69 / 140
第四章【神の御子と月の聖女ディアーナの旅】
69#創造神顕現。
しおりを挟む
スティーヴンが創造神界に戻った後、グイザール公爵と、ジャンセンに集められた息子達も近衛兵に捕らえられた。
集められた息子達はリジィンを入れ8人。
女好きで有名だったらしいグイザール公爵には多くの庶子がいて、その子供達に王都から離れた地方の貴族等の家名や財産を乗っ取っては、与えていたらしい。
子供に裕福な暮らしをさせたかったからだと言った卿は、子煩悩な父親だと言えば聞こえがいいが、自身の回りを固める為に貴族の名前や財産が必要で、それを手に入れる為の駒として子を利用していたというのが本当の所だろうと。
何にせよ証人も証拠も揃っている為、もう言い逃れる事は出来ないであろう卿には重い罰が下ると国王は言った。
ピエール王子はジャンセンに対し、神だとは信じてない上に警戒も解いてないが、国王である父親が膝をつき頭を垂れる姿を目の当たりにし、複雑な面持ちではあるがジャンセンに剣を向けた無礼を詫びた。
「「師匠!!」」
ジャンセンに向かって声を掛けたディアーナと同じタイミングで、サイモンがジャンセンに対し声を発した。
「……は?サイモンお兄様、ジャンセンが…師匠なんですの…?」
「…なぜ、ディアーナが俺の師匠を知っている…?
しかも、師匠と呼ぶ…いや、ひそかに呼び捨てにもしたな…。」
レオンハルトとディアーナは、改めてサイモンの頭の先から爪先までをジィっと見る。何度も見る。
……ジャンセンの、旅装束に似てね?その格好。
黒いよ?何か。
ジャンセンは魔導師のコスプレ用ローブを脱ぎ、いつもの旅装束姿になる。
サイモンと並ぶと、ほぼ同じ姿に見える。
「殿下には先に話しちゃいましたけど、サイモンは私の後任ですよ。
ラジェアベリアに所属する隠密部隊の者で、スティーヴン殿下の影ですね。
あ、影武者とか身代わりではないですよ?
護衛とサポート、伝達が主な仕事です。」
ああ…だから、殿下が襲われた時に殿下を守る為に現れて、殿下に姿をチラチラ見られていたのですね。
だから、逆に暗殺に関与していると思われて…。
……だって守る場面なんて、なかったでしょうしね…。
スティーヴン殿下、下手したら人間では最強かも知れませんもの。
剣の腕も、魔法も今やトップクラスですし。
何より
創造神を召喚出来る。いや、ジャンセンが勝手に来るんだけど。
つか、師匠!まだ影のお仕事やってたの!?
「師匠、ディアーナと随分親しいようですが…。いつ、お知り合いに…?」
親しげにディアーナとジャンセンが会話するのを見て不思議そうにサイモンが尋ねると、ジャンセンは微笑して答える。
「ああディアーナは、私の娘なのでね…。
そして、そこの金髪の彼、レオンハルトも私の息子です。」
「そうなの、サイモンお兄様!私達、ジャンセンの子供なのよ!」
「え?養子?え?」
意味が分からないサイモンは混乱しているようだ。
「ええ…大切な子ですよ。サイモン、あなたもね…」
混乱中のサイモンに届かない小声でジャンセンが小さく呟く。
ディアーナとレオンハルトは苦笑しながら顔を見合せた。
「陛下、ピーちゃん、私ちょっと実家行って来るわ!」
ジャンセンが創った謎の部屋に監禁されていたディアーナの両親は、ジャンセンがグイザール公爵の前に現れる前に解放してくれたとの事だった。
「こら、陛下に、そんな口のきき方しちゃ駄目でしょ?」
緩くたしなめるジャンセンに、陛下がヒラヒラと手を振る。
「あー、良い良い。
ディアーナ嬢の事は幼い頃から知っておるが、今のディアーナ嬢の方が私としてもシックリくる。
……息子の妻にはならなかったが、とても良い縁を結び、他の良い縁をたくさん繋いでくれたのだからな。」
ディアーナは、そうだっけ?とキョトンとした顔をする。
「世界広しと言えど、この世の創造神が正体を明かした状態で人として王に仕えていたとか、仕えていた王が私ですとか凄いだろう?」
