【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第六章【異世界にて悪役令嬢再び。】

97#ディアーナ、貴女は百合の花を咲かせる人?

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「ああああ!!!!めんどくせぇ!!!」


亡くなったレイラ嬢のベント子爵邸を出て、並んで歩いていたジャンセンが、いきなり往来の真ん中で大きな声を上げてレオンハルトの左側に抱き付く。


「うわっ!何だよ!いきなり!キモッ!!」


レオンハルトは、いきなり抱き付いたジャンセンを引き剥がそうと自由になる右腕でジャンセンの肩を掴んで身体を押しやろうとするが、中々離れない。

そしてジャンセンはブツブツと文句を垂れ出す。



「俺はな…俺はな!
大事な息子夫婦を引き離すような、こんな下らねぇ真似をしやがった糞ごみカスを、魂を粉砕するまで許さねえと思ってたんだよ!
……だがな!だがな!!この俺を、この創造主の俺様を!!
こんなめんどくせぇ事に巻き込みやがって!!」


「……お、おお……キレてんなぁ」


「魂粉砕位じゃ収まらんわ!!
その前に二度と生きていたくありませんと言わせるまでボコッてからじゃねぇと、収まらんわぁあ!!」


「……要するに、俺達夫婦が可哀想って思いより、親父のめんどくせぇゲージが上がった方が腹が立つと。
…うん、通常運転じゃねーか。で、何だよ急に。」



レオンハルトはハイハイと言いながら、まだ離れないジャンセンを引き剥がそうとする。


「ここに、レイラ嬢の惚れた男の霊が居るんだよ!!
クソメンドクセェ!!」


「あー…親父、俺が小学生の瀧川廉の時、夏休みに見た雑誌の心霊特集の質問コーナーでな、心霊に話し掛けられても無視しなさいと霊能者がアドバイスしていたぞ。」



霊が縋って来ても何もしてあげれないので無視しろと言うアドバイスは、ちょっと霊感のある小学生向きのアドバイスで


この世界の最高神がそんな態度どうよと思うが、レオンハルトも今のジャンセンがめんどくさい。
ある意味小学生並だ。



「……レイラ嬢の惚れた相手がですね……レイラの実弟なんですよ。
彼の死の寸前までレイラ嬢はそれを知らなかったようですが……
彼はレイラ嬢を姉と知っていて好きになってしまった。
想いを伝えられない苦しさからレイラ嬢に殺される事を選んでしまい、今の状況です。
すごく、後悔してるんですよ…レイラ嬢をこうなる程苦しめた事を。………
だから!!俺にどないせぇっちゅーんじゃ!!」



「姉弟で……好きに……想いを伝えられない苦しさから……なぁ、親父、それ何とかしてやれないかな?」


「ほらー!!俺にとっての最高のホラーだわ!!これは!!
めんどくせぇお願いキター!!」


レオンハルトから離れたジャンセンは、頭を両手で抱えてその場にうずくまる。



「そう来るの分かっていたから嫌だったんですよ……
兄妹で想いを伝えられない辛さを抱えたまま、妹の死を目の当たりにした廉と重なったんでしょう?

………ディアーナの件が片付いたら考えてあげますよ……
そうなったら他の被害者もってなるんでしょ?
……僅かでも魂が残っていたら、何か出来ないか考えてみますよ。

ッッあー!!めんどくさい!!」



ジャンセンはプリプリ怒りながら先を歩いて行った。

レオンハルトは苦笑しながら、ゆっくりとジャンセンの背を見て後ろを歩いて行く。



「頼りにしてるよ、親父。」











リュシーは火打ち石で川の側に火を起こして、ディアーナが捕らえた魚を焼いていく。

暴れ足りていないディアーナは、先ほどの偽スティーヴンがまた現れてくれないかと、ずっとソワソワと川の方を見ていた。


「ディアーナ様、川魚が焼けましたよ。食べますか?」


「食う!!」


川辺から火の側に来たディアーナは、岩に座って焼いた魚を食べ始める。

ディアーナの水着姿を見慣れてしまったリュシーは、本来ならばセクシーと言われる姿で川魚にかぶり付くディアーナを、野生児に餌付けをしているような感覚で見ていた。


「まさか…スティーヴン殿下に攻撃するとは思いませんでしたよ。あれは…偽物だと分かって攻撃したのですよね?」


「え?偽物とか考えなかったけど?
私、殿下に蹴りかかるとか何度かしてるわよ。」


マジで?

