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第7章【金の髪に翡翠の瞳。天使の様な乙女ゲーム主人公オフィーリア】

132#眼鏡と白衣は萌え高アップ。

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ディアーナはロザリンドに扮し、港町を歩いていた。

ロザリンドの髪型のウィッグとロザリンドの瞳色のカラコンを着けて、不自然な筈なのだが学園の制服姿のままで



わたくし、ロザリンドでございます!



と言わんばかりの過剰アピールで、選挙候補者の様に笑顔を振り撒いて手を振り、港町を練り歩いている。

従者も無くたった一人で。



冷静な者が見れば「え、誰?頭がお花畑な人?」と思われる様な状態だが、建国記念日が近付き、手柄を獲たいが為になりふり構ってられない者には充分な餌になるだろうと、ロザリンド度60パーセントなディアーナは港町をミュージカルよろしく、軽やかにステップすら踏んで歩いていた。



「わたくし、港町が大好きでしてよ~?おほほほほ!」



無意味にお嬢様的な言葉遣いアピール。

手には串の刺さったソーセージ。



そんなお嬢様は、いやしねぇと突っ込みすら入りそうな佇まい。



そんな状態でディアーナは港町を歩き、鼻唄混じりに人気の少ない裏路地へと入って行った。



「あらん、やだん、迷子になりましたわん。」



狭い裏路地の前後を男達が二人ずつ塞ぐ。

ゴロツキの様ななりをしているが、もう少し良い所の出の様な雰囲気の男が四人。



貴族の私兵か、貴族御用達の傭兵なのか……最近ゴロツキのゴロー達と仲良くしてきたディアーナには、その雰囲気の違いが分かる様になっていた。



「何だかゴロツキどもの、若いネェちゃん可愛がったろかいって言うのよりは、ビジネスライクな雰囲気ね…
ロザリンド目的で雇われてるのね。」



狭い路地の前後から、一人ずつディアーナの方に歩いて来る。

もう一人ずつは路地の入り口を塞いだままで、人が来ないようにしている様だ。



「……あらん、やだん、四人いっぺんにお相手してもよろしいのに…わたくし、たくましい男性がたくさんお相手してくれた方が燃えるタイプでしてよ?」



男の手がディアーナの制服の胸元を掴み、ベリッと前を開く。

ブレザーのボタンが飛び、ブラウスに包まれた膨らみが現れた瞬間



ディアーナはブレザーの上着から腕を抜いて、脱いだ上着を男の腕に素早く巻き付けた。

そして上着ごと男の身体を引いて少し前によろめかせると



「はぁい!イかせてあげる!一人目昇天!!」



高く上げた脚を無遠慮に男の後頭部に叩きつけた。

男は無言のまま地面に俯せに倒れ、ヒクヒクしながら動かなくなった。



ディアーナの攻撃は見た目は普通の体術だが、確実に違うのはその攻撃力。

か細い少女が繰り出す拳や、蹴りなんて、痛くも痒くもないぜ!なんて思って手の平で軽く受けようものなら、そのまま身体が数メートル余裕で吹っ飛ぶ。



ディアーナは魔獣化した10メートルはあろうかという熊でさえ余裕で倒せる…無敵の月の女神…



そして、メスゴリラの女神である。





「ヘイヘイ!カモンだぜ!三人まとめて可愛がってやんぜ!かかってきな!」



何か知らんが下顎が出ている。

両手の平を前に出し「かかって来いや!」と指をクイクイ動かしアピールする。



路地を塞ぐ一人がディアーナの方に近付き、もう一人は違和感を感じたのか、指示をあおぐ為か報告の為か路地を離れようとした。

その男の行く手を阻む様に、三人の男が立っていた。



「どこに行くの~?誰の所に話しに行くの~?俺達の知ってる人~?教えて~?」



裏路地を離れようとした男は、三人の剣士に囲まれていた。

楽しそうに訊ねるスリーをよそに、ワンが顎髭を撫でながら少し考える仕草をし



「その顔…見た事があるな。
……あ…思い出したぞ、城に出入りしていたリッチンソン商会の者か。」



ワンの言葉を聞いてツーが頷いた。



「陸路を使い輸入した商品を高額販売していたリッチンソンは、港を大きくしたいデュラン殿下とは対立してましたからね。
もしかしたら、殿下が疑われたあの事件も…何か知っているのかも知れませんねぇ……」



