【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第六章【異世界にて悪役令嬢再び。】

94#レイラ。

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夜が明け、宿を出たディアーナとリュシーは再び宛のない旅を始める。



「ディアーナ様は…何処へ向かい、何を目的とした旅をしてらっしゃいます?王都を追われ安住の地でも探してらっしゃるのですか?」



その旅は、いつか何処かで唐突に終わりを迎える。

だが、いつ訪れるか分からないその日まで、ディアーナの希望をなるだけ聞き入れてあげたい。

リュシーはそう考えている。

自分が与えられる最後の喜びや楽しみを出来る限り与えて…。



「目的?リュシーの憂いを無くす事でしょう?でも、それが何なのか詳しくは教えてくれないじゃない?じゃ、そういう時が来るまで楽しく世界を回るわよ。」



「俺の憂いを無くす事が目的の旅…ですか?…ええ確かに、ツラいし…悲しいです…よ…でも、きっと無理なんです…。その理由を今、話す事も出来ない…。すみません…。」



理由を話せない。

ならば、とディアーナは推測する。

まず、この世界でのディアーナには、傷付いている事が求められている。

殿下に裏切られ国を追われた傷心の令嬢ディアーナが。



リュシーは、そんなディアーナの傍に常に居て、慰め、励まし、優しさを与えて傷を癒してくれている。

……らしい。つか、っぽい。



慰めも優しさも癒しも別に必要ないディアーナには、あまり意味が無い上に、そんな事、意識もしてなかった。



「意識していたら、リュシーの胸ぐら掴んだり、頭突きしたりしなかったわね。多分。」



そしてリュシーが時々見せる物悲しく、何かを悩み、苦しんでいるような………憂いを帯びた表情……そんな彼をディアーナは………



ウゼェな。と思っていた。

見た目ワイルド系の、狼の獣人のクセに中々にヘタレだな。

時々どんよりと暗くなるしウゼェぞ、リュシー。

ディアーナはそう思っていた。つか、思っている。



「うん、考えても何にも分からんわ!

つか考えるのめんどくさいわ!

時が来れば、なるようになるんでしょ?」



頭にお花を咲かせて、ディアーナはすぐに推測をやめた。



「別に話さなくていーわよ。ツラいやら、悲しいやらを無くしてやりゃイーんでしょ?旅の目的、それって事で。」



あとは……頭の中にポヤポヤ浮かぶ、レモンタルトと、万全残念が誰かを思い出す事が目標かしらね?



そうすれば、私自身が何者であるかを思い出せそうだわ。

そうしたら自分の居るべき場所に戻る手掛りも見つかるかも知れない。



でも、その前に……気持ち良く元の世界に戻るには、

この世界と、リュシーをウザくさせている原因はブッ潰しとかなきゃね。



「まず、最初は川か湖か泉を探すわよ!目的は水浴びと食料にする魚を獲る事!」



「本当に水浴び…するんですね?」



「するわよ!私、まだリンゴぢるが取りきれてないんだから!」



ディアーナのたくましさに、リュシーが困ったように笑う。

ディアーナのように、美しい女性でありながら強く逞しい…。

そんな「前の人」も居た。



リュシーはその彼女に、少し期待をしてしまった。

この終わりの見えない世界を無くしてくれる人に成り得るのではないかと。

彼女の強さは、リュシーにそんな希望を抱かせたが、彼女の死を以て終わった。















「私の妹のレイラは剣の腕が良くてな。令嬢でありながら騎士として城に勤めていた。」



レオンハルトとジャンセンは、ラジェアベリア国から遠く離れた国にある、とある地方都市の中の町に来ていた。

その町の子爵家を訪問し、当主である子爵に亡くなった妹についての話を聞いていた。



応接室の暖炉の上に飾られた美しい女性の肖像画が、亡くなったレイラ嬢だと言う。



ドレスを身に着けているが剣を手にしている。



「レイラは城の裏にある森の中で倒れていた所を警備隊の者達によって発見され、その後この邸に運び込まれたのだが…三日間眠り続け、目を覚ます事無く四日目に、そのまま亡くなったのだ。」



