【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第五章【番外編━━腐女子山崎めぐみ転生━━】

73#主人公こっわ!

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今日も今日とて…

隠れて二人を観察する日々。



ディアーナが無自覚ではあるが転生者である事は分かった。

しかも日本人の女性で、腐の世界にも寛大。

ある程度はわたしと同士だ。多分。



オフィーリアさんは、分からない。

ディアーナの事を…好きみたいに見えるけど…オフィーリアさんがディアーナから殿下を奪った状態なのよね…。

この辺はスティーヴン攻略ルートのゲームシナリオの設定通り。


ただゲームと違い、ディアーナは婚約者を奪った相手であるオフィーリアさんに嫌がらせをするだとか無い。


悪役令嬢……でなくても、婚約者を奪われたら嫌味の一つ位言いたくなると思うんだけど。

嫌味どころか…もっとヒドイ事をしないでいられないかも。


なのにディアーナは何もしていない。


何もしていないのに、スティーヴンルートのシナリオが進めばディアーナは国外追放となる。

助けたい…。不幸になって欲しくない…。




いけないと思いつつ、殿下とオフィーリアさんのベンチデートを盗み見していたりすると、殿下がオフィーリアさんに一人で話し掛けていたりする。

隣でオフィーリアさんは貼り付いたような、おざなり感たっぷりの笑顔で黙って座っているだけ。



……日々こんな、おかしなデートを重ねている二人……

これ、デート…?かしら。



殿下が一人でペラペラしゃべった後に満足げに微笑み、オフィーリアさんに愛しそうな笑顔を向け、その場を離れて行った。


作り物みたいな笑顔で殿下を見送ったオフィーリアさんは、ドスッとベンチに深く腰掛け、大股を開いて項垂れている。

ひどくお疲れの模様。…なんだけど…オッサンみたい…。


うん!メッチャ男くさっ!
ある意味かなり男前だわ!

貴族の娘として生まれてから、中々お目に掛かれなかったの!
ガサツ男子!
貴族の坊っちゃんばかりのこの学園には一人もいないし!

ちょっと、スレた感じの男の子はいるわよ?

違う!もっとガサツで泥臭いの!



あんなに、天使のように可愛い主人公が…カッコ良く見えてしまう…。
その内、スネ毛の幻覚も見えるかも…それは何かやだ。


「!!え、ウソでしょ…!ディアーナ!」


一人ベンチに腰掛けるオフィーリアさんの前に、いつの間に現れたのかディアーナが一人で立っていた。

とうとう、悪役令嬢の本領を発揮してしまうの?

オフィーリアさんをいじめてしまうの?

オフィーリアさんを……!!…痛めつけたり…出来るの?

この人、可愛い顔してるけど忍者だよ?

ビンタなんかしようものなら、すべてよけられそうだし…
つまずかせようと足を出したら、かなり高い位置までジャンプしてよけられそう。


そんなオフィーリアさんに……どんな嫌がらせを?


息を飲んで声を殺し、気配も殺して(いるつもり)繁みを移動しながら二人に近付く。

会話が聞きたい!
あー無理!これ以上近付くのは無理だわ。



ディアーナがオフィーリアさんの肩に手を置いた。

よほど強く掴んだのか、オフィーリアさんはディアーナの手から解放された後の肩を撫でている。

そんなに痛かったのかしら…
爪食い込むとか、つねるとか…陰湿でみみっちいいじめを…したの?


二人の会話は、聞こえない。


ディアーナはオフィーリアさんの隣に座り、二人は…なんだか楽しそうに会話を始めた。


やがて、オフィーリアさんが噴き出して笑い出し、ディアーナが拗ねたように唇を尖らせた。


「あ……」

オフィーリアさんがディアーナを抱き締める。

ギュッとではなく、やんわり包むように。

そのオフィーリアさんの表情は、幸せそうで…
なのにつらそうで…間違い無く、オフィーリアさんの愛はディアーナに向けられているのだと確信した。


いや、だったらオフィーリアさん!あんた尚更、何者だよ!

転生者?男の?

乙女ゲーム好きで、しかもディアーナが好きな?



意味分からんし!!!