「わ、私は!私は、そんな商会など知らん!いい女が一人歩いていたから、可愛がってやろうと……」


デュラン側近のツーが、何とも言えない複雑な顔をして男の背後を指差した。



「いい女か…いい女……仲間は既に可愛がって貰った様だな。」



男はツーが指差した、自身の背後を恐る恐る振り返る。

振り返った瞬間、目が大きく開き顎が外れるんじゃないかという程口が縦に開いた。



「さすが港町!大漁ですわぁん!」



ロザリンド姿のディアーナは、男達三人の胸ぐらを掴んだまま両手をばんざーい状態で、足が宙に浮いたままの男達を左右に揺らしながら楽しそうにキャピキャピと駆けて来た。



片側の腕には二人の男の胸ぐらが掴まれており、気を失ってはいるが互いの顔がくっついてブチュー状態になっていた。

デュランの側近三人は、憎むべき敵ではあるが余りにも不憫なその姿に、同じ男として思わず同情してしまう。



「ディアル君だけは……敵に回したくないですよねぇ」



苦笑いを浮かべながらスリーが呟けば、ワンとツーも激しく頷いた。











その後も暫く港町を歩いた偽ロザリンドは、普通に絡んで来たゴロツキを「んもぉ!ヤダァ!邪魔だゴラァ!」と笑顔でワンパンし撃退。



ロザリンドを目的としてそうな輩は散々可愛がってから捕らえてワン達に引き渡し、その様子を目の当たりにして違和感を覚えてその場を離れようとした輩は



「……どぉこぉ…行くのぉ……ねぇ……遊びましょう…よぉぉ……」



先回りした偽ロザリンドが、曲がり角から逃げた輩と同じ目線の高さに両目から上だけを出してケタケタケタと笑うと言う、ホラーの世界を味わわせ失禁させてから引き渡した。



「子悪党なエティロールはともかく、デュランが疑われている殺人容疑に関してそうなリッチンチンとか、ショボ貴族関係の奴らは一旦そちらで拘束して貰っといて、事が済んだら国に引き渡して、ちゃんと裁判させるべきね。」



「リッチンソンですね。何ですか、リッチンチンて……」



ディアーナの言葉に対しツーが少し頬を赤くしてボソボソと呟く。

スリーはツーの背後で爆笑中。



「ロザリンド目的の輩は、だいたい片付いたと思うのよね。
港町に馴染みの無い怪しい人物が居たら連絡するようゴローに頼んであるし、後はランドセル狙いの…
こちらは、命を狙われる可能性が大ね。
久しぶりに剣を振れてレオンハルト、喜ぶわね。」















ランドルの姿で学園に居るレオンハルトは、モヤモヤしていた。



確かに命を狙われているっぽい。



だが食べ物に毒が入っていたり、遠くから吹き矢の様なモノで狙われたり、ネチネチと毒を使った陰湿極まりない狙われ方。



「殺りたいなら、さっさと殺りに来いよ!!
まどろっこしいなぁ!!全員片っ端からプチったろか!!」



と、叫んで教室で暴れたかった。



自分を狙った毒使いが誰かも分かったし、他にランドルを狙って来るような気配は無いし……

毒使いを捕らえたら終わるのだが、それを捕らえるのを躊躇していたのは、毒使いから欲望の様な黒い感情や、魅了によるお花畑を感じなかったからだ。

どうしたら良いものかと……








「なぁ、何で俺の命を狙うの?ハワード……兄さんに頼まれた?」


ランドルに扮したレオンハルトは放課後の教室で、毒使いがランドルの教科書の隙間に毒の塗布された薄く小さな刃を差し込もうとしている現場を捉えた。

腕を掴まれて顔を上げたのは、上級生の校舎で雑用を任されている小間使いの若い女性で、怯えたようにランドルの顔を見上げた。



「わ、わ、私…私……こんな事っ…し…したくなかった…でも、兄が…」



化粧っ気も一切無く、やつれたような女性は荒れてカサついた肌にぼろぼろと涙を溢し、首を左右に振り続ける。



兄?兄って誰だ?