「……そうですか、それは悲しい思いをなさりましたね……」



子爵から話を聞いて、相槌を打つように返事をしたレオンハルトは、隣に座るジャンセンに目配せする。



傷心、関係なくない?本当にレイラ嬢も、あのニセ林檎の被害者なのか?と。



「…………だ、そうです。」



ジャンセンが深いため息をついて、項垂れる。



「レイラが死んで悲しい思いをしたのは確かだが、妹は死ぬ数ヶ月前に、陛下のお命を狙う暗殺者を倒し陛下の命を守ったのだ。妹は、わが子爵家の誇りだよ。」



妹の名誉を語る子爵をよそに、項垂れたジャンセンが面倒臭そうに何度も溜息を漏らす。



「……はぁ~……その、レイラ嬢が……ここに居るんですよね……」



ジャンセンがレオンハルトだけに聞こえるように、ボソボソと呟く。



「居る?幽霊?何だよ、化けて出てんのか?」



「幽霊と言うか…霊魂と言うよりは、残留している思念体に近い…のですかね、ずっと独り言を呟いてます。魂そのものを失いかけているから会話は出来ない…。これではもう、転生すら出来ない。魂がこうなってしまう原因として一番に挙げられるのが、魔物が関わっている場合です。」



「へー。俺には見えてないけど、そのキレイな姉ちゃんは、一人でブツクサ何言ってんだよ。」



「…………ごめんなさい。私が死んでも良かった。」



「……いや、自分、死んでるじゃん?つか、それ絶対に男絡みだろ?」



「結果死んでますけど、死までの条件の傷心を満たしてますよね。家族ですら知らなかった悲しみを抱えていたようです。…家族すら知らなかった恋心…ですか?」



「「…………めんどくせぇ。」」



一人で、まだ妹の自慢を続ける子爵を無視して吐き捨てるように呟いた二人は、子爵邸を後にした。



子爵邸を出た所で、ジャンセンが困ったようにレオンハルトに告げる。



「魔物ならば、我々が簡単に倒せる筈なんです。姿を現せば。……困った事に、林檎の使い手のそいつが何処に居るかが分からない。そして、あのニセ林檎はこの世界の物ではない。もし……ディアーナの意識が、異世界に連れて行かれていたら……私に彼女を探して連れ戻せるかが分からない。」



「親父が弱気になんの、珍しいな……あんたは、万能神でもあるのにな。」



「それは、私が創ったこの世界での話ですからね。異世界に私の力が及ぶのは僅かですよ。」



「おいおい親父、ディアーナが居たら頭突き食らわせられっぞ。泣き言なんて師匠らしくないってな。」



苦笑しながら言うレオンハルトの胸の内も実は穏やかではない。

あのニセ林檎を使って狩りをした誰かが、最愛の人の魂を、意識を捕らえて弄んでいる。

俺のディアーナを弄んでいる…。

こんなに腹立たしい事があるだろうか。



「レオンハルト…あの馬鹿娘の傷心て…何なんでしょうね…」



「そこなんだよな…何でディアーナが選ばれたんだろうな。」



二人の頭に、レイラの事が思い浮かぶ。

家族にも知られる事無く、秘めた想いを持ちながら、それを隠し、失い、魔に魅入られ囚われるまでに傷付いていた。



ディアーナも…?誰かに秘めた想いを?



「自慢じゃねーけど、ディアーナは俺以外の誰かに惚れたりしないぞ?だから、恋が実らず傷心とかは、まず有り得ねーし。」



「あなた達は、二人で一つの魂を共有しているようなものですからね。二人で…一つ………。」


ジャンセンは、自身の言った言葉に何か引っ掛かる物を感じたが、それが何かを思い出せない。



ディアーナが眠りについてから

1日が経っていた。



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