国王は笑い、つられたピエールも笑う。
そんな二人にディアーナは手を振ると、ジャンセンとレオンハルトと共に王城から姿を消した。
実家のディングレイ侯爵邸の玄関ホールに転移したディアーナ、ジャンセン、レオンハルトは、ディングレイ侯爵夫妻の居るであろう応接室に向かった。
部屋に向かう途中年老いた執事頭に逢い、何度も泣きながら頭を下げられた。
「お嬢様…ご無事で…!本当によくぞ、ご無事で…!」
立場上、グイザール公爵の息の掛かったリジィンに逆らえず、苦しい思いもしていたのだろう執事の手を、ディアーナはそっと握る。
「ありがとう、わたくしを守ろうとしてくれて…。
…ところで、まだリジィンの息の掛かった輩が居るなら、わたくしが直々にぶっ潰しときたいのだけど?」
ディアーナは執事にキラキラの顔を向ける。
暴れ足りないわ!!と。
残念ながら、すべてサイモンの指示の元に捕縛された後だった。チッ…。
「お父様、お母様、ただいま戻りましたわ。」
応接室の扉を開き、ディアーナはスカートを摘まんでカーテシーをする。
「おお、ディアーナ!帰ったか!」
ソファーに腰掛けていたディングレイ侯爵が立ち上がる。
今回の事については、監禁されていた部屋から解放された時点でジャンセンから侯爵夫妻にある程度の説明がされている。
ハズだ。
「怪我は無いのか?
あの、おかしな男に何かされたりしなかったのか?」
ジャンセンが、どのように説明したかは分からない。
だが、年頃の娘がリジィンという変な男の毒牙に掛かりそうだったと心配してくれたのかしら?
と一瞬考えたディアーナの顔がすぐ曇った。
父親の刺すような視線が、ディアーナの後ろに立つレオンハルトとジャンセンにも向けられている事に気が付いたから。
「……お父様、言っておきますけど、わたくし…神の御子の妻ですのよ?わたくしの純潔がと…」
「ディアーナ!実はお前を妻に迎えたいという方が居てな!
殿下に国外退去を命じられた娘でも構わないと!!」
ディアーナが言い終わらない内に被せるように言った侯爵の言葉に、レオンハルトの翡翠色の瞳が殺気を宿し、腰の剣に手が掛かった。
「………もう、限界です。」
ジャンセンが呟くと、ディアーナ達三人と、侯爵夫妻以外のすべての時間が凍結した。
全ての背景が灰色になり、その場に居る者以外の息吹を一切感じない世界。
そして、ディアーナは白いドレスの聖女の姿に、レオンハルトは金の刺繍の入った白い装束にディアーナの髪色のマントを羽織った神の御子としての姿に変わった。
「……私は、私の娘をお前達に預けた。
だから、育ててくれた事には感謝する。」
ジャンセンは、銀に近い白い髪に白い衣服を纏っているようだが、全身が光を放ち輪郭が霞んでしまい、人の目ではその姿形が把握出来ない。
「だが、私の娘を今だ縛り付け、我が物顔で支配し、道具のような扱いを強いる。
……私はお前を許す事が出来ない。」
灰色の空間に、目映く光る創造神の姿は神々しくも恐ろしく、ゆったり語る声音は静かなのに怒気を孕んでいる。
「お父様!!待って…!消したり…!しないで…!」
ディアーナが創造神に駆け寄る。
創造神が、ディングレィ侯爵夫妻をこの世から消失させないよう、縋ろうとした。
「けっ…!消す!?や、やめて!ディアーナ、お願いよ!やめさせて!」
母親が焦ったようにディアーナに懇願する。
侯爵は、灰色の空間をポカンと口を開けたまま見つめ続けていた。
「…感謝もしていると言ったろう。
だから、消したりはしない。
……お前達は、ここで跡継ぎ作りに励め。」
「「「「えっ?」」」」
創造神以外の四人の声が重なる。
「時間は無限にある。
年もとらない、空腹にもならない、疲れもしないし、眠くもならない。
…そう、感じる事はあるかも知れないが実際には何も起こってはいない。
だから、跡継ぎが出来るまで励むが良い。」
「な、何だと!?こんな所で跡継ぎを作れだと!?
無理に決まってるだろう!」
「無理だと?
