【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

文字の大きさ
上 下
76 / 140
第五章【番外編━━腐女子山崎めぐみ転生━━】

76#エロ漫画を描かせる気か!

しおりを挟む
ラジェアベリア国はここ一年位、バタバタしていた。



一年程前にサイモンが言っていた通り、エライ貴族のオッサンが、何やらやらかしたようで…その後処理だとか、事後処理だとか、よく分からない処理だとか、色々あったらしい。



わたし自身には関係無く、わたしの実家の小心者ばかりの男爵家にも余り関係無いだろうし、興味が無いからよく知らない。


だからわたしはこの一年、部屋にこもって黙々と与えられた仕事をこなしていた。




「毎日毎日、歴史書の挿し絵ばかり、飽きたでしょう?
そろそろ神話関係描いていきません?」


ある日唐突に、部屋を訪れた王宮騎士のジャンセンさんが言った。

あんたは編集者か。



わたしを絵師として王城に招いた人。

すんごい、美形。でも言動と存在が、とても怪しい。



そもそも何で王城に勤める騎士が、わたしなんかに絵を描く仕事を与え、城に勤めさせる権限を持っているのか。

国王公認って、国王にナニ言ったんだあんた。

だって、イラストだよ?

歴史書とかの挿し絵って、もっとリアルにガチな絵じゃない?

言われたから描いていたけどさぁ。

歴代国王陛下の似顔絵なんか、飾られている肖像画より男前過ぎて…漫画チックになったし。いいの?それ。


「この世界では、神の存在って馴染みが薄いんですよ。
聖女は何となく浸透しているんですけど聖女の意味もいまだに履き違えられてますしね。
この世界を創った創造主は人間の世界には姿を現さないので描けませんが、その御子と、妻になった聖女の話を描いて貰いたいのです。漫画で。」



神の存在が馴染み薄いのに、その子供は人間の前にバンバン現れまくってる。

ありがたいんだか、ありがたくないんだか。


そんな二人の神話…二人が夫婦になるまで的な?

えーと…それは…

ディアーナとレオンハルトさんの、ラブラブ漫画を描けって事でしょうか……それ神話?



「お言葉ですが…それ、必要ですか?
漫画でって…先に、ちゃんとした神話を文章にして頂いて、挿し絵を描いて…それから時期を見て漫画にするとか…」



「そんなの、つまんないじゃないですか。」



つまる、つまらないの問題だろうか…



「漫画をこの国の新しい文化にしたいって言ったでしょう?
あなたのエロ漫画を見て、後任も増えていくでしょうし。
世界中に広がって行きますよ。漫画の文化が。」



エロ漫画って言いやがった!!

神話とは名ばかりのエロ漫画を描かせる気か!?


「娯楽が少ないんですよねぇ…この世界には。
だから、人々の想像力も足りない。
もっと、面白可笑しい世界になって欲しいんですよね…。」


あまり語られないけど、この世界を創ったとされる創造主様…

その神が創った世界をつまらないと言うなんて。

神を冒涜するような発言ではないだろうか…。


「神の御子であるレオンハルト様とディアーナ様が人の世に居られるのですから、創造主様も人の世に居られるかも知れませんよ。
そのような発言は、控えた方が宜しいかと。」


わたしが姿勢を正し、バチが当たりますとの意味を込め、ジャンセンさんを少々嗜めるように言うと、ジャンセンさんはニタリと楽しげに笑んだ後、首を傾げた。


「うまく誤魔化して、逃げようなんて許しませんよ?」


「違います!そんなもん描いて神の怒りにふれるの、わたしじゃないですか!
それにですね、わたしブランクもありましてね!
絡み描けませんよ!描き方も忘れてますし!分からないですし!
モデルでも用意してくれませんかね!」


ぶっちゃけるわ!モチベーション上がらんわ!

わたしが同人誌を執筆していたのって、今のわたしの前世だもの!

今年19歳になるわたしからしたら、男爵令嬢に生まれる以前、19年以上も前の記憶よ!


しかもBLだっつの!男女の絡みなんぞ描いた事無いわ!

あと、モチベーション上げる為の聖書が足りない!


ああ!同人誌読みたい!!

すんごい濃厚な、わたしの推しカップリングのサイモン×アリエス先生読みたい!


