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第7章【金の髪に翡翠の瞳。天使の様な乙女ゲーム主人公オフィーリア】
109#男爵令嬢フローラと、その従兄弟ディアル。
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ここテオドール王国は、ディアーナ達の出身国であるラジェアベリアに何処か似ている。
魔力を持つ者の少なくない、この世界では魔法を学ぶ場所もそれなりにあるのだが、ラジェアベリア国と同様に、このテオドール国にも高貴な者達を中心として魔法を学ぶべく創られた学園がある。
テオドール王国の第二王子であるハワードは、この学園の上級生であり今年が卒業の歳との事。
そして二学年下に、婚約者である公爵令嬢ロザリンドと、ハワードが愛してしまった男爵令嬢フローラがいる。
ロザリンドについてハワードは、濃いピンク色の髪をした見目麗しい美しい少女ではあるが、公爵令嬢である身分と王子の許嫁である事を誇示するような自己顕示欲の塊の様な性格をしているとディアーナとオフィーリアに話した。
「後は…本人に逢ってみたら分かるかと…。」
数日後
テオドール国立魔法学園━━━
足首を捻挫して一週間程学園を休んでフローラが学園に現れると、待ち構えていたかのようにフローラの回りに人が集まった。
「あら、フローラさん。暫く学園に顔をお出しにならないから、心配しておりましたのよ。
お加減はもう、よろしくて?」
美しい濃いピンク色の巻き髪を揺らしたロザリンド嬢が数人の取り巻きを後ろに引き連れてフローラの前に立つと、腕を組み顎を上げて、人を見下す様な態度で話しかけて来た。
「ええ、お陰さまで。」
フローラはニコリと、天使の様な笑顔を見せる。
それは、回りに居た者達も思わずつられて微笑んでしまうような優しく柔らかな癒しの笑顔。
「……っく!」
「ロザリンド様が、お立ちくらみなさりまして、およろけになった際に、わたくしにお身体がお当たりになりまして、わたくしが倒れてしまって捻った足なら、もうこのように完治致しましたわ。うふふ…」
フローラは悔しげに言葉を詰まらせて唇を噛むロザリンドに対し、わざと挑発的な言い回しをして神経を逆撫でする。
「フローラ、授業が始まる。行こう。」
フローラの隣に、藍色の長い髪の少年が立つ。
この学園では見掛けない顔に訝しげな表情を見せたロザリンドが少年を指差した。
「お、お前は誰よ!見た事無い顔だわ!
この学園の生徒ではない者は立ち入り禁止よ!」
「……お前だぁ?誰にモノ言って……あー
……俺はディアル。フローラの従兄弟で今日から、この学園の生徒だ。文句あっか。さ、フローラ教室に行こう。」
悪態をつきたいのを堪えて、ディアルが一回呼吸を置く。
さりげなく自己紹介を済ませてフローラを伴い、その場を離れようとした。
「ま、待ちなさいよ!!」
「待たん!」
ディアルの背中に声を掛けるロザリンドに、ディアルは背中を向けたまま答える。
取り巻きに囲まれたまま廊下に立ち尽くすロザリンドを無視し、ディアルはフローラを連れその場を去って行った。
「典型的な、悪役令嬢だな…ロザリンド。
俺も、あんなんだったのかな?」
教室に向かいながらディアルが小声でフローラに訊ねる。
「ゲームの設定では、そうだったのでしょう?