ならばディアーナには悪いがお前達夫婦には消えてもらう。
ディアーナの記憶からも消す。
ラジェアベリアという国からも、お前達の存在が最初から無かった事にする。」
ディアーナもレオンハルトも創造神の怒りを感じ、驚く。
人間なんて蟻と何らかわりないと言っている神が、一個人に対してここまで怒りをあらわにするのを見たのは初めてだった。
「それが嫌ならば励め。
何年、何十年かかっても世継ぎを身ごもったならば先ほどの時間に戻してやろう。
それまでは夫婦仲睦まじく過ごすが良い。」
「ま、待て!待って下さい!!」
創造神は侯爵の訴えを聞かず、侯爵夫妻を置き去りにしたままレオンハルトとディアーナを連れ宿屋の一室に転移した。
「……師匠……」
「…すみません…別れの挨拶もさせてあげられず…。」
宿屋の一室にて、ディアーナがジャンセンに視線を送る。
ディアーナ達は元の姿に戻っていた。
「別れの挨拶はいいわよ、する気にもならなかったし。
師匠が、あんな風に怒るの初めて見たから驚いたわ。」
レオンハルトが頷く。
「親父がキレるのは、俺も初めて見たな。
正直言って助かったが…俺ディアーナのオヤジさん、斬り捨てそうだったし…」
ディアーナが引き攣り笑いを浮かべ、ジャンセンはため息をついた。
「正直に言いますと……私にとって貴方達を生んだ最初の理由が、便利な道具…でした。
私の創った世界を維持する為にレオンハルトを、その道具のメンテナンス道具としてディアーナを創ったのですから。」
ディアーナとレオンハルトは互いを見合って頷く。
愛される家族として生み出されたのではないと、自覚があった。
「ですが…何ですかね…あなた達と過ごす時間が楽しい…。
あなた達を愛おしく思う…。
あなた達二人を巡り合わせる為に私も必死になってしまった……
だから、二人巡り合ったこれからは、幸せになってもらわないと私が困る…。」
ディアーナの顔がパアッと明るくなる。
サイモンと不必要な縁を組んでみたり、記憶をイジったり。
色々と不器用な神様なんだけれど…。
そこには間違い無く愛があるはず。
ディアーナが両手の人差し指と親指を合わせ、指でハート型を作る。
「おとん!!愛してる!!」
レオンハルトがディアーナの真似をして指先を合わせハートを作る。
「親父、俺も愛してる気がしなくもない。」
「……はいはい、ありがとう子供たち。」
少し照れたように苦笑するジャンセンの姿に、二人は笑った。
集められた息子達はリジィンを入れ8人。
女好きで有名だったらしいグイザール公爵には多くの庶子がいて、その子供達に王都から離れた地方の貴族等の家名や財産を乗っ取っては、与えていたらしい。
子供に裕福な暮らしをさせたかったからだと言った卿は、子煩悩な父親だと言えば聞こえがいいが、自身の回りを固める為に貴族の名前や財産が必要で、それを手に入れる為の駒として子を利用していたというのが本当の所だろうと。
何にせよ証人も証拠も揃っている為、もう言い逃れる事は出来ないであろう卿には重い罰が下ると国王は言った。
ピエール王子はジャンセンに対し、神だとは信じてない上に警戒も解いてないが、国王である父親が膝をつき頭を垂れる姿を目の当たりにし、複雑な面持ちではあるがジャンセンに剣を向けた無礼を詫びた。
「「師匠!!」」
ジャンセンに向かって声を掛けたディアーナと同じタイミングで、サイモンがジャンセンに対し声を発した。
「……は?サイモンお兄様、ジャンセンが…師匠なんですの…?」
「…なぜ、ディアーナが俺の師匠を知っている…?
しかも、師匠と呼ぶ…いや、ひそかに呼び捨てにもしたな…。」
レオンハルトとディアーナは、改めてサイモンの頭の先から爪先までをジィっと見る。何度も見る。
……ジャンセンの、旅装束に似てね?その格好。
黒いよ?何か。
ジャンセンは魔導師のコスプレ用ローブを脱ぎ、いつもの旅装束姿になる。
サイモンと並ぶと、ほぼ同じ姿に見える。
「殿下には先に話しちゃいましたけど、サイモンは私の後任ですよ。
ラジェアベリアに所属する隠密部隊の者で、スティーヴン殿下の影ですね。
あ、影武者とか身代わりではないですよ?