「………中身が男なら、百合ではないな……だが、何か良かった。
見ため的には美少女二人の抱擁シーン、うん、眼福でした。」


ディアーナが去った後。
わたしは繁みの中で手を合わせて拝んでしまった。

いやー何か知らんがありがたや。
いーモン見させて貰ったわ。

もし、また転生して日本人に生まれたならば、薔薇も百合も描いてやるわ。

無理だろうけど!こんちくしょう。






「……こないだから、私やディアーナの回りをうろちょろうろちょろ……あなた何なの?」


繁みの中で手を合わせているわたしの背後に……

おっそろしい笑顔の忍者でたーーーッ!!

いつの間にか、繁みを掻き分けて来たオフィーリアさんが立っていた。


「…な、ナニも…ないですわ…よ?」


電池の切れかけた人形のように、ギギギとぎこちなく後ろを向く。


主人公、こっわ!笑ってるけど目が笑ってない!

キャラクター設定、優しく明るく頑張り屋!?

ただの怖いオネェチャンだよ!むしろ、怖いニィチャンだよ!

めっちゃ、ガン飛ばされてるし!殺したろかテメエと目が語ってるわ!


「ナニも無い?嘘をつかないで下さい。
あなた、スティーヴン殿下をお慕いしてますの?
残念ですが、殿下は私に夢中です。諦めて下さい。」


オフィーリアさん、あんなにディアーナの事を好きなのにスティーヴン殿下を完全攻略するつもりなの!?

その先には、ディアーナが国外追放になる未来しかないのに!


「そんなぁ!このままだと、ディアーナは国外追放になってしまう!そんなのダメだよ!」


わたしはオフィーリアさんの方に向き直って、大きな声をあげた。


慌てて口を押さえる。
わたしの発言は、王太子の婚約者であり自分より高位の令嬢を呼び捨てにし、国外追放になるなど侮辱したと捉えられてもおかしくない。

誰かに聞かれていたら、大変な発言だ。


「……結界を張ったから、誰にも聞かれてないわよ。
……あなたは転生者なのね?」


オフィーリアさんの質問にコクコクと何度も頷く。


「お、オフィーリアさんも…転生者?」


恐る恐る尋ねてみる。


「違う。俺…私は、元々こちらの生まれで、日本に転移していた事があるの。」


ひそかに俺って言ったわ、オフィーリアさん…。
この人の中身、男だわ。

……自分を俺と呼ぶ女性かも知れないけど……確率低いだろうし。


「とにかく、私達には構わないでちょうだい。
ディアーナに転生者としての余計な情報を与えたりしないで。
私には、私の考えがあるのよ。
……邪魔されたりしたら…ナニするか分からないから。」


こっわ!ナニするか分からないって、ナニするの!?

て言うか、何の邪魔?

ディアーナとラブラブするのを邪魔?

殿下を完全攻略するのを邪魔?

ディアーナを国外追放させるのを邪魔?



何を邪魔されたくないの!!!

分かんないじゃないの!!



「主人公こっわ……出身がこちらの世界って…。」

ゲームの世界出身て事なのかなぁ…。

じゃあ、オフィーリアさんはゲームという架空の世界で作られた架空のキャラクターって事?


わたしとディアーナみたいに、現実の世界に生きていた転生者ではなく…。


何だかよく分からない。




わたしはディアーナにもオフィーリアさんにも近付くのをやめた。

本当はディアーナに近付きたい…。
仲良くなりたいし、彼女が不幸になるのを止めたい。

でも邪魔をするなと、ヤンキーみたいな主人公が言うから…。

怖いし近付けない。




オフィーリアさんだって、ディアーナを不幸にしたいわけじゃないと思う…んだけど…。





オフィーリアさんの目は、いつもディアーナを追っている。

ディアーナは相変わらずオフィーリアさんを避けるように近付かない。

なのに、噂だけが立ち始める。



ディアーナがオフィーリアさんに、ひどい嫌がらせをしていると。


「そんな事あり得ませんわ。
ディアーナ様はオフィーリアさんに近付いたりしてませんもの。」


友人達とお茶を飲んでいた時に、そんな話題が出たので否定したのだが…


「いえ、そうなのですわよ。」

「殿下ご自身が、そう言ってらしたのですもの。」

「ディアーナ様との婚約を破棄なさりたいとか…。」


ゲームの強制力なのだろうか。


スティーヴン殿下の卒業が近くなり、ゲームも前半のラストに近付いている。

この状態は、ディアーナの国外追放が決定されている。


オフィーリアさん!どうするのよ!どうしたいのよ!


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