リュシーが無言で、目だけを大きく見開く。



「それよりも殿下が私に攻撃してくる事が多いわね。
デカパイが嫁になってから特に。
私がデカパイのチチを揉んだりすると、鬼のような顔をして斬りかかって来たり。」



話が見えて来ないが…
野生児ディアーナ様の知っているスティーヴン殿下にはオフィーリアさんではなく、デカパイと言う名のお妃様が居て…

そのデカパイ様のチチ…まさか胸?を揉んだりするディアーナ様?

それは…スティーヴン王太子妃殿下デカパイ様の胸を…揉む?

不敬どころの騒ぎでは無いのでは…何と命知らずな…。



オフィーリアさんの事も、私だけのと言っていたな…。



令嬢ディアーナはスティーヴン殿下を好きだったと思っていたが…蛮族の野生児ディアーナ様は女性を好きな、そういう趣味の人なのだろうか?

確かに、変に男前だし。



「でも、殿下でないってのはすぐ分かったわね。
本物の殿下の記憶だけはハッキリと思い出したから。
しかも弱っちょろい。」



「本物の殿下…ですか。弱い…。」



「先日のパーティーで私に婚約破棄を言い渡した殿下自体が偽物。その後ろにいたオフィーリアも私の大事なオフィーリアではない。何だか、私の古いアルバムを元にして再現ドラマをやらされているような気分だわね。」



リュシーには理解出来ない言葉を口にするディアーナ。

アルバム?ドラマ?



「まだ全て思い出したワケじゃないけど…
レモンタルトと万全残念が何か分からないし…
次の手紙の意味も分からない。
それに、オフィーリアがレモンタルトだから大事な人って意味も分からないのよね。」


「ディアーナ様が分からない事、俺にはもっと分かりません」


リュシーは苦笑しながら、自分も焼いた魚をかじる。


「そうよね、でもリュシーはさっきの殿下が何なのか知ってんでしょ?
リュシーにウゼ……物悲しげな顔をさせるのがアイツなのよね?」



リュシーは、今一瞬…ウゼェと言い掛けませんでした?とディアーナに聞きたかったが、そこは我慢した。



「そうです……でも俺には、あれが何なのか説明出来ません。
説明する事を禁じられているのもありますが…そもそもが何なのか…俺にも分からないのです。
分かっているのは…ああやって突如、誰かの姿を借りて現れて…責め立ててくる。それしか…。」


リュシーは、この世界の前があった事を濁した。

今までの世界のように、心から大事な人が現れたら…。

ディアーナが気に掛けているレモンタルト……もし、それが本当の想い人ならば、その姿をしたアイツが現れたら……

どうなるのだろう。




「責め立ててくる。……それだけで済むワケじゃないわよね……
アイツの目的が何か探る前に手を出すんじゃなかったわ。」



ディアーナ様……アイツはディアーナ様の罪悪感や哀しみを煽り、絶望を与え……あなたの生気を、魂を喰いに来たのです。



……そうですねディアーナ様、目的探るどころか、お前呼ばわりされた瞬間ブチキレして手が出ましたもんね……。


いや、手ではなくて足ですか。


見事な蹴りでした。


「リュシー、何で泣きながら笑ってんのよ。」


「はは…なぜでしょうね……。」


この先どうなるかは、まだ分からないが……

初めてアレに抵抗する事が出来た事に、リュシーは胸がすく思いをした。

それは涙が溢れる程、嬉しい事だった。

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