護衛とサポート、伝達が主な仕事です。」
ああ…だから、殿下が襲われた時に殿下を守る為に現れて、殿下に姿をチラチラ見られていたのですね。
だから、逆に暗殺に関与していると思われて…。
……だって守る場面なんて、なかったでしょうしね…。
スティーヴン殿下、下手したら人間では最強かも知れませんもの。
剣の腕も、魔法も今やトップクラスですし。
何より
創造神を召喚出来る。いや、ジャンセンが勝手に来るんだけど。
つか、師匠!まだ影のお仕事やってたの!?
「師匠、ディアーナと随分親しいようですが…。いつ、お知り合いに…?」
親しげにディアーナとジャンセンが会話するのを見て不思議そうにサイモンが尋ねると、ジャンセンは微笑して答える。
「ああディアーナは、私の娘なのでね…。
そして、そこの金髪の彼、レオンハルトも私の息子です。」
「そうなの、サイモンお兄様!私達、ジャンセンの子供なのよ!」
「え?養子?え?」
意味が分からないサイモンは混乱しているようだ。
「ええ…大切な子ですよ。サイモン、あなたもね…」
混乱中のサイモンに届かない小声でジャンセンが小さく呟く。
ディアーナとレオンハルトは苦笑しながら顔を見合せた。
「陛下、ピーちゃん、私ちょっと実家行って来るわ!」
ジャンセンが創った謎の部屋に監禁されていたディアーナの両親は、ジャンセンがグイザール公爵の前に現れる前に解放してくれたとの事だった。
「こら、陛下に、そんな口のきき方しちゃ駄目でしょ?」
緩くたしなめるジャンセンに、陛下がヒラヒラと手を振る。
「あー、良い良い。
ディアーナ嬢の事は幼い頃から知っておるが、今のディアーナ嬢の方が私としてもシックリくる。
……息子の妻にはならなかったが、とても良い縁を結び、他の良い縁をたくさん繋いでくれたのだからな。」
ディアーナは、そうだっけ?とキョトンとした顔をする。
「世界広しと言えど、この世の創造神が正体を明かした状態で人として王に仕えていたとか、仕えていた王が私ですとか凄いだろう?」
国王は笑い、つられたピエールも笑う。
そんな二人にディアーナは手を振ると、ジャンセンとレオンハルトと共に王城から姿を消した。
実家のディングレイ侯爵邸の玄関ホールに転移したディアーナ、ジャンセン、レオンハルトは、ディングレイ侯爵夫妻の居るであろう応接室に向かった。
部屋に向かう途中年老いた執事頭に逢い、何度も泣きながら頭を下げられた。
「お嬢様…ご無事で…!本当によくぞ、ご無事で…!」
立場上、グイザール公爵の息の掛かったリジィンに逆らえず、苦しい思いもしていたのだろう執事の手を、ディアーナはそっと握る。
「ありがとう、わたくしを守ろうとしてくれて…。
…ところで、まだリジィンの息の掛かった輩が居るなら、わたくしが直々にぶっ潰しときたいのだけど?」
ディアーナは執事にキラキラの顔を向ける。
暴れ足りないわ!!と。
残念ながら、すべてサイモンの指示の元に捕縛された後だった。チッ…。
「お父様、お母様、ただいま戻りましたわ。」
応接室の扉を開き、ディアーナはスカートを摘まんでカーテシーをする。
「おお、ディアーナ!帰ったか!」
ソファーに腰掛けていたディングレイ侯爵が立ち上がる。
今回の事については、監禁されていた部屋から解放された時点でジャンセンから侯爵夫妻にある程度の説明がされている。
ハズだ。
「怪我は無いのか?
あの、おかしな男に何かされたりしなかったのか?」
ジャンセンが、どのように説明したかは分からない。
だが、年頃の娘がリジィンという変な男の毒牙に掛かりそうだったと心配してくれたのかしら?
と一瞬考えたディアーナの顔がすぐ曇った。
父親の刺すような視線が、ディアーナの後ろに立つレオンハルトとジャンセンにも向けられている事に気が付いたから。
「……お父様、言っておきますけど、わたくし…神の御子の妻ですのよ?わたくしの純潔がと…」
「ディアーナ!実はお前を妻に迎えたいという方が居てな!