レオンハルト扮したランドルの顔が、はて?とキョトンとした表情になる。


「兄は…ハワード王太子殿下の側近をしておりました……
兄はハワード王太子殿下をお慕いする余り、ハワード殿下を王太子とすべく、自ら殺人を犯し、その罪をデュラン殿下に着せたのです」



レオンハルトが「あ、ランドルが話した過去話しに出て来た自刃したアイツか!」とポンと手の平に拳を置く。


何だか聞いた話しと微妙に違う気がする。



「君の兄上が殺人を犯していたとは知らなかったが……
犯人は君の兄上が指揮して処刑された海賊じゃなかったか?」



「私の兄は、デュラン殿下の命も狙っており…国王陛下の命をも……国王陛下を亡き者にした後は、その罪をデュラン殿下に……」



「おいおい、話が大事になり過ぎてやしないか?
一騎士が単独で国王……父上の命を奪うなんて、そう簡単なもんじゃないぞ?
お前の兄貴は、親父の命を狙っていたのはデュランって言ってなかったか?」



何だかランドル口調から遠退いてレオンハルト口調になっているが、女は違和感を感じる余裕も無いようだ。



「……今さら……何なんです……?」



レオンハルトに腕を掴まれたまま涙を流し、俯いていた女が顔を上げた。



「今さら?」



「私の兄が国王陛下を狙っていたと知っているのは、ランドル殿下だけじゃないですか!陛下に話すと!
貴方を殺さないと…!!兄の罪が明るみに出れば!
私達、家族は国賊として処刑される!!
年老いた祖父母や、両親、幼い二人の弟達も!!」



女は毒の塗布された小さな刃物を数枚自身の手の平に乗せた状態でレオンハルトに掴み掛かって来た。



「お前も死ぬだろ!!こんなやり方!!」



「私は!私一人ならば死んでもいいんです!!
ランドル殿下に恋慕していて実らぬ恋を悲観して、殿下を道連れに死んだと!!
国の転覆を謀った様な、国王陛下暗殺や王太子殿下暗殺より、よほど罪が軽いと!!
ハワード王太子殿下が仰有ってましたもの!!」



レオンハルトは刃物を手の平に握り込んだ女に両腕を掴まれた。

白いシャツの両腕部分に、赤く血の染みが出来ていく。

その血はすべて女の血で、不死身のレオンハルトは一切傷付いてはいない。



「………ごめんなさい……ランドル殿下………」



女がクラリと意識を失ってズルズルと崩れ落ちる様に倒れた。

レオンハルトは女の身体を抱き起こし、その身体から全ての毒を取り除いた。


「それ、ランドルだけじゃなくハワードも知ってるって事だろ…?そこには考えが及ばなかったのか。

ったく、ドラマチックに心中させる気だったのかよ……
ハワードにしたらランドルが死に、港での殺人事件の関係者である騎士の家族が死ぬのも好都合だったんだろうな。

……だがお嬢ちゃん、俺の勘じゃ殺人実行犯は兄貴じゃなさげだぜ?」



レオンハルトは憔悴しきった女の身体に少しばかり体力を回復させる魔法と、眠りの魔法を掛ける。

そして女の身体を抱き上げると医務室に向かった。







「すみません、この人貧血で倒れたみたいで…少し休ませてやって……………」


「どうぞ、そちらの空いたベッドに。」


「……………先生、彼女目を覚ましたら自殺しようとするかも知れません……」


「大丈夫ですよ、鎮静効果のある弱い魔法を掛けておきますから。」


「……………先生、旅人のふりはやめて、今度は男性保険医のふりですかい?」



「ふりだなんて失礼な。ちゃんと仕事してますよ。」





レオンハルトがガクリと項垂れた。



ここに来て、初めて顔を見るとは………

白衣を身に付け眼鏡を掛けた………親父………

創造神ジャンセン。



「あっっっぶね!!
ディアーナより先に見付けて良かったわ!!
白衣に眼鏡の親父なんて、ディアーナがまた萌える!!
抱き付いたり舐めたりしたがるじゃん!」


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