魂を慰めてくらしい。あの子ももう命を捨てたりするような事にはならないだろう…」
ディアーナとレオンハルトは遠い場所からテオドール王国を眺めていた。
悠久の時を生きる二人には、通りすがりのほんの僅かな時間関わっただけの出来事。
「でもまぁ、楽しかったし忘れないわよ。きっと。」
「そうだな、次はランドルやロザリンドに子どもが出来た位に見に来るか?10年後位に。」
「いいわね、その頃にはこの国にもチョコレート菓子増えてるかしら?どう思う?レオン………………。」
レオンハルトの方を向いたディアーナの前に立つオフィーリアに、ディアーナのテンションが駄々下がる。
「きっと…増えてますわ…そして、わたくし達の関係も……スッゴい事になってましてよ!?」
オフィーリアに手を握りしめられたディアーナの身体が逃げる。
「なっとらん!無理だから!離せっつの!!」
「あん!逃がしませんわ!ディアーナ様!!」
オフィーリアの手を振り払い猛スピードで走り去るディアーナと、それを追うオフィーリア。
テオドール王国の今に納得した二人は、そのままこの国から姿を消した。
だが神の一族である二人でも気付かなかった……。
後にテオドール王国の建国記念日にまつわる歴史書に、二人の美少女の神が降臨したと記される事を。
その神の呼び名が後世の人々に混乱を招く事を。
━━━金の髪の天使のごとき姿の美しき少女オフィーリア
夜空のような藍の髪の暴れ女神ディアーナ
この二人の女神は変態夫婦であった。
著、テオドール王国8代目国王ランドル━━━
━━━━終わり━━━
続編として、
◆前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!
を書いてます。
ディアーナを暴れさせたくて書いたものです。
デュランとロザリンドの、年の差を越えたドラマチックなプロポーズに溜息をついてウットリした表情で帰路につく少女達と、なぜか年配の女性達。
ロザリンドの芝居に乗って、フローラを苛める事に便乗していた学園の者達は青ざめた顔をして、ワルト達からも距離を置きつつ帰路につく。
この後、自主的に退学した者もいた。
舞踏会に参加した貴族達の中には、甘い汁を吸うつもりでいたハワード派の者も多く居り、国王どころか王太子でさえ無くなったハワードを見限りたいが、この場でどう動いて良いか分からない。
新国王のランドルに取り入ろうと近付けば、王妃になったフローラが「あぁ!?」と鋭いガンを飛ばして来る。
仕方なく、その場は諦めて帰路につくしかなかった。
学園のホールに残った王族と、テイラー公爵夫妻やロジャー男爵夫妻。
他、今回の騒動の関係者達を残し、オフィーリアとディアーナはその場を離れた。
「何だか、いい感じにまとまった…と解釈して良いのかな、これは。」
フローラと同じ、ピンクのドレスを着たままのオフィーリアがディアーナに微笑み掛ける。
「いんじゃないの?私としては、暴れ足りないけど。
ぶっ殺したろか!的な奴、いなかったもんね。
私には平和過ぎるわ。」
ディアーナはくすねて来た料理の盛られた大皿を手に持ったまま、ヒョイパクと延々食べ続けている。
「ロザマンジが生粋の悪役令嬢じゃなかったのよね~根は優しい女の子だったし。
フローラのが強いわ、つかレディースよねフローラは。」
「だな、結局俺が学園でスケバンと言われてしまった行動とフローラの本質が、余り変わらんみたいだし。」
二人は学園ダンスホールの高い屋根の上に座り、夜空を見上げ会話を続けた。
途中、ディアーナが登場の際に外した明かり取りの窓枠をはめ直す。
「お疲れさん、二人とも。」
二人が居る屋根の上に、白衣を纏い眼鏡を掛けたジャンセンが降り立つ。
「しっっ!!しょおお!!白衣!眼鏡!」
目を輝かせてジャンセンに飛び付きたがるディアーナを、オフィーリアが背後から羽交い締めにして止める。
「抱き付くのも舐めるのも俺だけにしとけって!!
親父も、その格好やめろ!わざとだろ!!
娘の萌えポイント押さえやがって!!」
ジャンセンが、まぁね。とニヤリと笑いながら呟いて白衣と眼鏡を片付けた。
「白衣と眼鏡ぇ…むぅ…もっと見たかった。」
名残惜しそうに呟くディアーナの頭をポンポンと叩くジャンセンに、触るのもやめろと嫉妬深いオフィーリアがディアーナの身体を引き寄せる。
「親父、今回はえらく回りくどい事をさせたな。
つか、これ位の国の揉め事、神が手を出すような事件じゃないだろ?
いくら、フローラが俺に似てウケたからって。」
隣でディアーナが、そんな理由で始まったんだ?今回の騒動。みたいな顔でヘラリと笑っている。
「フローラに会って、ウケたのは本当。仲良くなったもんでダベっていたら面白い話聞けたし、だったら、こんな脚本はどう?と脚本提供した。
その際、フローラの背景を全て把握したもんで、面白そうだからお前ら巻き込んでてんやわんやの喜劇に仕上げた。」
「フローラが魅了に掛からない事も知ってたんだよな…親父は。」
淡々と説明していくジャンセンに、はぁ…と溜息をつくオフィーリアは、ビシッとジャンセンを指差した。
「それだけじゃねーよな!今回の親父の目的は、この国がスティーヴンとこと国交を結ぶ事だろう!!
カカオの流通、チョコレートの普及!しかもスティーヴンの国の産業発展の為じゃなく、最終的にはディアーナが世界各地でいつでもどこでもチョコ菓子が食えるような世界にする為に!!
どんだけ娘に甘いパパやってんだよ!!あんたは!!」
「アホでもメスのゴリラでも、娘ってのは可愛いもんだ。」
「アホとゴリラは余計でしょうよ!!師匠!!」
ホールの屋根の上では神の一族が親子ゲンカをしたまま夜を明かしたが、太陽が出る頃には三人の姿はその場から消えていた。
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三ヶ月後
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何の前触れもアポイントメントも無く、転移魔法でいきなり玉座の間に居るランドルとフローラの前に二人は現れた。
「だ、誰だ!?……ディアル?ディアーナ嬢!?……と……」
ランドルはディアーナが寄り添う様に立つ金髪の青年に見覚えは無かったが、何かもう、雰囲気だけで分かってしまった。
細マッチョだし、ディアーナにベッタリだし、妙に偉そう。
「……貴方は…オフィーリアか?」
「よく分かったな!!ランドル!同じベッドで寝た仲だもんな!!」
「一緒には寝てないし。俺のベッドがオッサンみたいなオフィーリアに占領されていただけだし。」
思い出しただけでランドルが暗くなる。だが……
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国王となったランドルと王妃になったフローラは、ディアーナとレオンハルトが神の一族であると、もう知っていた。
二人は膝を落とし、頭を下げる。
「神の御子レオンハルト様、月の聖女ディアーナ様、その節は我が国の為にご尽力下さり、ありがとうございました。
そして、数々の無礼をお許し下さい。」
「いや!ランドセルと私達って、マブダチじゃん!!今さら堅苦しいのはなーし!!」
ディアーナは並んで頭を下げる二人の真ん中にどーん!とダイブし、二人の肩を抱く。
「余り絡んでませんが、わたくしもマブダチでよろしいんですの?ディアーナ様。」
フローラがクスリと笑って尋ねれば、ディアーナがニンマリ笑う。
「フローラは旅人の真似事していたおトンと友達なんでしょ?
それにフローラの姿は、私から婚約者を奪ったくせに、私の夫になっちゃったオフィーリアと同じだから、何か好き!」
「まぁ、月の聖女のディアーナ様に好きなんて言われたらわたくし…何だかときめいてしまいますわよ?」
顔を傾けたフローラが、ディアーナの唇の端にチュと軽いキスをした。
「「はぁぁ!?」」
レオンハルトとランドルが同時に大きな声を上げ、ディアーナは固まってしまった。
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王城を離れたディアーナとレオンハルトは、港町に向かった。
「親父に言われていた事が、分かったわ。
オフィーリアとほぼ同じ姿を持つフローラが俺に似ていると言っていたのが魔力抵抗力の強さだけでなく、性格も俺寄りだっての。」
「オフィーリアと同じ顔でチュウとか…焦るわ…はぁあ…」
港町に着いた二人は、拡張工事が始まった場所に向かう途中でデュランとロザリンドに会った。
「チャラ海賊王!マンジ!久しぶり!!」
二人はディアーナの顔を見るなり「げっ!!」と言いそうな顔をする。
「あんたね!いい加減に名前覚えなさいよ!いくら本物の女神でもね!言わせて貰うわよ!!」
「ロザリー、この人だけは何を言っても無駄だから諦めなさい。俺達は諦めた。」
ディアーナに食って掛かりそうなロザリンドをデュランがなだめ、二人の背後にいるデュランの側近三人と、ジージョが苦笑しながら頷いている。
デュランは海賊のアジトとなっていた島を中心に、テオドール王国の海洋に浮かぶ島を統治する辺境伯となった。
他の領主や貴族と共に港を拡張し、造船所も作り、隠居して郊外にいたロザリンドの曾祖父を相談役として島に迎え入れた。
「…分かってますわ。腹が立ちますけど、感謝はしてますわよ。……逢えて良かったですわ、貴女に。
貴女が居たから…わたくしはデュラン様と夫婦に……で、でも!怒ってますのよ!」
頬を染めながらプイと横を向くロザリンドに、ディアーナとデュランがほんわかとした笑顔になる。
何かカワエエ。
「ランドセルとフローラに負けない位にラブラブね~!
二人仲良く、私の教えた技を掛け合ってちょうだい!
夜、ベッドの上で。」
ロザリンドとデュランが、それぞれに自分の掛けられた技を思い出した。
「「あれ、ベッドの上では無理だから!!」」
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テオドール王国は新しい国王が生まれ、オフィーリアの宣言の通り王太子が居なくなった。
ランドルとフローラの国王夫妻は、この国で決められていた、テイラー公爵家に所縁のある令嬢しか王太子に嫁げないというしきたりを無くした。
海洋国家となったこの国は諸外国との国交を拡げ、友好国となったラジェアベリアとは多くの人が行き来し、互いの国の文化交流を進めた。
大使となったハワードは、よく学びよく働き、この先ラジェアベリアで伴侶を見つけ、テオドールには戻らずラジェアベリアに永住する事となる。
王城の兵士となったワルト達は、後にランドル国王夫妻の近衛兵となり、ワルトは側近となる。
夫妻の意見が対立した時は、どちらかと言うと国王より王妃寄りになってしまうのだが。
素になると「姉御」と呟いて震えてしまうのは、中々直らなかったようだ。
デュランとロザリンドは年の差を感じさせない仲睦まじい夫婦なのだが、その姿に当てられたのかジージョがデュランの側近スリーと夫婦になった。
ジージョの父のツー、アルフォンスが暴れて大変な事になったが、ジージョが黙らせる為に父に卍固めをお見舞いしておとなしくさせ、二人は夫婦となった。
長く独り身だったワンも妻を娶った。
寮母から罪人扱いで島に連れて来られたエティロールが生きた屍のようになり、見かねたワンが慰めている内に何となく、そうなっちゃった的な。
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「港町の警備はゴロー達がやってるみたいだし、先代国王夫妻は、ハワードのお母さんの別荘で過ごしているみたいね。
国王より、王妃の方が喜んでいるみたい。大好きなお姉さんの生前の肖像画に囲まれて。」
「殺人事件の首謀者だったリッチンソンは投獄されたし、商会も無くなった。
ハワードの犠牲になった自刃した騎士の家族は辛い目にあってしまったが、多額の補償金が出てるようだから墓を立て、家族皆で兄の魂を慰めてくらしい。あの子ももう命を捨てたりするような事にはならないだろう…」
ディアーナとレオンハルトは遠い場所からテオドール王国を眺めていた。
悠久の時を生きる二人には、通りすがりのほんの僅かな時間関わっただけの出来事。
「でもまぁ、楽しかったし忘れないわよ。きっと。」
「そうだな、次はランドルやロザリンドに子どもが出来た位に見に来るか?10年後位に。」
「いいわね、その頃にはこの国にもチョコレート菓子増えてるかしら?どう思う?レオン………………。」
レオンハルトの方を向いたディアーナの前に立つオフィーリアに、ディアーナのテンションが駄々下がる。
「きっと…増えてますわ…そして、わたくし達の関係も……スッゴい事になってましてよ!?」
オフィーリアに手を握りしめられたディアーナの身体が逃げる。
「なっとらん!無理だから!離せっつの!!」
「あん!逃がしませんわ!ディアーナ様!!」
オフィーリアの手を振り払い猛スピードで走り去るディアーナと、それを追うオフィーリア。
テオドール王国の今に納得した二人は、そのままこの国から姿を消した。
だが神の一族である二人でも気付かなかった……。
後にテオドール王国の建国記念日にまつわる歴史書に、二人の美少女の神が降臨したと記される事を。
その神の呼び名が後世の人々に混乱を招く事を。
━━━金の髪の天使のごとき姿の美しき少女オフィーリア
夜空のような藍の髪の暴れ女神ディアーナ
この二人の女神は変態夫婦であった。
著、テオドール王国8代目国王ランドル━━━
━━━━終わり━━━
続編として、
◆前世女子高生の私は今、悪役令嬢を経て月の女神と呼ばれてますけどムカついたヤツはぶん殴る肉体派ですわ!
を書いてます。
ディアーナを暴れさせたくて書いたものです。
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