「モデル…ですか。」






そう…ジャンセンさんが一言呟いた後の記憶が曖昧です。



なぜわたしは今、サイモンの膝に座って…そんな自分たちの姿を鏡で見せられているのでしょう…。


「……ジャンセン様……これは何ですか……」


「あなたがモデルが欲しいと言ったので。
私の一番信頼している部下のサイモンに来てもらいました。」


来てもらいましたじゃねーよ!
そして、来てるんじゃねーよ!サイモン!


「サイモン様…お忙しいでしょう?
もう、お戻りになられて結構ですわ。」


能面のような笑顔を見せ、サイモンの膝から降りようとする。

降りようとする。降りようと……降ろせ!!!



「まだ描いてないではないか、ちゃんと鏡を見て描いてからでないと。仕事の途中放棄は俺の矜持が許さないのでな。」



サイモンの腕が完全にわたしの腰を抱いている!何でだ!


あんたはアリエス先生を溺愛…いや違いました、それは薔薇の世界の話で…


リアル設定、侯爵令嬢で従姉妹のディアーナを好きだったよね!

今、ディアーナが神の世界の住人になったせいか、ほとんどの人の記憶からディアーナが侯爵令嬢だった部分が消えている。


きっと、この人からも…でも、だからって!


「ディアーナにフラれたからって、代わりにわたしに絡むのやめて下さい!!」


わたしは、ディアーナでも、主人公でもない。

ゲームでは存在すら語られないモブ以下だ。

そんなわたしが、ゲームの攻略対象だった美形のサイモンに言い寄られるワケがない。



「サイモン様は、多くのご令嬢からお声掛けされていると聞きましたわ。
ディアーナ様をお忘れになりたいのでしたら、それらの美しいご令嬢にお相手して貰えばいいんじゃないの?
もう、わたしに無意味に絡むな!!」



自分で口にした言葉に段々と情けなくなってくる。

途中から素の言葉が口をついて出ていた。



「無意味ではないが……
確かに令嬢達から声は掛けられているが、相手をした事は一度もない。」



いやもう…馬鹿正直に答えないで下さい…。

わたしとしては、サイモンの腕を振り払って部屋から飛び出して……背後から「ミランダ嬢!待ってくれ!」なんて声を掛けられてって、ベタな恋愛モノのシーンを想像しなかったワケではないんだけど…。



そもそも解放されなかった。

腰に回された腕から力が抜かれない。

言いたい事だけ言ってこの場から逃げたかったのに逃げれない…。わたしは今もサイモンの膝の上。

うああ…消えたい…!


「聖女であるディアーナ様にフラれたのは確かだが、それはもう俺の中では過去の良い思い出だ。」


だから、わたしの言った事にイチイチ馬鹿正直に答えんでいい…質問してたワケじゃないから…。クソ真面目かよ!


「も、もういいです…あの…分かったので…降ろして下さい…。」


「無意味に絡むなと言うのであれば、意味があれば良いのだろう?意味ならある。」


サイモンの言葉を真剣に聞いてないわたしは、サイモンの腕を振りほどこうとサイモンの腕を押したり剥がそうとしたりを試みる。

この野郎!騎士なんかやってるだけあって力が強ぇ!

何だか、昔ファミレスで見た子供用の椅子から脱出しようとしている幼児みたいになってるわ!わたし!



大きな姿見の鏡を持って立っているジャンセンさんがニヤニヤ笑っている。

クソムカつくイケメンがわたしの部屋に二人。


「意味!?実はわたしに惚れてとか!?
ははは!そんな事、有り得ないっすね!」



「それはもう、大前提なのだが…
既に、我がヒールナー伯爵家からミランダ嬢のシルベルト男爵家に、ご息女への婚約の申し込みをしてある。
男爵家からは早々に承諾も得ており、先月辺りからミランダ嬢は俺の婚約者となっている……聞いてなかったようだが。」



何だと………?いつの間に?聞いてないがな。知らんがな!!!



「わたし……聞いてませんよ…?」

「みたいだな。」

「わたしが承諾してないのに…?」

「みたいだな。」

「…こ、婚約破棄……しません?」

「無理だな、俺が君を逃がさないから。」

「………わたし…アリエス先生じゃありません……」



わたしはサイモンの膝に座ったまま気を失った。



前世からそうなんだけど、貧血気味なのよね…わたし…。

もう、頭の中に血が通い過ぎて、オーバーヒートしたみたい。



目を覚ましたら誰も居ませんように……イケメンしんどいって…マジで。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...