でも、こちらの世界に来て実際にお会いしたディアーナ様は、今と同じディアーナ達でしたわよ…。
お会いした瞬間…本当はもう…」
駆け出して、抱き締めたかった━━とフローラ役をしているオフィーリアの唇が動く。
1000年以上想い続けた魂の半身ディアーナの姿を初めて目にした時の喜びは、スティーヴンを慕うディアーナを見た一瞬にして嫉妬と憎しみと悲しみとで塗り替えられた。
その時のディアーナには、数多くの前世の記憶はおろか、魂の半身であるレオンハルトに関する記憶が一切無い。
その存在すら知らない。
「そうだったな…俺は…スティーヴンの婚約者だったからな…
いきなりレオンに抱き締められても、ただの変態としか思わなかったろうな。」
男役のディアルに徹したディアーナが男言葉で呟く。
今の二人は互いを魂の半身だと知り、ディアーナも1000年以上前からのレオンハルトへの愛を思い出し、だからこそ深く愛し合えるのだが…
「…今なら心から愛してると言える…
でもオフィーリアのその姿のまま女同士で愛し合うのは、しんどい。」
ディアルが思わず本音を漏らす。
「あら、今ならちゃんと男女ですわよ?ディアル。」
「……俺のは男装してるだけだし、オフぃ…フローラだって女の子に見えてるだけじゃん……。」
「ええ、だから…身体は男女のままじゃないですか……うふふ。」
こっわ!!ディアーナが思わず後ずさる。
「…と、言いたい所ですけど、私フローラは殿下と結ばれる身…
従兄弟とは言え、ディアルと余りくっつき過ぎるのも避けた方が良いのでしょうね…。
ディアル…素敵なんですけど…本当にもう、どんな姿をしても…ディアは素敵で……。」
「……くっつき過ぎるのもだけど、従兄弟を誉めちぎるのもやめなよ……フローラ。」
ディアーナとオフィーリアは今、ディアルとフローラであり……
お互い、何とも言えない顔をして微妙な笑顔を向け合う。
二人はハワード王子のお願いにより、此処に来ている。
それを忘れてはならないと…。
▼
▼
▼
ある日森の中
突如現れたアホの頭の中みたいなお花畑にて三人は出逢った。
今更ながらこの降ってわいたような花畑も、ジャンセンの仕業ではないかと疑いたくなる。
「親父が絡んでるなら、下手に拒否出来ねーだろうな…
めんどくせぇな。」
オフィーリアは頭をガシガシと掻きながら、花畑にあぐらをかいて座る。
ハワード王子は愛しい者と全く同じ姿をした少女が、荒い男言葉で話し、男性らしいを通り越して男臭い立ち居振る舞いをしている事に複雑な顔をしていた。
その表情を見たディアーナがハワードに訊ねる。
「協力するのはいいけど、こんなんでもいいの?
要はフローラさんのふりをしていればいいんでしょうけど。
あ、ふりをする時はちゃんと女の子らしくするわよ?」
ディアーナがオフィーリアを親指を立て指し示すと、オフィーリアは膝を閉じて少女らしく座り直した。
「お願いします!僕が、ロザリンドと婚約を破棄する為の準備を整えるまで……ロザリンドをフローラに近付かせたくない…。」
「ハワード王子は、ロザリンドの事を…好きじゃないのよね?ロザリンドが傷付く事には納得してんの?」
ディアーナを断罪したスティーヴン殿下と違い、弱々しいハワードを見ていると、何だか強い女の尻に敷かれるのが嫌で逃げてるんじゃないかと勘繰ってしまう。
「ロザリンドが傷付く以前に、彼女はフローラを散々傷付けました。
僕は、そんな彼女を軽蔑するし、そんな女性を王族として迎え入れたくないのです。」
「何だか良く分からんが、お前さんが納得してるんならいいよ。
じゃあ俺はフローラとして学園に通えばいいんだよな?
ひとつ条件付けさせて貰うが、ディアーナをフローラの従兄弟って事にして学園に通わせて貰いたい。」
オフィーリアが閉じて座っていた片方の膝を立てて座っている。
気を抜くとスカートが捲れ、パンチらなハプニングが起こりそうな姿勢。
だが、ハワードにはそれよりも気になって仕方のない事があった。
「……俺……?」
▼
▼
▼
ハワード王子の計らいにより、ディアーナはフローラの従兄弟のディアルとして学園に潜入した。
学園は全寮制で、男子であるディアルと女子のフローラは別の部屋となった。
「フローラには仲の良い友人てのは居なかった様だな…
ロザリンドに睨まれているフローラには誰も近付けないか。
まぁ、その方が俺はやり易いがな。」
人目を避けて屋根伝いにフローラの部屋に来たディアルは、フローラのベッドに寝転びながらオフィーリアの話しを聞く。
「あの、大人しいハワード殿下が好きになるような女の子だもんね、おしとやかで、大人しい女の子なんでしょうねー
悪役令嬢の的になってしまうような。」
「……まぁ、頑張って、おしとやかで大人しい、的になってしまうようなフローラを演じ切りますよ。
ハワードが婚約破棄の準備を整えるまでは。
それよりディアーナは大丈夫なのか?男役。
……寮の部屋って二人部屋なんだろう?」
「大丈夫って何が?大丈夫で無い事なんて、この俺には何も無いよ。」
ディアーナは不敵な笑みを浮かべて、フローラの部屋から屋根を伝い男子寮の廊下に降り、自室に戻った。
ドアを開け中に入ると、ディアルのベッドに二人の少年が居り、向かいのベッドにはルームメイトになるのであろう少年が座っていた。
「……そこ、俺のベッドなんだけど。どいてくれない?」
ディアルは自分のベッドを指差し、そこに座る二人に場所を空けるよう促す。
「あ、悪い」「ごめんな、俺達もう行くから」
ディアルのベッドから降りた二人はディアルとすれ違いドアに向かい、いきなりディアルの身体を二人掛りで背後から捕らえた。
「お前、フローラの従兄弟なんだって!?」
「フローラの従兄弟の癖に生意気なんだよな!」
背後から両腕を開いた状態で拘束されたディアルは、口元が引きつり始めた。
思わず笑いが込み上げて来るのを耐える。
「ロザリンド様が、生意気なお前を大人しくさせとけってよ。」
向かいのベッドに座った少年が立ち上がり、ディアルの前に立つと拳を握り、ディアルの腹部を目掛けて打って来た。
「お前だぁ?誰にモノ言ってんだ、コラ!俺を誰だと思ってやがる!!」
少年の拳がディアルの腹部に到達するより早く、ディアルの足が少年の腹部を蹴り飛ばす。
「うぐっ!!」
「ワルト!」「大丈夫か?ワルト!」
ディアルに蹴り飛ばされたルームメイトの少年は自身のベッドの上に寝そべり、眉間にシワを寄せながら涙目で腹を押さえて唸っている。
「人を痛い目に遭わせようとしたんだ、自分がされても文句は言えんよな?」
ディアルは背後から自身の両腕を捕らえた二人の髪を無遠慮に掴む。
「痛い!」「は、離せ!はな……ギャー!!」
ブチブチと髪を引きちぎりながら強引に腕を解放させ、すぐ後ろを振り向くと背後の二人の腹部を抉るように殴った。
「ぐっ!」「げほっ!」
「………よっわ!おそっ!」
魔物や魔獣はともかく、人間相手でも盗賊や兵士崩れみたいな輩ばかりを相手にしてきたディアーナにとって、良いトコのボンボンなど、多少喧嘩慣れしていても、全くお話しに成らない位に弱い。
たった一発腹に入れただけで泣きそうな顔をしている三人を見て少し考える。
「………えーと……そうだな…こーゆー時は………
もっと痛い目に遭いたくなかったら、俺の言う事を聞け。
断ったら…もっと俺が楽しくなるがな!!」
そして、ディアルは子分をゲットした。
魔力を持つ者の少なくない、この世界では魔法を学ぶ場所もそれなりにあるのだが、ラジェアベリア国と同様に、このテオドール国にも高貴な者達を中心として魔法を学ぶべく創られた学園がある。
テオドール王国の第二王子であるハワードは、この学園の上級生であり今年が卒業の歳との事。
そして二学年下に、婚約者である公爵令嬢ロザリンドと、ハワードが愛してしまった男爵令嬢フローラがいる。
ロザリンドについてハワードは、濃いピンク色の髪をした見目麗しい美しい少女ではあるが、公爵令嬢である身分と王子の許嫁である事を誇示するような自己顕示欲の塊の様な性格をしているとディアーナとオフィーリアに話した。
「後は…本人に逢ってみたら分かるかと…。」
数日後
テオドール国立魔法学園━━━
足首を捻挫して一週間程学園を休んでフローラが学園に現れると、待ち構えていたかのようにフローラの回りに人が集まった。
「あら、フローラさん。暫く学園に顔をお出しにならないから、心配しておりましたのよ。
お加減はもう、よろしくて?」
美しい濃いピンク色の巻き髪を揺らしたロザリンド嬢が数人の取り巻きを後ろに引き連れてフローラの前に立つと、腕を組み顎を上げて、人を見下す様な態度で話しかけて来た。
「ええ、お陰さまで。」
フローラはニコリと、天使の様な笑顔を見せる。
それは、回りに居た者達も思わずつられて微笑んでしまうような優しく柔らかな癒しの笑顔。
「……っく!」
「ロザリンド様が、お立ちくらみなさりまして、およろけになった際に、わたくしにお身体がお当たりになりまして、わたくしが倒れてしまって捻った足なら、もうこのように完治致しましたわ。うふふ…」
フローラは悔しげに言葉を詰まらせて唇を噛むロザリンドに対し、わざと挑発的な言い回しをして神経を逆撫でする。
「フローラ、授業が始まる。行こう。」
フローラの隣に、藍色の長い髪の少年が立つ。
この学園では見掛けない顔に訝しげな表情を見せたロザリンドが少年を指差した。
「お、お前は誰よ!見た事無い顔だわ!
この学園の生徒ではない者は立ち入り禁止よ!」
「……お前だぁ?誰にモノ言って……あー
……俺はディアル。フローラの従兄弟で今日から、この学園の生徒だ。文句あっか。さ、フローラ教室に行こう。」
悪態をつきたいのを堪えて、ディアルが一回呼吸を置く。
さりげなく自己紹介を済ませてフローラを伴い、その場を離れようとした。
「ま、待ちなさいよ!!」
「待たん!」
ディアルの背中に声を掛けるロザリンドに、ディアルは背中を向けたまま答える。
取り巻きに囲まれたまま廊下に立ち尽くすロザリンドを無視し、ディアルはフローラを連れその場を去って行った。
「典型的な、悪役令嬢だな…ロザリンド。
俺も、あんなんだったのかな?」
教室に向かいながらディアルが小声でフローラに訊ねる。
「ゲームの設定では、そうだったのでしょう?
でも、こちらの世界に来て実際にお会いしたディアーナ様は、今と同じディアーナ達でしたわよ…。
お会いした瞬間…本当はもう…」
駆け出して、抱き締めたかった━━とフローラ役をしているオフィーリアの唇が動く。
1000年以上想い続けた魂の半身ディアーナの姿を初めて目にした時の喜びは、スティーヴンを慕うディアーナを見た一瞬にして嫉妬と憎しみと悲しみとで塗り替えられた。
その時のディアーナには、数多くの前世の記憶はおろか、魂の半身であるレオンハルトに関する記憶が一切無い。
その存在すら知らない。
「そうだったな…俺は…スティーヴンの婚約者だったからな…
いきなりレオンに抱き締められても、ただの変態としか思わなかったろうな。」
男役のディアルに徹したディアーナが男言葉で呟く。
今の二人は互いを魂の半身だと知り、ディアーナも1000年以上前からのレオンハルトへの愛を思い出し、だからこそ深く愛し合えるのだが…
「…今なら心から愛してると言える…
でもオフィーリアのその姿のまま女同士で愛し合うのは、しんどい。」
ディアルが思わず本音を漏らす。
「あら、今ならちゃんと男女ですわよ?ディアル。」
「……俺のは男装してるだけだし、オフぃ…フローラだって女の子に見えてるだけじゃん……。」
「ええ、だから…身体は男女のままじゃないですか……うふふ。」
こっわ!!ディアーナが思わず後ずさる。
「…と、言いたい所ですけど、私フローラは殿下と結ばれる身…
従兄弟とは言え、ディアルと余りくっつき過ぎるのも避けた方が良いのでしょうね…。
ディアル…素敵なんですけど…本当にもう、どんな姿をしても…ディアは素敵で……。」
「……くっつき過ぎるのもだけど、従兄弟を誉めちぎるのもやめなよ……フローラ。」
ディアーナとオフィーリアは今、ディアルとフローラであり……
お互い、何とも言えない顔をして微妙な笑顔を向け合う。
二人はハワード王子のお願いにより、此処に来ている。
それを忘れてはならないと…。
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ある日森の中
突如現れたアホの頭の中みたいなお花畑にて三人は出逢った。
今更ながらこの降ってわいたような花畑も、ジャンセンの仕業ではないかと疑いたくなる。
「親父が絡んでるなら、下手に拒否出来ねーだろうな…
めんどくせぇな。」
オフィーリアは頭をガシガシと掻きながら、花畑にあぐらをかいて座る。
ハワード王子は愛しい者と全く同じ姿をした少女が、荒い男言葉で話し、男性らしいを通り越して男臭い立ち居振る舞いをしている事に複雑な顔をしていた。
その表情を見たディアーナがハワードに訊ねる。
「協力するのはいいけど、こんなんでもいいの?
要はフローラさんのふりをしていればいいんでしょうけど。
あ、ふりをする時はちゃんと女の子らしくするわよ?」
ディアーナがオフィーリアを親指を立て指し示すと、オフィーリアは膝を閉じて少女らしく座り直した。
「お願いします!僕が、ロザリンドと婚約を破棄する為の準備を整えるまで……ロザリンドをフローラに近付かせたくない…。」
「ハワード王子は、ロザリンドの事を…好きじゃないのよね?ロザリンドが傷付く事には納得してんの?」
ディアーナを断罪したスティーヴン殿下と違い、弱々しいハワードを見ていると、何だか強い女の尻に敷かれるのが嫌で逃げてるんじゃないかと勘繰ってしまう。
「ロザリンドが傷付く以前に、彼女はフローラを散々傷付けました。
僕は、そんな彼女を軽蔑するし、そんな女性を王族として迎え入れたくないのです。」
「何だか良く分からんが、お前さんが納得してるんならいいよ。
じゃあ俺はフローラとして学園に通えばいいんだよな?
ひとつ条件付けさせて貰うが、ディアーナをフローラの従兄弟って事にして学園に通わせて貰いたい。」
オフィーリアが閉じて座っていた片方の膝を立てて座っている。
気を抜くとスカートが捲れ、パンチらなハプニングが起こりそうな姿勢。
だが、ハワードにはそれよりも気になって仕方のない事があった。
「……俺……?」
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ハワード王子の計らいにより、ディアーナはフローラの従兄弟のディアルとして学園に潜入した。
学園は全寮制で、男子であるディアルと女子のフローラは別の部屋となった。
「フローラには仲の良い友人てのは居なかった様だな…
ロザリンドに睨まれているフローラには誰も近付けないか。
まぁ、その方が俺はやり易いがな。」
人目を避けて屋根伝いにフローラの部屋に来たディアルは、フローラのベッドに寝転びながらオフィーリアの話しを聞く。
「あの、大人しいハワード殿下が好きになるような女の子だもんね、おしとやかで、大人しい女の子なんでしょうねー
悪役令嬢の的になってしまうような。」
「……まぁ、頑張って、おしとやかで大人しい、的になってしまうようなフローラを演じ切りますよ。
ハワードが婚約破棄の準備を整えるまでは。
それよりディアーナは大丈夫なのか?男役。
……寮の部屋って二人部屋なんだろう?」
「大丈夫って何が?大丈夫で無い事なんて、この俺には何も無いよ。」
ディアーナは不敵な笑みを浮かべて、フローラの部屋から屋根を伝い男子寮の廊下に降り、自室に戻った。
ドアを開け中に入ると、ディアルのベッドに二人の少年が居り、向かいのベッドにはルームメイトになるのであろう少年が座っていた。
「……そこ、俺のベッドなんだけど。どいてくれない?」
ディアルは自分のベッドを指差し、そこに座る二人に場所を空けるよう促す。
「あ、悪い」「ごめんな、俺達もう行くから」
ディアルのベッドから降りた二人はディアルとすれ違いドアに向かい、いきなりディアルの身体を二人掛りで背後から捕らえた。
「お前、フローラの従兄弟なんだって!?」
「フローラの従兄弟の癖に生意気なんだよな!」
背後から両腕を開いた状態で拘束されたディアルは、口元が引きつり始めた。
思わず笑いが込み上げて来るのを耐える。
「ロザリンド様が、生意気なお前を大人しくさせとけってよ。」
向かいのベッドに座った少年が立ち上がり、ディアルの前に立つと拳を握り、ディアルの腹部を目掛けて打って来た。
「お前だぁ?誰にモノ言ってんだ、コラ!俺を誰だと思ってやがる!!」
少年の拳がディアルの腹部に到達するより早く、ディアルの足が少年の腹部を蹴り飛ばす。
「うぐっ!!」
「ワルト!」「大丈夫か?ワルト!」
ディアルに蹴り飛ばされたルームメイトの少年は自身のベッドの上に寝そべり、眉間にシワを寄せながら涙目で腹を押さえて唸っている。
「人を痛い目に遭わせようとしたんだ、自分がされても文句は言えんよな?」
ディアルは背後から自身の両腕を捕らえた二人の髪を無遠慮に掴む。
「痛い!」「は、離せ!はな……ギャー!!」
ブチブチと髪を引きちぎりながら強引に腕を解放させ、すぐ後ろを振り向くと背後の二人の腹部を抉るように殴った。
「ぐっ!」「げほっ!」
「………よっわ!おそっ!」
魔物や魔獣はともかく、人間相手でも盗賊や兵士崩れみたいな輩ばかりを相手にしてきたディアーナにとって、良いトコのボンボンなど、多少喧嘩慣れしていても、全くお話しに成らない位に弱い。
たった一発腹に入れただけで泣きそうな顔をしている三人を見て少し考える。
「………えーと……そうだな…こーゆー時は………
もっと痛い目に遭いたくなかったら、俺の言う事を聞け。
断ったら…もっと俺が楽しくなるがな!!」
そして、ディアルは子分をゲットした。
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