殿下に国外退去を命じられた娘でも構わないと!!」
ディアーナが言い終わらない内に被せるように言った侯爵の言葉に、レオンハルトの翡翠色の瞳が殺気を宿し、腰の剣に手が掛かった。
「………もう、限界です。」
ジャンセンが呟くと、ディアーナ達三人と、侯爵夫妻以外のすべての時間が凍結した。
全ての背景が灰色になり、その場に居る者以外の息吹を一切感じない世界。
そして、ディアーナは白いドレスの聖女の姿に、レオンハルトは金の刺繍の入った白い装束にディアーナの髪色のマントを羽織った神の御子としての姿に変わった。
「……私は、私の娘をお前達に預けた。
だから、育ててくれた事には感謝する。」
ジャンセンは、銀に近い白い髪に白い衣服を纏っているようだが、全身が光を放ち輪郭が霞んでしまい、人の目ではその姿形が把握出来ない。
「だが、私の娘を今だ縛り付け、我が物顔で支配し、道具のような扱いを強いる。
……私はお前を許す事が出来ない。」
灰色の空間に、目映く光る創造神の姿は神々しくも恐ろしく、ゆったり語る声音は静かなのに怒気を孕んでいる。
「お父様!!待って…!消したり…!しないで…!」
ディアーナが創造神に駆け寄る。
創造神が、ディングレィ侯爵夫妻をこの世から消失させないよう、縋ろうとした。
「けっ…!消す!?や、やめて!ディアーナ、お願いよ!やめさせて!」
母親が焦ったようにディアーナに懇願する。
侯爵は、灰色の空間をポカンと口を開けたまま見つめ続けていた。
「…感謝もしていると言ったろう。
だから、消したりはしない。
……お前達は、ここで跡継ぎ作りに励め。」
「「「「えっ?」」」」
創造神以外の四人の声が重なる。
「時間は無限にある。
年もとらない、空腹にもならない、疲れもしないし、眠くもならない。
…そう、感じる事はあるかも知れないが実際には何も起こってはいない。
だから、跡継ぎが出来るまで励むが良い。」
「な、何だと!?こんな所で跡継ぎを作れだと!?
無理に決まってるだろう!」
「無理だと?
ならばディアーナには悪いがお前達夫婦には消えてもらう。
ディアーナの記憶からも消す。
ラジェアベリアという国からも、お前達の存在が最初から無かった事にする。」
ディアーナもレオンハルトも創造神の怒りを感じ、驚く。
人間なんて蟻と何らかわりないと言っている神が、一個人に対してここまで怒りをあらわにするのを見たのは初めてだった。
「それが嫌ならば励め。
何年、何十年かかっても世継ぎを身ごもったならば先ほどの時間に戻してやろう。
それまでは夫婦仲睦まじく過ごすが良い。」
「ま、待て!待って下さい!!」
創造神は侯爵の訴えを聞かず、侯爵夫妻を置き去りにしたままレオンハルトとディアーナを連れ宿屋の一室に転移した。
「……師匠……」
「…すみません…別れの挨拶もさせてあげられず…。」
宿屋の一室にて、ディアーナがジャンセンに視線を送る。
ディアーナ達は元の姿に戻っていた。
「別れの挨拶はいいわよ、する気にもならなかったし。
師匠が、あんな風に怒るの初めて見たから驚いたわ。」
レオンハルトが頷く。
「親父がキレるのは、俺も初めて見たな。
正直言って助かったが…俺ディアーナのオヤジさん、斬り捨てそうだったし…」
ディアーナが引き攣り笑いを浮かべ、ジャンセンはため息をついた。
「正直に言いますと……私にとって貴方達を生んだ最初の理由が、便利な道具…でした。
私の創った世界を維持する為にレオンハルトを、その道具のメンテナンス道具としてディアーナを創ったのですから。」
ディアーナとレオンハルトは互いを見合って頷く。
愛される家族として生み出されたのではないと、自覚があった。
「ですが…何ですかね…あなた達と過ごす時間が楽しい…。
あなた達を愛おしく思う…。
あなた達二人を巡り合わせる為に私も必死になってしまった……
だから、二人巡り合ったこれからは、幸せになってもらわないと私が困る…。」
ディアーナの顔がパアッと明るくなる。
サイモンと不必要な縁を組んでみたり、記憶をイジったり。
色々と不器用な神様なんだけれど…。
そこには間違い無く愛があるはず。
ディアーナが両手の人差し指と親指を合わせ、指でハート型を作る。
「おとん!!愛してる!!」
レオンハルトがディアーナの真似をして指先を合わせハートを作る。
「親父、俺も愛してる気がしなくもない。」
「……はいはい、ありがとう子供たち。」
少し照れたように苦笑するジャンセンの姿に、二人は笑った。
0
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる